自分史 物怖じしない国際人を育てるヒント集

近現代史に触れつつ自分の生涯を追体験的に語ることによって環境、体験、教育がいかに一個人の自己形成に影響したか跡付ける。

部活/剣道

2013-04-02 | 体験>知識

部活の数は少なかった。
バスケを選んだが数回練習したところで剣道の創部が決まった。
敗戦後占領軍に禁止されていたが、前年講和がなったので早速柔道部とともに復活の運びとなった。
竹刀と剣道着は自前だった。
顧問は国士舘出の高段者T先生だった。
竹刀の握り方、振り方等基本を教わって素振りとなった。
帰宅後も木刀で素振りをした。
やがて防具をつけて打ち合いをするようになった。
道着の汗のにおいと打たれたときの痛さが思い出される。
被差別から来ていた上級生は体もごつかったが顔もゴジラに似ていた。
下級生はだれしもその風貌を見ただけで恐れをなして対戦を嫌がった。
背が高かった私が相手をさせられた。
ものすごい腕力で打ち込んできて竹刀が防具からそれると無防備の太ももや防具の隙間の脇腹がたちまちみみずばれになった。
T先生に稽古をつけてもらうときも脳天にずしり響く痛さを感じた。
わたしの肩までしかない小柄の先生に「めん」をくらうと竹刀がしなって切っ先が私の後頭部を痛撃するのだった。
熟練の技とは、かくなるものか、と感心した。
3年では主将になって郡大会に出た。
個人戦決勝で見事な貫胴をくらって負けた。
良くいえば一本槍、悪く言えばワンパターン、わたしは始終飛び込み面しかやらなかったので対戦相手は難なく勝てたのだった。

後年少年サッカーを教えるようになって剣道の体験が大層役に立った。
姿勢、すりあし、スラローム、呼吸、気合、生死を分ける一瞬の動き、その動きを読むことと読まれないことの重要さ、そして日本人の芸道に共通する美意識。
「飾らない、形にとらわれない、よどみなく流れるように」