アーク・フィールドブック

四万十フィールドガイド・ARK(アーク)のブログ

ジンとヘッセと夏の午後

2010-07-16 | 四万十川 夏

時々 最高気温31度。

 「もうこの辺が潮時だぜよ」

と言わんばかりに、ぶあつい灰色の雨雲たちは、空の彼方へのったりと去っていった。

ピカッと顔を見せた真夏の太陽が、ニコニコと僕に手をふっている(ように見えた・・・)。

まぶしくつよいヒカリの中、川にはゆるい南風が吹き、山には濃い緑がかがやいている。

頭上から降り注ぐセミの大合唱。「どうやら、四万十も梅雨明けのようだ」。

 

 ジョグに出れば20分もたたないうちに、僕の顔は、たっぷりと汗をかいたグラスのように。

頬を流れる汗は、アゴからしたたり落ちてアスファルトに、黒い染みとなった。

湿った暑い空気が肌にからみ、まるでぬるめのサウナの中を走っているかのようだ。

 

 家に戻り、絞れるほど汗をかいたシャツを脱ぎ、素っ裸でザブザブと頭から水をかぶった。

キンキンに冷やした大ぶりのグラスに、ガチガチに氷を詰め、ジンと炭酸を注ぎかるくステア。

グラスにぎゅっとライムを絞り、スライスしたライムもIN。

ベランダに出て、ハダカのまま風に吹かれながら、そいつをゴクゴクと飲んだ。

キューバの音楽をBGMに。

そして、椅子に腰をおとして、ベランダの手すりに両足をほうり投げて一遍の詩を読んだ。

 

 「八月の終わり」

もう諦めていたのに、夏はもう一度力をとりもどした。

夏は、だんだん短くなる日に凝り固まったように輝く、雲もなく焼きつく太陽を誇り顔に。

このように人も一生の努力の終わりに、失望してもう引っ込んでしまってから、

もう一度いきなり大波に身をまかせ、一生の残りを賭して見ることがあろう。

はかない恋に身をこがすにせよ、遅まきの仕事にとりかかるにせよ、

彼の行いと欲望の中に、終わりについての、秋のように澄んだ深い悟りがひびく。

「ヘルマン・ヘッセ」 ドイツ/1877-1962