風のささやき 俳句のblog

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名前を 【詩】

2022年11月03日 | 

「名前を」

# 1

金色の涙を流せと
秋が命じたから
木々はそれぞれの色に
葉を染めて
一斉に風に散らすのだ
ハラハラと
時折は乱舞 千々に乱れて

何故にそんなにも従順に
従う必要があるのだろう
秋の声に しかし僕らは
その声を 内なるものとして
宿している 自分を知ることになる

# 2

それは寂しさ以外の
何物でもない
終わりを実感として
足音として確かに
耳にする僕は

あなたの名前に 殊更に
すがりたくなる
あなたの名前だけが 暗闇に浮かんで
その名前を ささやく
まるで 水の中に
引きずられるものの あがき

# 3

けれど その人の名前を呼ぶこと
そのためにどれだけの
長い時間を耐えて
透き通った声で
何も求めず
呼びかけることができるのか

求めるとしたならば
その最上の笑顔
ただ嬉しく笑う

それは 白いカサブランカの
香りがする

その瞳に 見入りたい
けれど 僕の声はしわがれて

# 4


人はそれぞれの戸口に立ち


それは戸口を
激しく打ち鳴らす


その入り口に人は迷い


その訪れに人は冬支度を始める

できることならば成熟の秋として
戸口を金色に染め
金色の微笑を浮かべ
金色の羽根を生やし
金色の心をあなたに捧げる
捧げ尽くす
ただそれだけを喜びとして

# 5

何も言わずに
側にいてくれる人の温かさ
そのありがたさに 頭を垂れる

泡になって消えてしまう
僕をこの世につなぐ
その名前を

まるで初めて
呼びかけるように
呼ばせて欲しい

嬉しい
笑顔が
愛しく
眩しく と