風のささやき 俳句のblog

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夏の終わりに 【詩】

2023年09月14日 | 
「夏の終わりに」

トンボの翅はステンドグラスのよう
遅い夏の夕日を
あちらこちらで透かしている
そこにどんな祈りは降り立って
頭重くする稲穂は小判を実らせる

鳥は夕日に編隊を組み
一斉にねぐらに帰ろうとする
待宵草が月を迎えようと花を開く
河原にはなすすべもなく
悲鳴をあげて流れをすべり去る夏
昼間の間の熱を
ゆっくりと丸い石は吐き出し
山の上の星は放心している

夕餉の準備にさっき
鯉の腸を洗った
家の前の池も闇に触られて
水面に広がる血ともう
その色合いも区別がつかなくなる

僕の胸には去っていく
夏があった証のような
かすかな火照り
それも灰色の燃えカスになる

きっと明日には
ひきずりだされて秋は
泣き言をならべ
白い指先で風景を
ひっかいていくだろう

夏の面影を削ぎ落すように
病的に瘦せた輪郭のような
力ないか細い線で