風のささやき 俳句のblog

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彼の地で 【詩】

2023年06月08日 | 

「彼の地で」

心も揺られ運ばれてゆく
 乗り物酔いの気分の悪さも少し
  流れる風景を置いてきぼりにしながら

こんな錆びついたレールの上の不安
  見ず知らずのところへ
   勢い運ばれてゆく
    思い描く自分から遠ざかる

だからあなたの横顔を
 ときどき覗いては
  自分の位置を確認する
   あなたとの距離でしか
    確認できない僕であること

閉じられた踏切の向こうには
 手を振る小さな女の子
  僕に向けられたそのまなざしの純真
   長い旅路を気遣うように
    これからもご無事でと

(僕らが運ばれる先は
 君が羨ましがるような場所だろうか)

(もうきっと逢うこともない
 君の未来こそ
 明るいものであることを祈る)

その小さな女の子に
 あなたが見たものは
  無邪気だったころのあなた
   何も知らないことで胸も軽く

車窓を見送るその横顔には
 捨てて来たものの
  拾い集めたものの
   憂いがあって

車窓の光で寂しく化粧をした
 あなたの顔を
  癒したく思う
   あなたの寂しさは
    僕の胸の棘

心を解きほぐして
 真っ白な手触りのよい
  包帯にしてあなたに捧げる
   捧げ続ける
    そうして二人ずっと
     揺られ続けていられるように

僕らが運ばれてゆく旅の終わりは
 きっと彼の地
  ガラスが触れ合うように
   心と心とが素直に響く場所

笑顔を咲かせる
 たくさんの向日葵が空を向いて
  あなたは向日葵よりも
   明るい笑顔で咲いた
    一番 鮮やかな花であって

それを見たかった僕なのだと
 すっかりと満足をして消える
  あなたを包む風になるんだ
   足跡もつけずに
    青空に駆けあがる

あなたの笑顔が咲いて
 輝くように咲いて
  それで本当に
    満足なんだ



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