初めからアイラーが解ったわけではなかった。最初に聴いたのはあの“SPIRITUAL UNITY”、場所は京都「シャンクレール」。
まだ、ジャズを聴き始めて一年足らずの初心者の時である。何か異物を体内に注入されたような不快感を覚えたが、周りを見渡すと、皆、頭を垂れ、神妙に聴き入っているではないか。
はたと思った。こういうジャズを演るミュージシャンとそれを解読できるリスナーが現実にいるとは、なんてジャズは奥深く、高く険しいものかと。それから3、4年後、絶作となった“LAST RECORDING 1、2”を聴き、多くの?人達がそうであったように、初めてアイラーが解った。
“THE FIRST RECODINGS”(上)は元々はバード・ノーツというレーベルから200枚ぐらいの限定盤(タイトルはSOMETHING DIFFERENT !!)で出され、後年(69年?)、ソネットから再発されたものである。
下の“Vol.2”もサンプルでほんの10枚ほど出されたらしく伝説化されていたが、90年、DIWがバード・ノーツのオーナー、ノルドストローム氏と交渉し、リリースにこぎつけたものである。
アイラーは若い時に「リトル・バード」と言われるほどのテクニシャンだったと聞く。この2枚に納められているスタンダードやロリンズ、マイルスのオリジナル曲を聴くと、テーマ部分では確かにその片鱗が窺い知れる。後年のようなスピリチュアルな世界には程遠いが、反面、彼がやろうとしたジャズの原型がここにある。
62年10月25日、ストックホルムの‘アカデミー・オブ・モダン・アーツ’でのライブ録音。母国を逃れ、異国の地でストリート・ミュージシャンのような演奏活動を通しながらも、己の信念を貫くアイラーの姿が克明に刻まれている。
アイラーは、当時のジャズシーンの中で一般的には、死ぬまで「疎外」され続けたが、今はどうなんだろう?
収録曲を。
“THE FIRST RECORDINNGS”
*Ⅰ’LL REMEMBER APRIL * ROLLIN’S TUNE * TUNE UP * FREE
“Vol.2”
* SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE * I DON’T KNOW WHAT TIME IT WAS * MOANIN’ * GOOD BAIT
なんと、あのモーニン」を演っており、僅かながらの聴衆の反応がちょっと聴きものです。ここにはアイラーと聴衆の間に「疎外」という壁はない。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます