今では、メジャー・リーガーの大谷翔平選手を二刀流ではなく、「走る」を加えた三刀流と言った方が合っているのではないか。60年以上も前、ハード・バップ全盛期、ジャズ界にも三刀流がいた。「作曲・編曲・ts奏者」として三面六臂の活躍を見せたBENNY GOLSON。作曲、編曲の功績はエスタブリッシュされた評価を受けているが、以前、編曲(ゴルソン・ハーモニー)について若手のひよこジャズ・ライター達に「ダサい」等々、ネガティブな風評をネットで晒された。また、個人のサイトも風評のパクリに汚染され始め、他の要素も合わせて某雑誌の元編集長から「ネットはバカをあぶりだす」と迷言まで飛び出した。中には「自分のサイトもバカなのか?」と問い質した自信家サイトも出る始末であった。
そもそも、ゴルソン・ハーモニと言われる編曲は、主たるソロを最大限に生かすためのあくまで従の存在で、編曲を誇ったりせず、時には日陰の働きも辞さない関係である。重箱の隅を楊枝でほじくるような耳では、ゴルソン・ハーモニーを理解することは難しい。ま、炎上商法の走りだったかもしれない。
無駄口はさて置き、今回、追悼に選んだ一枚は、プレステージ、リバーサイドにリーダー作があるにもかかわらず、また、フラーのリーダー作の”IMAGINATION”。理由はSAVOYらしくソロに力点を置き、TOPの”Kachin”を始めゴルソンのtsが冴え、ts奏者としての力量が凝縮されている点と、編曲は必要最低限に抑えられ意外に思える人選、T・JONES(tp)とM・TYNER(p)がスパイシー役となり既成のイメージと異なる味が出ている。また、後にコルトレーンのグループの一員になるTYNERとGARRISONの組み合わせも興味深く、GARRISONのズンズンと背後で演奏をプッシュするbも聴きものです。B面の2曲の心地良いルーズさは厳しかった残暑の疲れを癒してくれます。それに説得力に乏しいシュール画のカヴァとスタンダード曲の”Imagination”を絡ませるSAVOYのセンスには畏怖さえ覚えますね(笑)。
〆はやはり、リーダー作で。N・ヘントフの肝煎りでコンテンポラリーに吹き込んだ初リーダー作”NEW YORK SCENE”(1957年録音)を。
柔やかなゴルソンの眼には既に「ゴルソン・ハーモニー」が映っていたのだろう。 R.I.P BENNY GOLSON
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