駅前で待ち合わせまでの僅かな時間、書店に。
「僕が選んだ『いい音ジャズ』201枚 オーディオファンも聴いておきたい優秀録音盤」が眼に留まった。
著者はオーディオ・ライターなので、評論家のジャズ本と切り口・視点が異なり、しかもページ端にアクセサリー、音を良くするコツ等々、同時進行で読めるアイディアがとてもGoo。
聴いたことがない作品が多い中、パラパラとめくっていくと本作が現れた。暫く聴いていないなぁ~、「音」の記憶もないし・・・・・
掲載されたメディアはCDで、恐らく高音質リマスター版だろう。
手元にあるのはリアルタイム購入のレコード、システムは今よりかなりプアだった。
Freddie Hubbard (flh,tp) Art Pepper (as) George Cables (p) Stanley Clarke (b) Peter Erskine (ds)
他に曲によりギター、パーカッション、シンセサイザー、トロンボーン等が加わる
録音データは
Produce:John Koenig
Co-Produce:菊地洋一郎
Recorded at Ocean Way Recording in Hollywood, CA. September 15, 17, 18 and 19. 1980
Engineer : Allen Sides
針が降りる2、3秒の間、これがアナログの堪らない魅力一つ。
NHK「ブラタモリ」のエンディングで流れる陽水の「瞬き」を連想させるTOPのS・クラーク作`Sunshine Lady’、浮遊感ある柔らかなメロディと伸びやかで豊潤な「サウンド」にいきなりW・コーストの世界に引きずり込まれる。
この時代の音造りの主流に沿ってハバードのflhとペッパーのasが全体のサウンドの中に包み込まれるように浮び、個人的にはもう半歩ほど前に出てきた方が好み。
そこで、カートリッジの取り換え、SPのアッテネーターの調整、そして電源コードとコンセントの組み換え、等々を。
満点までは行かないものの、現状ではOKレベルまで追い込んだが、高音質リマスターCDをより上のグレードのシステムで聴くと、もっといい結果になるでしょう。
技術的なことは解りませんが、このLPは「76㎝/sec マスター・ハーフ・スピード・カッティング・ディスク」と記載されている。
プロデュースはコンテンポラリー・レコードの故L・KOENIGの息子で社長のJ・KOENIGが務め、録音はハリウッド、エンジニアはAllen Sidesだが、実質的に東芝EMIサイドにより制作されている。米国側に「丸投げ」せず、充分な打ち合わせの上、録音に4日間も掛け入念に仕上げている。
メイン・メンバー5人だけのセッションは`I Love You’1曲のみで、残りの5曲は ギター、パーカッション、シンセサイザー、トロンボーン等が曲毎に入れ替わるという力の入れ様です。
制作コンセプトは「旬」。これを読み誤りハバード、ペッパーの2管 バトルを追う「アナクロニズム」に陥ると、本作の存在価値・魅力を見失う。
G・ケイブルスが書いた名作`Blue Nights’、ちょっとルーズで心地よいビートに乗り、各ソロが続くソフィスティケートされた流れはその象徴的なナンバー。エンディングにかけてのハバードのflhはタイトルのイメージにピッタリ、さすがですね。
また、`I Love You’もスタンダードと知らなければ、誰かのオリジナル曲と思い込んでしまうほどスタンダード臭が消され、クール、かっこイイ。ハバード、ペッパー、二人のアスリートのソロもジャージーだ。
誰もいなくなった季節外れのビーチ、地平線を眺めながら汗をかいたグラスを・・・・・・・・・
間違っても居酒屋風情を求めるのはNG、「ミストラル」が「空っ風」に。
100%、ハバードのリーダー作だが、黒子に徹するペッパーの存在は小さくない。
大名盤、傑作の類ではないけれど、なかなか美味しい一枚。
東芝EMIのプロジェクト・チーム、良い仕事してますね~
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