その昔、高校生の頃、深夜放送でジャズを流す番組があった。ジャズに関心も興味もなく積極的に周波数を合わせず、番組名なども知らなかったが、何故か、二つだけ記憶に残っていた。一つはテ-マ曲が実にかっこ良く、後に分かったH・シルバ-のヒット曲「シスタ-・セディ-」、もう一つは、リクエストで掛った「ウィロ-・ウィ-プ・フォ-・ミ-」。驚くことに「シスタ-・セディ-」のテーマ・メロディと「オヴァ-・シ-ズ」、「トミ-・フラナガン」の名をずっと憶えていた。英語の単語、文法や数学の公式はすぐ忘れたのに。嘘のような話だけれど本当なんです。
もう、かなり前になりますが、大阪・心斎橋に「ミュージック・マン」というジャズ専門の円盤屋があった。雑居ビルの一角の狭い店でしたが、出張を兼ねてというより、店に行くのが本当の目的で時々通っていた。
たまにセールの初日に行こうものなら、部屋の温度は40℃を越しているのではないかと思うほど熱気に溢れ、レコード漁りの流儀を嫌と言うほど教えられた。まぁ、格闘技ですな。まず、手ぶらと、薄着が絶対条件で、半端な気持ちでは獲物は得られません。自分の場合、なかなか難しいので結局、大した収穫はあまりなかったが、普段の時はそれなりに楽しむ事ができた。ある時、オーナーらしき男性が常連客と思しき人に「年金の支給日になると、何人かの客にレア盤やオリジナル盤、撒き餌の美味しいレコードを段ボール箱一杯、ごっそり買っていかれ、迷惑している」と怒りの口調で話していた。確かにそれをやられるとエサ箱がつまらなくなりますね。対策はどうなったのでしょうか。
たまたま、カヴァも盤質もミント状態のモノ盤の本作を見つけ値段が思いの外、安かったので、ワケを聞いたところ、「2ndプレスだよ」と素っ気無い返事が戻ってきた。オリジナル盤の判別方法にそれほど詳しくなかった事もあり、すんなり納得し購入した。
本作はあのH・シルバー無敵艦隊(フロントがミッチェル、クック)の実質的に第1作目で、なんと言っても、あの‘Sisiter Sadie’(B面トップ)がダントツの人気曲ですね。考えてみると、自分が無意識に初めて接触していた「モダン・ジャズ」と言えます。
それにしてもこのPAULA DONAHUE の手によるドローイングのカッコいい事! どんな写真を使っても、手抜きせず全力投球するシルバーのエネルギーを十分に伝えられないだろうに、僅か30cm角の世界に椅子をギシギシ鳴らしながら髪を振り乱し、手足を踊らせるシルバーを見事に描き切っている。
多言は無用、「熱血純情ファンキー酒場」とでも言うのでしょうか。今にもシルバーの汗が降りかかってきそうです。録音に異例の三日間も掛けただけにラフな汗とはモノが違います。
2ndプレスでも、すごいですね。神々しいです。僕が廃盤にやや目覚めたのが、最近なので、時すでに遅く、高くなりすぎて、手が出ません(笑)。基本的に日本盤で我慢しています。
このアルバムの2曲目の、「The St. Vitus Dance」を、1月11日に江古田のそるとぴーなつで聴いた平田晃一(g)が取り上げていました。いい演奏でしたが、やはり、ホレス・シルヴァーの曲が、もともと良いですね。
特にBLUE NOTEのMONO盤は相変わらず根強い人気があり、DUの昨秋のWANTLIST(Vol.5)ではJ・GRIFFINの”Introducing"(BLP1533)が10%Upで栄一が22枚とTOPです。売価はいくらになるのでしょうか(笑)。ま、身の丈に合った方法で楽しみましょう。
BN一筋のシルバーは我が国では意外に人気薄ですが、作曲も含めいつも全力投球のプレイ・スタイルはミュージシャンの鏡ですね。