捨て身の覚悟でPrestigeのD・シュリッテンに自己アッピールし、レコーディング・アーティストとして迎えられたクリスは66~69年の間に7枚ものアルバムを残している。そこから前半の3枚をピック・アップ。曲構成の基本はいずれもポップス系のヒット曲、映画の人気主題曲、スタンダード、そしてクリスのオリジナル等々がバランス良く収められ、対象幅を広くしている。
”THIS IS CRISS!”は1stアルバムにも拘らず不機嫌そうなクリスの表情は長年の過小、不当評価への無言の抗議だろう。TOPのペギー・リーの絶唱で知られる”Black Coffee”の7:45にも亘る苦み走ったプレイは” !”に秘められた意味を象徴している。演奏時間が2分台から7分台まで長短入り混じっているのはシュリッテンの遠謀深慮からくるものだろう。
1stの評判が良かったのだろう、続く二枚目”PORTRAIT”も同じメンバーで構成され、本作は片面3曲ずつとオーソドックスなパターンに戻している。ロリンズの名演(THE BRIDGE)で知られるA-3の”Got Bless The Child”の出来が良く、クリスの隠れた名バラードの一つと言えます。タイトルに合わせ、カヴァのちょっぴり気取ったクリスが微笑ましい。
3枚目はフィフス・デメンションの大ヒット曲”Up,Up And Away”をTOPに据え、メンバーもT・ファーロー(g)、C・ウォルトン(p)を参加させ、新鮮味を持たせている。この作品はかなりヒットし、当時、JAZZ喫茶でよく流れたそうだが、自分はそうした記憶が全く無い。村上春樹氏が国内盤のライナー・ノーツを書かれ、随分、評判になっているのは周知の通りで、そのライナー・ノーツには、1968年頃、早稲田のジャズ喫茶「フォー・ビート」でよく聴かされたと記述されている。地域によって、例えば東京と京都ではリクエストされるレコードの種が異なり、他の一例が東京では、流れない日はないとまで言われたH・モブレーのヒット作”DIPPIN'”なんかも存在自体、知らなかったほどです。
なお、村上氏のライナー・ノーツは、クリスの死後、1980年、意外にも国内盤が初めてリリースされた時に書かれている。
「昭和四十年代」と「ラヂオ」がよくマッチしてますね。更に"Saturday Morning"が加わればまさに「あの頃」を思い出します。CRISS、最後の輝きを聴かせてくれますね。