(1958.4.22)
現役時代、東京へ出張した際、帰りに廃盤屋に立ち寄るのが楽しみだった。ある店に行った時の事、「新着コーナー」でこの‘MONDAY’のオリジナルを見つけたが、カヴァがかなり傷んでおり、悩んだ末、元に戻し違うエサ箱を物色していると、一人の男が入ってきて予想通り「新着コーナー」をさぐり出し、なんとその‘MONDAY’を小脇に抱え込んだ。どうするのかな?と横目でチラチラと見ていると、サッとレジに運んだのである。瞬間、後悔の念が走ったが、「ま、いずれ、・・・・・・」と考え直した。
それから、半年後、違う円盤屋で見つけたが、今度は盤がダメでした。ところが、丁度、その店に国内盤で‘MONDAY’と‘ANOTHER’が揃って置いて有り、これも何かの縁と思い、購入し、現在に至っている。
パーカーに名に因んだこのジャズ・クラブ‘BIRDLAND’は1949年暮れにブロードウエイ52丁目にオープンし、1965年に閉店するまで、文字通り、ジャズのメッカとして、世界中のファンから愛された。
当時、バードランドは毎週、月曜日をレギュラー・バンドの休日に当て、新人たちのジャム・セッションに開放しており、この二枚もその機会にレコーディングされたもの。
一集の‘MONDAY’は‘Walkin'’、‘All The Things You Are’、‘Bag's Groove’、‘There Will Never Be Another You’とジャズ・ファンなら誰でも知っているナンバーで固め、二集の‘ANOTHER ・・・・・’は、4曲中、メンバーのフラー、モーガンとD・ベストのオリジナルを一曲ずつ配し、それなりに趣向を凝らしています。
自分の好みでは、断然、二集です。
前置きが長くなりましたが、この二枚のレコードの聴きものは、スバリ、モーガンのtpです。
そして、聴き所はモブレーとルートのtsの聴き比べですね。このふたり、本当にスタイル、音色がよく似ているので、初めて聴くと、どちらか、解らなくなります。ただ、マイルドで独特の節回しを聴かせるモブレーに対し、エキサイトするとワイルドさを聴かせるのがルートと思えば、まず、間違いありません。ルートはこうしたスモール・コンボでのソロを充分に聴く機会がそれほど多くないので、貴重です。
で、モーガンです。全八曲、全てに於いて、すばらしいです。 もし、「モーガンで、何か一枚を・・・・」と訊かれたら、このBIRDLANDを躊躇なく、薦めます。「何をバカな!」笑われるやもしれませんが、独断と偏見で言わせていただくと、これほどまでに自然体で己の天分をストレートに発揮した演奏は、他には見当たらないのではないでしょうか。
中でも、二集‘ANOTHER ・・・’の二曲目、フラーのオリジナル‘Jamph’でのソロはどうでしょう!
音色、歌心、テクニック、そして、後年のようにストック・フレーズに頼らない豊かなイマジネーション、もぉ、パーフェクトですね。
モーガン、この時、まだ20歳になる前とは! いやはや早熟ですなぁ。否、早過ぎましたね。
ライブ録音なので、ブライアントのpが全般に亘って、フラーのソロも曲によって、ややOFF気味ですが、それを忘れさせる好演揃いです。
それにしても、MCを務める人気DJ男、シッドのドスの利いたダミ声も含め、「ジャズが一番、幸せだった夜」に疑いはありません。
“Bluesprits”(2011.1.9 )
今夜はI CALLED HIM MORGANをみながらさらにもう一杯。
モーガンのリーダー作と分類することはごく自然な流れですね。
自分もそうしています。
60年代になると杯が進まないジャズが台頭してきます。
もう一杯、と気分が良くなるのはこの頃ですね。