久しぶりに電車に乗る。
これから旅行か、キャリーカートを引っ張ったお嬢さんが、隣の席に座る。
長く伸ばして後に流した髪、ほわっとオードトワレの香りがただよう。
おお、今日はラッキーデイか。
まっすぐ前を向いていても、右下側の白いものが視界に入る。生足か、行き先は南国か。
膝の前に立てたキャリーカートにかくれて、正面からは見えない。
しばらくすると、違う香りがしてくる。
こんどはなんと、たくあんのにおいだ。
まさか、ミドルノートがそれではあるまい。
季節は、幻想の世界から現実の世界へ五感を呼び戻す。
いま、大根の季節だった。