マイナスイオンというものの正体はよくわからない。
不謹慎なたとえと叱られるかもしれないが、呪文の意味が理解できないのとどこか似ている。
「空気中のイオン密度測定方法」というJIS規格ができているからには、それらしいものが実在することは確からしいのだが、それが人間の環境や動物の活動にどういう影響を与えるかということがはっきり示されているわけではなさそうな、なんともあやふやな存在である。
カラスがマイナスイオンを嫌うという話を聞いても、人間の体によいならばカラスがなぜ嫌うのか、どうも合点がいかない。
そこが人間とカラスの違いだなどというのは、落語のハチクマ論法でしかない。
マイナスイオンがあるなら、それと等量のプラス電荷がどこかにできているはずで、それがどこでどうなっているのか、そういうことがわからない。
測定方法が確立され、測定器が使えるようになると、測定対象であるなにかが随所にあらわれて、私たちの生活にたちまち影響を及ぼすように思い込んでしまう。
そのあたりのことが、いちばんの誤解のもとになりそうではないかと思うのである。
誤解にも利点はある。それを利用したお商売が成り立つことで、正体がつかめないのだからウソだという証明もできない。
やはりどこか似ている。