国境はさまざま、またげる国境、またげない国境、通り抜けるだけの国境があり、向こう側に行ってみても意味のない国境もある。
国境を越え、国籍を変えて住み着いてしまう人もいる。
特殊な能力が向こう側で求められ、国籍を変える人もいる。
走る能力も、国歌の演奏と国旗の掲揚の数を競うために買われることがある。
そういう場合の国籍変更には、カネが動いているに違いない。
参加に意義を求めた国際的祭典も、経済力を駆使した国威宣揚の場と化す。
純粋に参加の意義を希求しても、国を代表するだけの力を持たなければ望みは果たせない。
国の代表になるには、低レベルといわれている国に見当をつけて国境をまたぐ方法もある。
そこでレベル測定の目盛りをうっかり読み違えると、代表の資格取得も怪しくなるが、いちばん話の付けやすい経済問題にすりかえればことは収まる。
しかし、ハードルは一つ越えれば次にまた一つ現われる。
強国にとって都合よく仕立てられる、国際競技ルールという越え難いハードルである。
そのルールは、装着具など身体能力以外のところ、あるいは変更不可能な過去の居住実績などを組み込んで、いとも巧妙に作られる。
装着具は変えられても、過去の居住地は変えられない。
せっかくまたいでみた国境も、そのとき急にまたぐ意味のない国境になってしまうのである。
国籍とは、いったい何ものなのだろうか。