前回エクスタシーをご紹介したので、今回はこれしかないでしょう!
この機体は、前回ご紹介したエクスタシーと同じ設計者により作られた機体です。
その名はフェリックス‥。
エクスタシーは、フェリックスがフライトデザイン社で開発した機体ですが、その後、フェリックスはフライトデザイン社を退社。
その動きを見逃さなかった、当時UPヨーロッパの社長バーンド氏が、「新しい固定翼機を開発しないか」と誘い、設計はフェリックス、プロデュースをバーンド氏が引き受けて開発されたのがこのATOSです。
私がこのATOSを名機と考えたのは、実はその設計のスゴサにあります。
これについてはほとんどの方は気が付いてないのではないでしょうか?
ATOSは今まで様々な発展型が作られましたが、実はこれらの機体は、わずか2種類のカーボンのモール(型)によって作られているのです!
カーボンによる固定翼機を作る場合、どうしてもリーディングエッジを構成する通称「Dボックス」を作るためには、高価なモールが必要です。
このモールをつくるためには大きな「人件費」が必要なため、おいそれとは新しいものは作れません。
そのため、最初にこのモールを作るときには、十分な将来的発展を考えて作らなければならないのですが、ATOSではそれを見事に最初のモールでやってのけているのです。
現在ATOSの発展型としては
ATOS VQ
ATOS VRがありますが、これらの機体も、最初に製作された2種類のモールをそのまま利用し作られているのです。
そのために、開発期間やその費用が大幅に抑えられています。
力学的に考えて、ATOSの発展型のVQ,VRは、航空界では珍し「クレセント翼」(三日月翼)が採用されていますが、この種の翼は翼に大きな「ねじれ荷重」がかかるため、強固に作る必要がありますが、その辺の将来的な発展も見越して、強度的な余裕が出せるようにフェリックスは最初にモールを開発したのだと思います。
この辺の「先見の明」は、さすがはフェリックスで天才と呼ぶにふさわしいと思います。
過去航空界では、このような将来性を見越して開発し、のちに名機と言われるようになったものに、ドイツのメッサーシュミットBf109や、イギリスのスピットファイヤー、アメリカのムスタングなどがあり、日本でも飛燕などが、かなり将来性を見越して設計されたと言われた機体がありました。
おそらくフェリックスも、そのような歴史を知っていたからこそ、将来的発展性を考えて、どうにでも融通のきくモールを最初に開発したのだと思います。