たまたまテストフライトの依頼を受けて乗ってみた、ウイルスウイングの最新鋭機T2C。
今回はいよいよフライトレポートです。
もちろんT2Cもその例外ではありません。
テイクオフしてしばらく飛んでみますが、ロールのコントロールはレスポンスも良く、さりとて、フラフラもしないウイルスらしい、「落ち着きのある軽さ」です。
ピッチの反応もよく、理想的と言えるバープレッシャーの軽さが感じられます。
このT2Cと前作のT2。そのもっとも大きな違いは、リアスパーがカーボンになったことです。
カーボンにした目的は、ロールのコントロールのレスポンスをよくするためと、リーディングエッジの剛性を高めることによる高速性能の向上です。
これらはハンググライダーの高性能化にとっては重要なことですが、しかし、ハンググライダーのリーディングエッジは、固すぎるとコントロールが重くなり、そして、乱流の中では翼が風を吸収しきれずにフラフラする傾向があります。
加えて、低速の粘りもなくなりがちです。
今回のT2Cでは、それらの問題がどのようになっているのかが、個人的にはとても興味がありました。
して、それらの問題なのですが、結果的にすべてうまくまとめあげられていました。
フライトしてしばらくは、このT2Cのリーディングエッジはカーボンであることを忘れていました。
そのくらい柔らかなタッチだったのです。
気を付けると、やっぱりリーディングエッジ全体にわたる「固さ」は感じ取れますが、翼端のチップロッド並びにセール全体が柔らかく風を吸収している感じで、乗り味としては全く翼の固さを感じず、私好みの翼の固さです。
低速の粘りもそれなりにはあり、ピッチのコントロールの幅も、ものすごく広い!とまではいきませんが、それなりにはコントローラブルで、乗りにくさを感じるようなものではありませんでした。
うまくバランスのとれた翼です。
サスガはウイルスウイング。40年の歴史と経験がなければ作り出しえない翼と言えます。
試乗した当日は、たまたま渋い条件の日でしたが、こんな日だったからこそ、このT2Cの高性能を体験する出来事がありました。
まわりにはそれなりの腕をもった他のフライヤーたちも飛んでいたのですが、このT2Cの特性として、サイズが小さい割には旋回中にバンクが食い込む傾向が少なかったため、試しにVGを1/3ほど引いて、ベースバーをもつ手の位置を、目いっぱい外側にオフセットさせて、ハイサイド姿勢をとりながら低速を効かせてセンタリングしてみました。
マンフレットルーマーが良く使うセンタリング方法です。
すると、T2Cは低速でもそれなりに翼を持ちこたえてくれ、沈下速度を抑えながら回ってくれたのです。
渋いサーマルの中でこれをやり続けると、他のフライヤーよりも沈下速度が若干抑えられ、ゆっくりですがガーグルの頂点に上り詰めることが出来ます。
そうして、私のこの日のフライトは、常に人よりも上に位置することが多くありました。
T2Cはその翼の性能を使い切ってやると、素晴らしい「浮き」を見せてくれるのです。
この特性は、コンペにおいて最後まで粘り抜くには有利な特性であることはもちろんですが、タイムを縮める意味でも、ライバルより早くサーマルをトップアウト出来るため、常に有利に競技を進めることが出来ると思います。