ピッチトリマーの設定が終わったところで、メインラインを製作します。
EXEのハーネスは、基本的にオーダー時に指定がなければDHVスタンダードの長さで製作します。
これはドイツのDHVが定めた規格の長さで、現在すべてのハンググライダーメーカーは、このDHVスタンダードの長さでスイングラインを製作しています。
つまり、DHV スタンダードのスイングラインを用いたグライダーと、DHVスタンダード長のメインラインを持つハーネスは、基本的にフックインしたとき長さがぴったりになるようになっています。
しかし、悲しいかな!
20年以上DHVスタンダードの規格があるにもかかわらず、多くのユーザーが大昔のハーネスにあわせてグライダーのスイングラインを特注したりするために、なかなか定着せず、いまだに長さがあわないとのクレームが後を絶ちません。
ユーザーが勉強してくれれば、面倒なことはなくなるのですが…。
話が少し横道にそれましたが、メインラインを製造するときは、実はホットボンドで仮止めを行ってから本縫いに入ります。
ホットボンドはホームセンターで容易に手に入ります。
ホットボンドはかなり重宝するもので、両面テープでの仮止めでは接着力が不足する場合は、ホットボンドがかなり使えます。
ただ今の納期情報。 バックオーダー1着。 納期は一ヶ月ほどです。
ハーネス本体がほとんどできたところで、ピッチトリマーのセッティング。
EXEハーネスのピッチトリマーは、他社のものとは違い、ハーネスの構造上、メインラインがしっかり後ろまで移動するため(つまり、ピッチ安定が高い)、フロントラインにかかる荷重が桁違いに大きく、それだけに優秀なピッチトリマーが要求されます。
この難問に対し、試作を繰り返した末に現在のピッチトリマーに行き着きました。
しかし、やはり調整がシビアなところもあり、ユーザーの体重や重心位置を考えて、いちいちピッチトリマーのセッティングを変えていく必要があります。
そのために、工場出荷時には完全な状態に調整して出荷しています。
構造が単純なだけに、残念なことですがユーザー側でこのピッチトリマーをいじってしまい調子を崩してしまう例が後を絶ちません。
工場から出荷される前に、二度にわたってピッチトリマーの動作チェックは行っているため、まず、お客様の手に渡るときは完全な状態でお届けしているとお考えください。
実は、このピッチトリマーの最大の欠点は、最初から完成された形で製品化してしまったこと!これには後悔しました。
あまりに単純なかたちに行き着いてしまったため、ユーザーが触ってしまうのです。
この形に行き着くまで、試作品が50近くあったことを覚えておいてください。
ここで、再びファスナー周りの説明。
EXEハーネスは以前にもご紹介しましたが、フロントのファスナー周りの処理にかなりの工夫をこらしました。
以前のハーネスでは、バックルはハーネスの外側にあったことにより、ファスナーが守られることになり、それほどファスナー周りの処理が難しくありませんでした。
しかし、時代がすすみ、バックルがハーネス内に納められるようになり、見た目の美しさ、空気抵抗、そして、何よりも胸バックルとレッグストラップがいっしょになる、パラハーネスで言えばゲットアップシステムと同じ理屈で、レッグストラップのかけ忘れを防止する、現在のインナーバックルシステムになったことにより、ファスナーまわりの設計がかなり難しくなったのです。
理由は、旧型の外にバックルがあるタイプのハーネスは、バックルそのものがファスナーを保護し、ファスナーが開くのを防止していたため。
ランディング時等、体が起きている状態にあるときは、体が下にずり下がり、その体重の力がファスナーを左右に押し広げる力に変わるため、その押し広げの力をバックルが受け止めていたのです。
そうすることにより、ファスナーはバックルの位置以上に開くことはありませんでした。
もし、旧型のハーネスでも、胸バックルをとめないで体を起こした状態にすると、ファスナーが押し広げられて上方にスライドしていってしまい、フライト中等、ファスナーが開いていってしまいます。
これを防止する目的で、EXEハーネスは小さなバックルをヘソの位置ほどのところに取り付けています。
このバックルの目的は、ファスナーが開いていくことを防止するため、それと、もし、ハーネス内にあるメインのバックルが何らかの理由で開いたときのアクシデントに備えてのセーフティーの意味があります。
最近の他社のハーネスの作り方を見ていると、このバックルの位置がかなり上側につけるようになってきています。
この理由は、フロントファスナーがランディング時、スタンディングと同時にファスナーが開いてくれたほうが、かえって起き上がりが良くなるためです。
このことについては、10年以上前に、既にEXEでも検証済み。
しかし、この手法をとってしまうと、テイクオフ直後、やはりバックルが上にあるため、その位置までファスナーが開いてしまい、後に空中で閉めなおすことが大変…。などの不具合が発生してしまいます。
このことについては、EXEでもずいぶん考えましたが、結果的に、EXEが採用するVGFシステム(HP参照)の効果により、他社よりも体の起きやすさにアドバンテージが明らか…などの、他社よりも有利な要素があるため、あえてバックルの位置を上方に持っていかなくても十分起きやすくなるとの判断をしたからです。
そして、必要以上にバックル位置を上方にもっていかないことにより、フライト中のファスナーの閉め直しも治まり、結果的に使いやすいハーネスになりました…。
現状としては、もっとも優れた方法であると考えています。
以前にもご紹介しましたが、EXEハーネスでは、このラインの引き込みショックコードが、他社の一本だけとは違い二本あります。
この理由は前のショックコードは、ランディング時足にラインが引っかからないようにするためで、もう一本の後ろ側のショックコードはラインをハーネス内に引き込むためのものです。
ラインの引き込みを良くしようとこのラインを後方に移してしまうと、ランディング時足にラインが絡まってしまう…。かといって、前方にショックコードがあっては、確かに足にラインが絡まらなくなるもののラインの引き込みが悪くなってしまう…。
この問題を、二本のショックコードで解決した、EXE独自のアイデアです。
他社では現状、ギリギリのところまでショックコードを後ろに移動して誤魔化していますが、そのようなことをしなくても、このアイデアで十分解決できます。
早く他社がマネをしてほしいところです…。
ただ今の納期情報。 バックオーダー1着。 納期は現在一ヶ月ほどです。