飛行中年

空を飛ぶことに薪ストーブ、そして、旅をこよなく愛する一人の中年のブログです。

ピッチアジャスターは何のため?

2019-10-21 21:23:20 | ハング(hangglider)
ハンググライダーハーネスの多くに備わっているピッチアジャスター。

飛行中、パイロットの迎角を変更するための装備なのですが…。

実は、多くのパイロットが、その使用目的や使い方を正確に把握していないのです!

そこで今回は、このピッチアジャスターについてお話いたしましょう。



上記の話を進めていくうえで、まずはハングハーネスの構造についてのお話から始めたいと思います。

まず、パイロットの重量の多くを吊り下げているメインラインなのですが、その取り付け位置は、パイロットの重

心位置より、少し後ろになります。




このままでは頭が下がってしまいますので、フロントラインにて前を吊り上げ、そのようなことにならないようにしています。



これが、ハングハーネスのピッチ安定をつかさどる基本形になります。

そして、このメインラインとパイロットの重心位置の関係は、飛行中のピッチ安定と密接な関係があります。

重心位置よりも、メインラインが後ろに位置するおかげで、ピッチの安定が生まれるのです。

ピッチが安定すると、空中での様々な状況の中で、パイロットのフラツキが防止されるため、安定してグライダーをコントロールすることが出来ます。

具体的には、メインラインが後ろにあるほどピッチの安定が良くなって、グライダーをコントロールしやすくしてくれます。



フロントラインにかかる荷重、メインラインにかかる荷重は、重心位置からフロントラインの距離をa,重心位置からメインラインの距離をb

とすると、それぞれは…。

フロントライン荷重  吊り下げ全重量×b/(a+b)
メインライン荷重   吊り下げ全重量×a/(a+b)

※吊り下げ全重量とは、パイロット重量+ハーネス重量

になり、メインライン位置が後ろになるほどに、フロントラインへの荷重が大きくなり、ピッチ安定も向上することになります。

しかし…。

どんなにピッチの安定が良いハーネスにしても、スピードを出すためにベースバーを引き込むと、必ず頭が上がってし

まいます。


これは、ベースバーを出したり引いたりする動作は、スイングラインの付け根を中心に、円運動をするためであり、この頭上がり

はどんなハーネスも避けることはできません。



そして、この「頭上がり」は以下の2つの短所を生み出してしまいます。

その2つとは…。

空気抵抗が大きくなる。

引き込みがきかなくなり、スピードが出せなくなる。

です。

この2つの欠点を無くすために、ピッチアジャスターはあるのです。

ピッチアジャスターにより、頭をあらかじめ下げておけば…。

当然空気抵抗も小さくなり、そして、上半身の位置が低いために、ベースバーの引き込みもより効くようになってスピードが上げられるので

す。


このために、ピッチアジャスターはあるのです。

空気抵抗の軽減については、より高度な競技寄りの飛びをする場合のみ問題なのですが、ベースバーの引き込みがより効かせらることについては、

例えば風の強い海岸リッジのエリアなどで、前に出なくなった場合にピッチアジャスターを操作して、頭を下げてやればスピードがもっと出せるように

なる…。または、アクロバティックな飛びをする場合など、「もっとスピードを出したい!」そんなシーンにピッチアジャスターを使って引き込みを効

かせるんですね!

ただし…。

ピッチアジャスターを操作して頭下げを実現するには、二つの条件があります。

一つは…。

ベースバーを引き込む前に、頭下げの操作をしておく。

もう一つは…。

頭下げの状態にしても、ベースバーに頭が当たらないように、スイングラインの高さを上げておく。

以上が必要です。

もっとも、ベースバーを引き込む前に頭下げにしておく…。については、熟練したパイロットならば、ベースバーを引き込みながら同時に頭下げに出来

る場合もありますが、基本的な順番としては、先に頭を下げておくことになります。

このことを間違えてしまい、ピッチアジャスターを操作せず、頭下げの状態を作り出さないでベースバーを引き込み

、「頭が上がる…。」と不満を漏らすパイロットが実に多いのです。


ですから、ベースバーを引き込んだ状態で頭が下げっている姿勢を好まれるのであれば、必ずピッチアジャスターを操

作して、まずは頭が下がった状態にしてください。





ただし、例外として、メインライン一本だけで吊り上げているハーネス(WVテナックスのスタンダードなど)もあります。

この種のハーネスは、メインラインとパイロットの重心位置がほぼ同じ場所にあり、そのままではピッチが不安定になってしまいます。

しかし、それを補うようにメインラインがロープをスライドする構造にして、そのロープの摩擦力にて、メインライン位置と重

心位置が同じでも、ピッチの安定を保つようにしています。

つまり、この種のハーネスのピッチ安定を良くしたい場合は、ロープの摩擦力を大きくすれば良いわけであり、通常はロープを緩めてその摩擦力を大き

くすることにより、ピッチが安定するようにしたりしています。

そして…。

このハーネスでベースバーを引き込んで頭下げの姿勢にしたい場合は、ベースバーを引き込みながら、

頭が下がる方向に、手前側にもベースバーを引く力を加えることが必要です。


一見、普通のハーネスの場合よりも面倒そうに思えるのですが、慣れればこれはこれで操作がやりやすく、なんと言ってもその構造が極めてシンプルな

ので、故障の心配もなく、この種のハーネスを好まれる方もいます。


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ヘリ救出中の落下事故について。

2019-10-15 20:09:55 | 日記(diary)
台風による水害で、取り残された女性が、救出中のヘリより落下し死亡された事故…。

ちょっとこの事故、私には理解し難いんです…。

ニュースによると、命綱をつなぐフックの付け忘れと報道されているのですが…。

十分訓練されている、消防庁のレスキュー隊が、何故そのような初歩的なミスを犯したのか?

私は今、ちょっと、そのレスキューマニュアルがどのようになっていたのか、確認したい気持ちなんです。


この事故について、ネットの中だけで調べてみたのですが、上記の事故の理由以上、詳しくは分かりませんでした。が…。

一番考えられるのは、女性が救出されるとき、怖くてロープをにぎり締めてしまい、そのために、フックがかかっていなかったことに気付かず、そのま

ま吊り下げてしまったため、女性が力尽きて落下したというものです。

ハッキリとはわからないのですが、これ以外はちょっと考えられないと思います。

吊り下げる前に、何故異常にレスキュー隊が気づかなかったのでしょうか?


実は私、一般の方に、ハンググライダーの飛行疑似体験をしてもらうために、空中に吊り下げる仕事をよくやっていたのです。

高さは10メートルほど…。

でも、10メートルの高さがあれば十分死ねます。

これ、結構好評で、体験希望者がいつも長蛇の列を作ってしまうのですが、正直、絶対に事故は許されません!

しかし、いったん始めてしまうと、お客さんをさばくために、ものすごく忙しくなってしまい、集中力が続かなく、初歩的なミスを犯してしまう可能性

があるのです。

そこで、いつも私がやっていた事故防止対策なのですが…。

ハーネスを着せた体験者を、カラビナで命綱につないだ後、(この命綱も、違う素材で二重にしている。)

一気に上げるのではなく、体験者の足が離れたところで一度ストップ。その段階で、もう一度正常が確認していたのです。


この確認は、完全に吊り下げられているために、異常があればすぐに分かり、助手で手伝ってくれている方も同時にチェックできますから、違う人間に

よるダブルチェックにもなります。

ここで異常がないか確認した後に、合図を送って本格的に釣り上げてもらうというものです。



この飛行疑似体験。多いときは一日300人以上こなしていましたが、とても安全に進めることが出来ました。

今回の事故についても、これと同じことをやっていたとしたら、事故は防げたのではないでしょうか?


消防庁のレスキューマニュアルが、どのようになっていたのかはわからないのですが、もし、この手法が有効と認めてもらえるのであれば、是非とも

採用していただきたいです。




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すごいぞ!コントロールバー!! その2

2019-10-03 20:36:49 | ハング(hangglider)
前回では、ハンググライダーのコントロールバーがいかにスゴイ発明だったかをご紹介いたしました。

コントロールバーの役目は…。

・機体を持ち上げ、姿勢を維持できるとにより、テイクオフを可能とする。

・ワイヤー等を張ることにより、翼の強度を上げる

・着陸時にフレアーの動作を可能とさせ、足だけで降りることが出来る。

・機体の操縦を可能とさせる。

と、いくつもの役割を兼ねていることをご説明いたしました。

実は、もう一つ重要な仕事もコントロールバーはしているので、今回はそれをご説明いたします!



まず、飛行機はもちろん、自動車などの乗り物には、必ず操舵感覚というものがあります。

これはどのようなものかというと…。

舵を切る量や速度に合わせて、操舵の際に舵に重みが生じることです。

分かりやすく言えば、車でハンドルを切ると、その切れ角や速度に応じて、手に重みを感じることが

出来ます。

これが操舵感覚、飛行機などの飛びものでは、「舵感」などと言ったりします。

これって、非常に大事なことなんです!

皆さん、ちょっと想像してみてください。

仮に、ハンドルを切ってもまったく重みを感じない車があったとしましょう。

いくらハンドルを切ってみても、手応えなくスカスカな状態です。

そんな車でカーブを曲がると…。

視界からしか情報が認識できない状態になり、カーブに合わせようとしても、切りすぎたり戻したり…。

ふらふらと安定しない曲がり方になってしまうんです!

実際の車ではそのようなことにならないように、その構造や調整により、ハンドルを切ると上手く重みが生じるようになっています。

飛行機などでは、この舵感がもっと重要になり、舵の形状やその構造などの工夫、更に、ジェット機など高速で飛ぶ飛行機の場合、コンピュ

ータによる制御
までして、それを実現させているのです。

で…。

本題のハンググライダーの場合なのですが…。

実は、「ピッチ」の操縦については、コントロールバーがあるおかげで、理想的な舵感が実現できているのです!

このように書くと、ちょっと難しく感じるかもしれませんが、バープレッシャーというと、「あ

~!」と思う上級者の方は多いと思います。

そう。ここで御説明している「舵感」って、つまりはハンググライダーでいうバープレッシャーのことなんです。

このバープレッシャー。なぜそのような感覚が生まれるのかというと…。

ハンググライダーをはじめ、航空機には自立安定性というものが持たされています。

これは、正常な飛行状態に、飛行機が勝手に戻ろうとするもののことです。

ハンググライダーはこの作用のおかげで、たとえコントロールバーを握らなくても、一定の速度で飛ぼうとしてくれるのですが…。

仮に、いま速度を上げるために、コントロールバーを引いたとしましょう。

そうすると…。

ハンググライダーは自立安定性があるため、元の速度に戻りたがります。それに対し、人はコントロールバーを引くわけですから、

その反力で人は持ち上がってしまうのです。


この人が持ち上がった体重分が、バープレッシャー、つまり、舵感として感じられるわけです。



この感覚は、空を飛ぶものにとって、非常に大事なものです。

このバープレシャーは、初級機などの機体では重くなる設定となっていますが、競技機などでは、必要最小限の軽さに収められています。

競技機など、高性能を狙う機体では、不必要なピッチ安定はその性能を奪ってしまう要素でしかないからです。

つまり、それだけハンググライダーの競技機は、ピッチの安定に余裕がないわけですが…。

熟練したパイロットであれば、このバープレッシャを正確に感じ取り、ぎりぎりのラインでその安全性をキープすることが出来ます。

更には、その他にも最小沈下速度や最良滑空速度、更には失速速度なども、やはり、バープレッシャーが生じるおかげで、パイロットはその感覚だけで

かなり正確にグライダーの翼の気流の状態がどのようになっているのかを判断することが出来るのです。

このような、操縦するものにとってハンググライダー乗りこなしやすくなったことも、コントロールバーがあったおかげであり、飛行機でいうところ

の「舵感」、つまり、「バープレッシャー」を作り出すことが出来たからだと言えます。

ちなみに…。

某、琵琶湖で開催されている自作飛行機の競技会などでも、体重移動と電気的なサーボの制御での操縦が主で、一部(最近ワイヤーリンケージを使

って舵感が感じられる機体が増えてきている。)を除いて「舵感」が感じられない構造になっているため、機体の飛行状況は視界からのみ得られる情報

だけで飛ばせていますが、これが、何とかパイロットが「舵感」が感じられる構造を考案すれば、面白い機体が出来るのではないか?と、私は思ってい

ます。





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