今回ご紹介する機体は、イタリア イカロ社の「ラミナール」です。
この機体は今もなお人気機種ではありますが、その歴史は既に15年以上続いているハンググライダー界きってのロングセラー機なのです。
イカロ社は、もともとは「ヨーロッパモイス」としてスタートを切っています。
最初はオーストラリアのモイス社の機体のライセンス生産をしていましたが、そのうち独自の機体を製作するようになりモイスを独立。イカロ社と名前を変えて再スタートを切りました。
そのイカロ社が会社創設まもなく発表した機体がラミナールなのです。
実は、この機体は画期的な設計がなされていたことは、あまり知られていません。
発表と同時に軽いハンドリングと高性能をあわせもつこの機体は大人気となりましたが、この高性能は「新しい設計思想」があったからなのです。
以前のハンググライダーは、ハンドリングを良くしたければ細いスパーを入れ、性能を良くしたければ太いスパーを入れて対応していました。
しかし、前前回ご紹介した「HP-AT」でステップダウンリーディングエッジが実用化されると、翼端のみ細いスパーを使ってハンドリングをだし、中央のスパーは太いスパーを使って性能を出す方法が合理的となり、その後に発表されるグライダーは、ほとんどがこの手法を取り入れるようになりました。
そして、ラミナールは更にこの考えを進化させたのです。
「ハンドリングは翼端に細いスパーが入れば良くなる。ならば中央のスパーの剛性を思いっきり上げてやり、その分最初からセールのカットをゆるくしてビローが出るようにしてやればどうか‥。」
これがラミナールの設計思想でした。
VGがオフの時は、地上では今まで見たことがないくらいセールが緩んでいましたが、ひとたびVGを引くと剛性のある中央のスパーが効いてくれ、今まで以上に翼がピンっと張るグライダーになったのです。
更に、そのままだとねじり下げが今までの機体より少なくなるため、ピッチの安定がなくなってしまいますが、そこで威力を出したのが前回ご紹介した「リブ」だったのです。
リブをつければアンダーサーフェイスの膨らみを押さえることが出来るので、今までよりもピッチ安定が向上します。
ラミナールはこの二つの技術をうまく融合出来たために、今までにない乗り易くて高性能な機体を作ることが出来たのです。
現在のハンググライダーの基本形と言っても良いくらいの名機だと思います。