日本に帰ってきた私は、その後、何度かArminと連絡をとりながら、新しいハーネスの開発へとのりだした。
そして、彼は彼でM2ハーネスをより進化させていき、今回見たACERからScissorと進化させたハーネスを作ることとなったのである。
私はArminに出会う前に、既に、レッグストラップを今までより前からとる、新しいハーネスを独自に開発していた。
これは初期の鎧ハーネスであり、現在はArminが発見したVGF方式に変更されているが、今でも、シンプルで優れた方式のため、弊社のX‐SPORTに採用されている。
レッグストラップを前から取るという簡単なことで、以前は使い物にならないと思われていた三分割フレームハーネスが、まるで初級ハーネスの様に取扱いが簡単になった優れたモデルである。
そして、Arminと同じ様にVGF方式を使ったコンペハーネスも、私はどんどん進化させていったモデルを開発していくことになった。
開発当初、理論的なところは直ぐに見えていたので、コンピュータを使ったかんたんな数学モデルで解析が出来ると安直に考えていたが、さにあらず…。
ピッチトリマーの摩擦力が、そのときにかかる荷重で、摩擦係数が劇的に変わっていることが分かり、結局、メイク&トライで最適なロープとピッチトリマー、そして、フレーム寸法を割り出していくしかないとに気がついた。
更に、機械的な部品もいくつか開発する必要が分かったので、結局いつの間にか、旋盤も扱いこなせるようになっていた。
苦労に苦労を重ねて、ようやく、性能的にはどのメーカーのハーネスにも勝るハーネスが作れるようになった。
ここで問題になるのがコスト…。
本来、二分割フレームハーネスはバックプレートが二枚あるため、当然バックプレートのコストも二倍になってしまう。
しかし、私としては消費者に安価で性能の良いハーネスを提供したかったため、新しいアイデアを実用化に取り組んだ。
そのアイデアとは、バックプレートに安価なGFRP、つまりグラスファイバーを使用することだ。
通常ならばGFRPは剛性が不足しがちなため、荷重がかかるとバックプレートが変形してしまう。
これを嫌って、他メーカーはCFRP、つまりカーボンをバックプレートに使うが、しかし、GFRPに比べ、バックプレートだけで4~5万円コストが上がってしまう。
そこで私が考えたのは、アルミ材との組み合わせであった。
主な形はGFRPで作るが、荷重がかかる場所には、7N01の角アルミ材を使用し、カーボンに匹敵する剛性を出すことに成功したのである。
重量的にはほとんど変わらず…。 価格だけを4万円以上下げることに成功したのである。
こうして私の鎧ハーネスシリーズは現在のRXC-RFへと進化していった。
その後Arminとは、M2がハングハーネスから撤退してから連絡は途絶えてしまったが、出来れば彼と再び会い、そして、今の私の鎧を見て欲しい。
次回からは、こうして作り出されたハーネスが、実際に工場の中でどのように出来上がって行くか、その工程を皆さんにご紹介したい。