さて、新しいハーネスを作るに当たり、どうしても解決したかったのがパラシュートのインナーバッグの問題でした。
インナーバッグとは、パラシュートがハーネスの中まで入っているところを指しますが、この部分が、今まではレッグストラップと干渉してしまい、広くとることが出来なかったのです。
レッグストラップの位置を干渉しないように後ろに下げてしまうと、ストラップそのものが短くなってしまうため、プローン姿勢になると足が上に引き上げられて飛べたものではありません。
レッグストラップの取り付け位置を思い切ってパラシュートの前に移動する方法もありますが、実験してみると、起きあがりが悪くなってしまいます。
この問題を解決するため、私は二つのアイデアを持っていました。
一つは、レッグストラップの長さを、機械的に可変にしてしまう方法。
そして、もう一つはパラシュートインナーバッグの形を工夫して、レッグストラップがハーネス中心部の方へまわるようにする方法。
この二つのうち、前者はトラブルの可能性があると考え、後者の方法から実験していきました。
実験ハーネスを試作し、いくつのもインナーバックの形状を試したところ、見事にレッグストラップがパラシュートインナーバッグを回避し、うまく機能してくれる形状を見つけることが出来たのです。
様々な寸法、形状で試しましたが、この形が最も良い結果が出ました。
上にあるのは今までのインナーバッグ。
奥行きは旧タイプより少ないですが、バッグの容量そのものは新型の方が大きく、なんといっても横の広さが大きくなったことがお分かりいただけると思います。
この手法が思いのほかうまくいってくれたため、新ハーネスの開発はとんとん拍子に進んでいくことが出来ました。
新しいハーネスを作るに当たり、どうしても克服したかった問題‥。それはパラシュートでした。
日本では数多くのアメリカ製のパラシュートが今まで販売されました。
そして、ある時期からパラシュート製作技術が上がり、大面積のパラシュートでも安定して降下できるようになった(従来は、パラシュートは面積が小さいほど、降下が安定していた)ため、体重が軽くても大きな面積のパラシュートの方が安全ということになり、多くの大面積パラシュートが販売されました。
しかし、これは小柄な方、体重の軽い方にとっては問題があったのです。
大面積のパラシュートをサイドに取り付けると、まず、体の動きが束縛されてしまいます。
その結果、ランディング時の起きあがりに支障が出てしまい、また、空中での体重移動もバランスの悪さからヨジレが出たりして、疲れやすくなってしまいます。
更に、スモールサイズの機体ではコントロールバーも小さく、横に出っ張ってしまったパラシュートがアップライトにぶつかって、それ以上の体重移動が出来ない等の問題も出てきました。
これらの問題を解決する方法は、出来るだけ横方向にパラシュートが出っ張らないようにし、なるべく体の重心位置に近い場所にパラシュートを配置させることが効果的でした。
しかし、このことは同時に、ハーネス中心に近い場所にパラシュートを収めるわけですから、どうしてもパラシュートの取り出しを困難にしていたのです。
体の大きな欧米人では、さして問題ではなかったのですが、日本人で同じパラシュートを使うならば、何とかしてハーネス側でこの問題を解決する必要があるわけでした。
この問題に関しては、長年私は頭を痛めてきました。
もちろん、パラシュート販売者の方へは、昨年出向き事情を説明し、ご理解をいただくことが出来ました。
しかし、現在すでに多くの大型パラシュートが市場に出回ってしまっている状態です。
あと出来ることはハーネス側で、何とかしてこの問題を克服するしかないのです。
「金はないけど技術力だけは負けないつもり!」とばかりに、長年この問題を考え続けてきましたが、まず、パラシュートコンテナの構造を変えることにより、大幅にパラシュートの取り出しが改善することが出来ました。
これはEXEオリジナルの方法で、パラシュートコンテナ周りに一切ベルクロを使わないという物でした。
これにより、既に欧米のハーネスと同等以上の取り出しやすさが実現していました。
しかし、実はまだまだパラシュートの取り出しを早く出来る方法が残っていたのです。
その方法について、二つのアイデアがありましたが、それについては次回へとまわします。
海外では、新しいハーネスが次々と開発されています。
そのどれもが美しい形を持ち、いかにも空気抵抗の少なさを感じます。
弊社ハーネスも、外形のデザインは4年ほど変わっておらず、そろそろモデルチェンジを考えるときに来ているのかもしれません。
更に、機能的には既に完成していましたが、細かな部分の改良で、更に良いものが出来ることが最近分かり始めていました。
そういった理由で、今回弊社もレーサーハーネスのフルモデルチェンジに挑戦することにいたしました。
このブログはその記録をお伝えするものです。
まず、改良するに当たり最初に手掛けたのは「流線型化」。
海外のハーネスは現在かなり流線型にこだわり、「シッポ」が伸びてきました。
弊社ハーネスも、10年ほど前にシッポを伸ばしたモデルはありましたが、「テイクオフのとき邪魔になる」とのクレームが多く、結局、適当な長さに収まっていました。
しかし、時代が変わってきたので、この際、思い切ってシッポの長いハーネスに取り組むべきでしょう。
基本的に、テイクオフ時、しっかり前傾姿勢が取れていれば、シッポの長さは問題にならないはずですから…。
と、いろいろと考えましたが、出た結論として、テイクオフがしやすいシッポの短いモデルも残しておき、今回はシッポの長いタイプは、「オプション設定」の形で行こうという考えに行きつきました。
日本人は小柄な方も多いし、みんながみんな「ハードレーサータイプ」を使う必要はないのです。
そういったことで、シッポの形は「2タイプ」準備することにしました。
さて、現在そのほかにも日本のハーネス市場は大きな問題を抱えています。
それは「大型パラシュート」があまりにも普及している」ことでした。
海外、特にヨーロッパの方では扱いやすい「小型パラシュート」が主流を占めています。
しかし、日本、アメリカではまだまだ大きなパラシュートが主流を占めます。
体格が大きなアメリカ人では、さして大きなパラシュートでも問題は出ませんが、しかし、同じパラシュートを日本人が使うと、様々な問題が発生し始めます。
この問題を解決するために、わたしの新たな戦いが始まったのでした‥ 続く。
プルバックライン‥。
これは私が名づけた言い方ですが、要はメインラインを後ろに引き下げるラインのことで、バックプレート、フレームが入ったハーネスであれば、すべてのハーネスに装備されているものです。(ただし、ロープスライドタイプのハーネス、たとえば、テナックスの一部や初期のローターハーネスにはついていません)
このプルバックラインの役目は、テイクオフからフライト姿勢に入った時、メインラインを後ろに引き下げ、体を水平にするためのものです。
このプルバックラインがないと、テイクオフの後、体が水平にならずに起きたままの姿勢で飛ぶことになってしまいます。
ですから、フライト中はとても大事な役割をしているラインだと言えますね。
さて、そんなプルバックラインですが、長年使用していると、ロープの伸び等でその設定が狂ってしまうことがあるため、定期的な調整が必要なものなのです。
その調整なのですが、ハーネスをピンっと張った状態で、メインラインがスライド部の一番後ろまで、丁度移動しているようであればOKです。
ゆるすぎた場合、メインラインが後ろまで移動せず、頭が上がりやすくなってしまいます。
逆に張りすぎた場合は、足を伸ばすことが出来ずに「バレリーナ」のような恰好になってしまいます。
ただ、もともと頭上げを好む方は、2~3センチ長めにしておいても良いでしょう。
実際にはこのようにメインラインからハーネスの後ろにつながっているラインです。
このプルバックラインは、気にしている方があまりいないようですが、上級ハーネスでは大事な役割をしているラインですので、せめて、半年に一回くらいはチェックしてあげましょう。