飛行中年

空を飛ぶことに薪ストーブ、そして、旅をこよなく愛する一人の中年のブログです。

テイクオフを科学する 3

2013-03-18 19:14:15 | ハング(hangglider)

さて、前回までで一般的なテイクオフ、および、日本には紹介されていないアメリカ式のテイクオフの方法をお伝えしました。

そして今回は、これらに続く第三のテイクオフ方法をお教えいたします。

その方法とは、機体のホールド時に肩の支持を無くして腕の力で機体を上に持ち上げ、手のひらと肘の内側の2か所で2点支持を作る方法です。

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この方法は、一番最初にご紹介した、一般的なテイクオフ方法の一番最初の工程、「肩および手のひらによる2点支持」を省いてしまった方法と言えることも出来ます。

具体的には‥。

まず、最初は通常のテイクオフと同じように肩と手のひらの2点支持によるホールドを行います。

そして、テイクオフする瞬間に、グライダーを上にグッと持ち上げ肩の支持を外してしまい、いきなり手のひらと肘の内側の2点支持を作り上げ、そこからテイクオフを始める方法です。

このテイクオフ方法のメリットは、なんといっても最初の一歩目から深い前傾姿勢がとれることです。

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肩で支持をするのに比べ、肘内側で支持をすれば、前傾姿勢を最初から作れることが可能になります。

そして、前傾姿勢をとればとるほど、肘内側の押さえ込みも強くなり、ノーズ上がりを防げることにもつながるのです。

人間が走り始めるときは、前傾姿勢を作り重心を前に移動することが必要ですが、基本的な肩を使ってグライダーを支持する方法の場合、この前傾姿勢がつくれないのです。

そのため、少し走ってグライダーが浮き始めて、肩の支持がはずれて初めて前傾姿勢を作り、本格的に走れるということになります。

つまり、それだけテイクオフに距離が必要ということになってしまいますね!

ただし、最初から肩の支持を外していきなり前傾姿勢でテイクオフする方法も欠点はあります。

ひとつは、肩の支持を省いたままグライダーを持ち上げる筋力が必要なこと。

そして、同じく手のひらと肘内側の2点支持だけでグライダーのノーズ上がりを押さえ込める筋力が必要なことです。

つまり、この方法は、筋力のない女の子などには不向きな方法ともいえます。

ただし、筋力があれば、この方法は最初から前傾姿勢で一気にテイクオフを始めることが出来るため、より早くスピードが乗せられ、安全なテイクオフが可能となるのです。

このテイクオフ方法は、上級者のテイクオフを見ていると、結構無意識のうちに多くの方が実践しているのを目にします。

筋力がある程度あれば、それだけテイクオフしやすいということなのですね。

テイクオフが苦手な方は結構多くいらっしゃると思いますが、3回に分けて書いたこのブログの内容を理解し、ご自分のテイクオフのまずいところを考え直し、より安全なフライトに結び付けられれば喜ばしいと思います

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所沢市民文化フェア!

2013-03-14 20:27:37 | うんちく・小ネタ(absurd story)

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突然ですがみなさん、これなんだか分かりますか?

実は、来る4月6日7日に、所沢の航空記念公園で「市民文化フェア」というイベントが開催されますが、それで使うアトラクションなのです!

所沢は知る人ぞ知る、日本での航空発祥の地であり、当時、アンリファルマン機が飛行に成功しています。

それを記念して所沢には航空記念公園があるわけですが、今度開催される市民文化フェアでは、その当時の飛行を疑似体験してもらおうということで、当時の飛行機を模したものにお客さん乗せて、クレーンで吊り下げてしまおうということになったのです。

ちなみに、当時飛んだアンリファルマン機はこんな飛行機でした。

Photo


ちょっとは似ていると思いません?

この仕事は、某氏から依頼されて、私のところで全面的に機体を作ることになり、お祭り当日も、全面的に面倒を見させていただくことになりました。

今日は、この仕事の依頼主である、所沢青年会議所の方々を交えて全面的なチェック、および安全性の確認のため、実際にクレーンで吊り下げて確認してもらいました。

幸い何の問題もなく、これならば所沢の皆さんに、当時の飛行の疑似体験を楽しんでいただけると思います。

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実際に青年会議所の方に体験してもらいましたが、みなさん、子供に帰ったように喜んでいました。

お祭り当日は、多くの皆さんに楽しんでいただけるよう頑張ります!

やっぱり、こんな風にみんなを喜ばせることが出来る仕事って、やりがいがありますよね!

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テイクオフを科学する 2

2013-03-13 09:22:14 | ハング(hangglider)

前回では、一般的なテイクオフについては2点支持が重要であることをご説明しました。

そして今回は、日本には紹介されていないもう一つのテイクオフ方法について解説します。

して、そのもう一つの方法とは‥。

アメリカ方式です。

これは日本で教えられているテイクオフ方法とは全く違います。

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どのように違うかというと、上図のように腕をかなり曲げます。

この腕を曲げる量は、理想的にはメインラインが張ってしまうところまでですが、ラインが張らなければ腕が曲げられるところまで曲げてしまいます。

前回のブログをしっかり読まれた方ならば、この時点で2点支持が出来上がっていることに気付かれると思います。

つまり、グライダーを持つ手のひらと、既に張られたメインラインの付け根

この二か所で2点支持が出来上がっているのです。

このアメリカ式テイクオフの場合、少し浅めのアタックアングルでグライダーを構え、スタートは前に倒れるように走り始めます。

これは、最初の走りはじめでは、どうしてもグライダーが後に残ってノーズが上がりやすくなるためで、そうならないように、まずはグライダーを先に走らせ、それに人間が追いつくように
するほうが無理がないからです。

このテイクオフ方法の利点は、最初からスパッと加速に入れられて、短い距離でもスピードをのせられることにあります。

それに対し欠点ですが、

まず、長身でなければメインラインを張ることが出来ず、このテイクオフ自体がうまく出来ない。そして、グライダーを腕の力だけで持ち上げられるだけの筋力が必要‥ 。

つまりは、それなりのガタイがなければできないテイクオフ方法なのです。

そのため、小さな体の日本人には不向きなため、日本には普及しなかったのです。

余談ですが、昔のウイルスウイングの機体は、若干テールヘビーが多かったのは、まさにこの理由で、走り始めのアタックアングルが少ないアメリカ方式のテイクオフの場合、実は、ウイルスウイングの機体のバランスは丁度良いものになっていました。

もっとも最近では、一般的なテイクオフ方法でもバランスが良いように考えられて、ウイルスの機体は作られていますからくれぐれもご心配なく‥。

このように、私たちがあまり知らないテイクオフ方法も存在しているのですが、

実は、

実は実は‥。

更にもう一つ、別のテイクオフ方法が存在しているのです。

それは、前回ご説明した一般的なテイクオフ方法と、今回のアメリカ式テイクオフ方法の良いところだけをとったような方法で、最上級のパイロットなどは、長年の経験から無意識のうちに使っている方もおられます。

次回はそのテイクオフ方法についてご説明します。

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テイクオフを科学する 1

2013-03-11 20:44:56 | ハング(hangglider)

「私の乗った名機」の連載の途中ではありますが、テイクオフについて、ちょっと面白い連載を数回に分けて書かせていただきます。

山に行くと、ベテランといえるような方でも、結構ヒドいテイクオフをされる方を結構目にします。

それらに方は、実はテイクオフの理論が分かっていないため、ヒドいテイクオフになってしまっているだけで、ちゃんとテイクオフの理論を理解すれば、安全なテイクオフは必ず実現すると私は信じています。

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テイクオフを上手に行うためには、いくつかの要素がありますが、その中でも今回は、いかにすればノーズをあげずにスムーズなテイクオフが行えるかについてご説明します。

まず上の図を見てください。

これは「ホールド」がしっかり出来ていないときの例ですが、パイロットがグライダーを手のひらの一点だけで支持されていたため、走り出した途端にグライダーの慣性力で人間が先に進んでしまい、結果、ノーズが上がってしまっています。

こうなるのは、グライダーの支持の基本がわかっていないからです。

して、その基本とは?

助走中、「常にグライダーを2点以上の場所で支持していること」なのです。

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上の図は正しいホールドが出来た時の図です。

肩と手のひら、更に腕全体の2点以上でアップライトを支持しています。

このような正しいグライダーのホールドが出来れば、助走を始めてもグライダーが後に残らずノーズが上がるのを防いでくれます。

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上の状態から更に助走を続けると、グライダーが浮きはじめ、肩の支持が外れます。

このままでは大事な2点支持が維持できなくなりますが、しかし、上半身をより前傾させ、更に助走を加速する体制をとれば、実は、上図のように、肘の内側と手のひらによる2点支持が実現するのです。

これにより、再びノーズ上がりを押さえ込むことが出来ます。

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そして、更に加速すると完全にグライダーが浮き上がり、手の持ち替えに至るわけですが、この時、スイングラインがピンと張り、人間の体重がグライダーに伝わることになります。

その結果、手のひらとスイングラインの付け根、二か所の支持が実現することになるのです。

この体制のまま、更に助走を加速しようと前傾を強くすると、スイングラインを通して人間がグライダーを引っ張る形となり、ノーズ上がりが押さえられたきれいなテイクオフが出来るわけです。

と、ここまでは今まで教本等に紹介されていたテイクオフの方法‥。

でも、実はこれ以外に、日本では紹介されていないまったく違う別のテイクオフ方法が存在しているのです!

次回はそのまったく違う別のテイクオフ方法についてご紹介いたします。

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私が乗ったハンググライダーの名機 4

2013-03-03 20:26:34 | ハング(hangglider)

今回は、ハングフライヤーなら誰もが馴染みのある機体をご紹介いたします。

Falcon_id24_3

アメリカ ウイルスウイング社のファルコンです。

私は、この機体は名機だと思います。

「初級機」というと、ややもすると手を抜いて開発しそうな風潮が否定できない中、このファルコンは、あのウイルスが本気で取り組んだ機体なのです。

ウイルス社も、先にご紹介した「SPORT]のビジネス的な成功より、「よりたくさんの人に乗ってもらえる機体こそが大事」と悟り、初心者にもやさしく扱える機体の開発に本腰を入れます。

当初は、インストラクターの平日の仕事を作るため、キットグライダー(プランと材料のみウイルスより購入し、スクールでグライダーを製作するというコンセプト)の発想もありましたが、やはり、信頼性などの問題によりそのアイデアは却下。通常の製造ラインにて量産することになります。

ウイルスは世界中からあらゆる講習機を取り寄せ(なんと日本のSTEPも!)、徹底的に研究‥。

それにウイルスがもともと持っていた高い技術力をあわせて、FALCONは完成したのです。

それだけあって、このFALCONは今までにない扱いやすい特性を持っていました。

とにかくクセが全くない‥。これがFALCONの最大の特徴です。

加えて、ハンググライダーの中では最も理想的な失速特性を持っており、ベースバーを無理やり押し出しても、ノーズをストンっと落とすハンマーヘッドストールには決して入らず、ブカブカと失速しながら垂直降下に入るもっとも安全な失速特性を持っています。

加えて、ほぼ完全な失速に入りながらも、コントロール性はある程度生きているという、まさにパーフェクトな操縦性を持っていたのです。

これだけ完全に理想的な操縦特性を持っている機体は、私は後にも先にもFALCONしか知りません。

幸運にも私は昔、このFALCONのほんの一部ですが、その開発を手伝わせていただくことが出来ました。

私が担当したのは、主にスモールサイズの最終的な煮詰め‥。

ウイルスには軽量テストパイロットがいなかったからです。

と、いっても、私が意見できたのは、せいぜい重心位置とラフラインの細かな長さ調整くらい‥。

それ以外は口を出すことが出来ない、最初からほぼ完成されたグライダーになっていました。

この開発のお手伝いをしている中、最終的なチューニングを担当していたウイルス社のジムおじさんが、テストフライトエリアのクレストライン(ロサンジェルスから東に一時間ほどのエリア)で、この開発中の講習機FALCONの前で、「私は、この新しい機体で多くのフライヤーがハンググライダーを覚えることを夢見ている‥」と、私に話してくれたのが、いまだに脳裏に焼き付いています‥。





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