この間、連日のように辺野古新基地建設事業の海上警備業務の問題点が大きく報道されている。私も、国会議員団の沖縄防衛局長への申入れに立ちあったり、防衛局への公文書公開請求で入手した警備業務の契約書、特記仕様書、積算内訳書、見積書等のチェック等に追われている。
この海上警備業務では、残業手当の未払いや、落札率99.9%という契約等、多くの問題があるが、その中でも特に許せないのは、防衛局が海上抗議行動に参加する市民ら約60人の名前や顔写真のリストを作成し、海上警備の警備員に抗議者名を特定した行動記録を逐次防衛局に報告させていたという問題だ。個人情報の違法収集・違法利用で、憲法の表現の自由を侵害する重大な違法行為である。
沖縄タイムスは、内部告発をした警備員の証言をもとに次のような事実を指摘している。
「海上警備業務の警備船には、約60人分の顔写真や名前のリストが備えられている」 「警備員は、船やカヌーに乗った市民をデジカメで撮影し、画像を拡大してリストと照らし合わせる。『操船者』『乗員』『カヌー』などに分類して名前、進行方向などを把握。報告は現場指揮を執る母船や現地本部を通じて防衛局に上がる」 「報道関係者のリストはないが、腕章などから報道機関名を特定する」 「こうした監視は立入り禁止の臨時制限区域の外でも実施している。また、市民が拠点とする汀間漁港敷地内の車からも監視していて、出港準備の段階から把握する」
たとえば、抗議船を監視している警備船からは次のような無線の報告があげられるという。
「0910(まるきゅーひとまる)A丸出港。乗員7人。操船者B。乗船者にCを確認、ナンバー35も確認」 (このような時刻の言い方は、旧海軍方式だという)
私も一昨年夏から船長として海上抗議行動に参加しているが、早い時期から海上保安官たちが、「●●船長!」と私の名前を言って呼びかけてくるので驚いたことがある。沖縄タイムスは、「リストの写真や名前はどうやって調べるのか。別の警備員は『うちだけでは無理。海保や警察から回してもらっていると思う』」と指摘しているが、加藤裕弁護士も次のように指摘している。
「リストにある市民の氏名をどう調べたのかという問題も残る。マリン社は知り得ない。防衛省もその立場にない。その他の公安機関の関与が指摘され得るのではないか」(タイムス2016.5.14)
この問題については、16日の国会議員団による井上防衛局長への申入れでも取り上げられた。井上局長は「現在、受注者に確認を求めているところです。結果が出しだいお答えします」と逃げたが、今後、徹底的に追及していきたい。
(海上警備業務の警備船)
<追記>「防衛局よ、お前が言うか!」
なお、海上警備業務、陸上警備業務の契約に伴う特記仕様書には、「警備員は、過去1年間に個人情報保護法の研修または教育を受講しているものとする」と明記されている。警備業務の警備員に何故、個人情報保護法の研修を義務づけているのかは不明だが、まさに、「防衛局よ、お前が言うか!」である。
それにしても内部告発した警備員は、研修のおかげで個人情報保護法の趣旨をよく理解していたこととなる。