今日(3月9日・火)、魂魄の塔横の鉱山開発計画について、沖縄県環境部長らとの交渉を行った。県からは、松田環境部長の他、自然保護課長、保護援護課長、辺野古新基地建設問題対策課長、海岸防災課副参事等が出席。我々の側は、平和を求める沖縄宗教者の会のキリスト者・僧侶らの他、糸満、八重瀬、南風原、南城、豊見城の各島ぐるみ会議のメンバーら10名が参加した(具志堅さんは、知事との公式な面談を求めているので、今日は参加していない)。
(環境部長(中央)、自然保護課長(右)、保護援護課長(左)ら)
現在、業者から自然公園法にもとづく開発届が出されており、県が受理すれば受理から30日が経過すれば業者は開発行為に着手できる。ただ、自然公園法第33条2項では、受理から30日間の間は、知事は風景保護のために開発の中止やその他の必要な措置を命じることができるとされている。
宗教者グループの方々や私たちは、「現地の素晴らしい景観、そして魂魄の塔をはじめ、多くの戦跡も近く、こうした『歴史の風景』(糸満市意見書)を保護するためにも、同法を適用して知事が中止命令を出すこと」を求めてこの間、懸命の取組を続けてきた。特に具志堅さんの県庁前での6日間のハンストは大きな反響を呼び、知事も座り込みテントを訪れて、「これは人道的にやってはならないことです」と表明している。
私たちの今日の環境部長交渉での質問・要請事項は末尾に添付するので参照されたい。
環境部長の答弁は、次のようなものだった。
「知事も議会で答弁されましたが、我々も自然公園法第33条2項の措置命令についてどう検討するか、今、考えているところです。
具体的に措置命令を出す場合は、どういう考え方にもとづいて命令を出すかということをきちんと論理的に組み立てなければなりません。
今、そういう組み立てができるのかどうか、知事は、『未来の子どもたちに沖縄らしい風景をどう残していくのかも含めて、全体的な考え方をどうつなげるのかを考えていきます。人道的にこれはやってはいけないということが、法律的にどうつなげることができるのか、とことん最後まで探していきます。それが、今回の場所だけではなく、いろんな場所につながるようにしていきたい』と言われています。
県として今後、糸満市の考え、具志堅さんや皆様方のご意見もふまえて検討していきたい。ただ、現段階でまだ具体的なところまでいっていないので、今日のところは、県として一生懸命、考えておりますということしか言えません。」
今日は、「検討中」というだけで、議会での知事答弁以上の具体的な説明はなかったが、こうした取組を続けながら、知事の毅然とした措置命令発令を求めていきたい。
・NHKニュース「2業者が無届採石、県が指導」(2021.3.9)
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<今日の交渉での質問・要請事項>
1.知事は、3月6日、県庁前の座込みテントを訪れてハンガーストライキを続ける具志堅さんを激励した。しかし、今回の問題について具志堅さんと公式には話し合っていない。早急に具志堅さんと知事との公式な面談の場を設定するよう求める。
2.現在、魂魄の塔横の熊野鉱山の自然公園法にもとづく開発届が県に提出されている。
知事はこの問題について、現在、開催中の県議会で、「当該地域の土砂が辺野古埋立に使われることは、悲惨な戦争を体験し、多くの犠牲者を出した県民の心を深く傷つけるものであり、とうてい認められない」と表明した。
そのような立場に立つのなら、熊野鉱山の開発届に対してどう対応するのか、明らかにすること。
3.自然公園法33条2項では、「知事は国定公園について、当該公園の風景を保護するために必要があると認めるときは、普通地域内において---その風景を保護するために必要な限度 において、当該行為を禁止し、若しくは制限し、又は必要な措置を執るべき旨を命ずることができる」と定めている。この条文を適用し、熊野鉱山の開発届に対して禁止を命じること。
4.糸満市は、業者の開発届を本年1月18日、県に送付したが、その際、「調書」(意見書)を添付した。そこでは「風致・景観及び周辺環境への影響」として次のように述べ、知事に対して「自然公園法第33条2項に基づく措置命令を検討すべきである」と求めている。
・「国道から平和創造の森方向の眺望は、緑のつながりが織りなす稜線となっており、地域資源の一つであるが、大規模は試掘により、この稜線に著しい改変が生じてしまい、眺望も著しく損なわれる懸念がぬぐえない。」
・「届出地周辺には慰霊塔などもあり、来訪者も多い。そのため、戦跡等とともに、斜面緑地も、歴史の風景として保全を図る必要がある」
糸満市は、「眺望」だけではなく、戦跡等についても「歴史の風景」と位置づけて自然公園法第33条第2項の適用を求めている。この糸満市の意見を最大限、尊重すべきではないか?
5.知事は現在に至っても、今回の熊野鉱山の開発届に対して、自然公園法第33条2項にもとづく禁止命令を出すことを表明していない。同法の適用を躊躇している理由は何か?
知事は、「どのような対応が可能か、全庁的に検討したい」と述べたが、自然公園法の他に何らかの法令を検討しているのか?
6.国の「国立公園普通地域内における措置命令等に関する処理基準」では、露天堀による鉱物の掘採又は土石の採取について、「山稜線の著しい改変を伴う場合など風景を保護するために必要があると認められる場合は、措置命令等を行う」としているが、「露天堀でない方法によることが著しく困難であると認められる」場合等は、「この限りではない」とされている。
今回の熊野鉱山の開発届に対しても、この国の基準にもとづき判断するのか?
7.ただ、この国の処理基準は、冒頭で、「本基準に掲げる行為であるかどうかにかかわらず、風景を保護するために必要であると認めるときは、措置命令等を行うことができるものであるので念のため申し添える」とされている。
今回は、全国で唯一の戦跡としての性格をもつ国定公園であり、周辺の戦跡・慰霊塔などの「歴史の風景」を保護することが必要であるから、国の一般的な基準に拘束されないのではないか?
8.南部地区の鉱山は、畑や道路の際から垂直に近い崖で深く掘られ、埋め戻しもされていないところが多い。県として、こうした鉱山の乱開発の現状についてどう認識しているのか?
9.また、県内の鉱山には、森林法、自然公園法、農地法等に違反した事例が確認されている。県として、こうした県内の鉱山の法令違反の現状についてどのような対応策を講じるのか?
10.戦没者の遺骨が残っている可能性が高い南部地区の未開発緑地帯での土砂・石材の採取を禁止する条例を制定すること。
11. 県は2月24日から、熊野鉱山予定地での遺骨収集活動を開始した。現在までの収集活動の状況と今後の予定を明らかにされたい。