沖縄県は、ヤンバル・奥港を辺野古への石材海上搬送に使用することを許可してしまった。今日も辺野古のゲート前に行ったが、「知事はあらゆる手段で辺野古新基地建設を阻止すると言ってきたのに、いったいどういうことか!」という抗議の声が沸き上がっている。山城博治平和運動センター議長も、「これまで知事を正面から批判したことはないが、今回の件を受け、覚悟を決めて翁長県政と向き合う必要が出てくる」と、知事を批判したという(琉球新報)。知事は、この事態の深刻さをどこまで自覚しているのだろうか?
さらに、本部港(塩川地区)からも海上搬送が行われることが判明し、9日には、本部町島ぐるみ会議の皆さんと一緒に本部町役場を訪ね、本部港を新基地建設のために使用させないよう求めてきた。
本部町島ぐるみ会議は、「本部港を辺野古新基地建設のために使うな!」という幟を多数作成し、22日にはこの問題についての学習会を開催する。私も今までの経過や問題点等を報告させてもらう。オール沖縄や県民会議等の動きも始まった。しかし、今日(11日)の琉球新報は、来週半ばにも奥港や本部港から石材の海上搬送が始まると報じた。事態は急を要する。なんとしても奥港、本部港を辺野古新基地建設のために使用させることを止めさせなければならない。県、本部町への取組みが急がれる。
(奥の港。前方左側が石材仮置のための港湾施設用地使用許可が出された広場。右側の岸壁の使用許可も出されている)
(本部港(塩川地区)。本部町は、辺野古への石材海上搬送のための荷さばき地使用許可を出した)
早急な取組みが必要となっているが、いくつか問題点をまとめてみたい。
1.沖縄県の奥港使用許可は、県の審査基準に合致しておらず、取り消されなければならない!
11月2日、この問題が報道された直後に県の港湾課を訪ね、「県として辺野古阻止を掲げながら、何故、許可をしたのか?」と尋ねた。課長の弁明は、「港湾関連法、条例に基づいて審査した結果、許可せざるを得なかった。許可しなかった場合、裁判等を起こされれば県は負けるのでやむを得ない」というものだった。先日、オール沖縄の役員さんたちが県幹部と面談した際にも、同様の説明がなされたという。
しかし、これでは今後の県の対応が危惧される。公有水面埋立法に基づく設計概要変更申請に対する知事の承認権、埋立承認の際の留意事項に基づく知事の承認権、さらに、サンゴの特別採捕許可申請の許可権限等、知事には多くの権限があり、それらを毅然と行使することによって、辺野古新基地建設事業は阻止できると言ってきたのではなかったか? いくら「県政の柱は辺野古新基地建設阻止」と唱えても、こうした個々の具体的な許認可の際に、「やむを得ない」として許可をしていけば、事業はどんどん進んでしまう。個々の具体的な問題に対して、知事が何処まで踏ん張るかということが重要なのである。
県の港湾課は、11月7日付で「港湾施設使用許可に係わる審査基準等」をホームページに掲載している。奥港の使用許可を出すにあたって、県行政手続条例が定める審査基準や標準処理期間が定められていないことが問題となり、大慌てで作成したのであろう。
審査基準の(5)は、「環境を悪化させるおそれがないこと」である。ヤンバル・奥の港に大量のダンプトラックを集中させ、石材を搬出することは、あの静かな奥地区周辺の「環境を悪化させる」ことは明らかである。県はこの審査基準に基づき許可を出すべきでなかった。少なくとも、申請者に環境への影響を調査・報告させ、それを厳密に審査すべきであったが、そのような作業は行われていない。
今からでも遅くない。知事は、「今回の許可は審査基準に合致していなかった」として、港湾使用許可の取消し、あるいは撤回すべきである。「いったん許可を出したのに、その直後に取消し、撤回はできない」と言うのであれば、そもそも、埋立承認の取消し、撤回などあり得ないこととなる。少なくとも、環境への影響を審査するまでは、海上搬送を開始しないよう指導すべきである。
港湾使用許可の取消しに対して、業者が裁判を起こしたり、政府が陰険な対応に出たとしても、知事がとことん踏ん張れば、県民は知事を支持し続ける。
2.本部港の岸壁使用は許可されておらず、今のままで辺野古への石材搬送はできない
9日の、本部町建設課長、港湾管理事務所長との話し合いで、本部町は、従来から、本部港(塩川地区)の岸壁使用に際しては、許可申請の手続をさせていないことが明らかになった。本部町は、今回の辺野古への石材搬出のための岸壁使用の許可も出さないまま、使用を認めるとしている。
しかし、県の港湾管理条例第7条では、「(岸壁、荷さばき地、港湾施設用地等の)港湾施設を使用しようとする者は、知事の許可を受けなければならない」と明記されている。この点については、県の港湾課も驚いたようで、「ともかく事実を確認してから対応します」と対応に焦っている。
従って、このままでは辺野古への石材搬出のために岸壁を使用することはできない。本部港は県の港だが、条例31条により港湾施設の使用許可等を本部町が処理するとされているだけで、あくまでも県条例に基づいて運営されなければならないことはいうまでもない。知事は、本部町に対して、石材の辺野古への搬送を開始することなく、岸壁使用にあたっては条例を遵守するよう行政指導すべきである。
また、本部港(塩川地区)では、ひっきりなしにダンプトラックが出入りし、すさまじい粉塵等が舞い上がっている。この現状の上に、辺野古への石材が持ち込まれれば環境への影響はさらに深刻となる。前述の審査基準(「環境を悪化させる恐れがないこと」)は、本部港にもそのまま当てはまり、港湾施設の使用は認めることができない。
知事の毅然とした対応が今、求められている。このままでは、知事と県民の間にできた溝は、ますます拡大し、取り返しのつかないこととなる。