今日の沖縄タイムス、琉球新報両紙は、1面トップで「辺野古に奄美大島の土砂」と大きく報じた。沖縄南部地区の遺骨混りの土砂使用に対して批判が強まっている中で、「批判を避ける狙いがあるとみられる」という。
設計変更申請の審査の際、防衛局は県に対して、「現時点で、県外からの土砂調達は考えていない」と文書回答していたので(2021.1.22)、これは信じられないことだ。南部地区の遺骨混りの土砂調達に対する反対運動の盛り上がりに窮したものであろう。しかし、県外からの埋立土砂調達はハードルが高く、やはり沖縄南部地区の土砂が中心になると思われる。防衛局は様子見をしているとしか考えられない。
沖縄県には、県外から埋立土砂を持ってくる場合、特定外来生物の侵入を阻止するための条例がある(「公有水面埋立事業における埋立用材に係る外来生物の侵入防止に関する条例」)。奄美大島から埋立土砂を調達するのであれば、この条例が適用される。「90日前までに県に、特定外来生物の調査結果、防除策等を届出る」、「県は立入調査を実施することが出来、その結果、特定外来生物の付着混入があれば、防除の実施や搬入の中止を勧告することができる」というものだ。
この条例は2015年当時、那覇空港滑走路増設埋立事業で奄美大島から石材を調達する際に初めて適用された。その際は、条例に基づいて県が現地に立入調査を行ったところ、3カ所の採石場、3ヵ所の搬出港の全てで特定外来生物(ハイイロゴケグモ、オオキンケイギク)が見つかった。県はそのため、「採石場でダンプトラックに積んだ状態で150秒間洗浄する」、「ダンプトラックの移送時、ブルーシートをかける」等を指示した。
これは石材だから洗浄が出来たものだ。今日の報道では、「政府関係者によると、土砂を洗浄することで県外からの搬入可能だと判断した」とされているが、土砂を洗浄すればほとんどが流れてしまう(そのため防衛局は以前、特定外来生物の過熱処理等の実験まで行っている)。土砂の洗浄は不可能である。
現在の各地の状況を見ると、きちんと調査すれば特定外来生物は必ず見つかる。県が毅然と対応すれば、県外からの土砂調達はできない。
下は奄美大島の採石場である。イタジイの森が見るも無惨に削られている光景に思わず息を飲む。奄美大島も世界自然遺産に指定されているが、このような大規模な採石場が島の至る所にあるのだ。辺野古に土砂を搬送するとなれば、奄美の自然はさらに破壊されてしまう。
奄美大島の採石場の現状については2019年5月27日の本ブログを参照されたい。
(2016年当時、奄美大島の石材搬出港にあった特定外来生物の監視台。壁に各特定外来生物の写真が貼ってあったが、こんな監視台から小さな特定外来生物等、見つかるはずはない。