2月6日(月)、日本最大級と言われる大型ボーリング調査船・「ポセイドン」が大浦湾に入ってきた。総排水量4,000トン、全長78mという見上げるような巨大な船である。
翌7日から海底ボーリング調査が再開されたが、今回の海底ボーリング調査には不可解な点が多い。ここでは、会計法に違反した発注方法の問題点について指摘する。
(大浦湾で海底ボーリング調査を行っている大型調査船「ポセイドン」)
辺野古新基地建設事業では、2014年以来、次の2種類の海底ボーリング調査が行われてきた(どちらも一般競争入札)。
*シュワブ(H25)地質調査(その2) 21地点 (平均水深 -3m)
契約金額(当初) 4億5,598万円 当初契約の工期:2014.5.31~11.30(6ヶ月)
*シュワブ(H26)地質調査 3地点 (平均水深 -33m)
契約金額(当初) 1億8,878万円 当初契約の工期:2015.1.7~3.31(約3ヶ月)
この2つの海底ボーリング調査とも予定の工期内に業務を終えることができず、当初契約後2年近く経過した昨年3月の和解の時点でも、「24カ所のうち、23カ所の調査終了。1ヶ所は継続中」という状態のまま、昨年3月31日で契約は終了した。その時点では、24カ所目の調査地点にガイドパイプを打ち込んだままだったが、その維持管理や撤去作業は、全く関係がなかった「シュワブ(H26)中仕切岸壁新設工事」(大成建設らの共同企業体が受注)に実施させるとして契約は終了したのである。
そして、今回、日本でも最大級の調査船「ポセイドン」によるボーリング調査が再開された。当然、継続中だった1ヶ所の調査が再開されるのかと思ったが、そうではないことが分かった。防衛省は「調査を中断していた1カ所については、現在、その実施の適否を含め、検討中です。他方で、護岸工事を安全かつ適切に履行するために必要な施工計画を検討するため、新たに13カ所のボーリング調査を実施する」と説明している(福島瑞穂議員の本年2月6日の質問書に対する防衛省回答文)。
2月13日の沖縄タイムスは「辺野古海底地盤改良へ 県に設計概要変更申請必要」と大きく報道した。おそらくは、昨年までの海底ボーリング調査で何らかの問題点が見つかり、大型調査船による全面的なボーリング調査のやり直しが必要になったものと思われる。
そして問題は、今回の大型調査船による追加ボーリング調査の発注方法である。公共工事である以上、防衛局は一般競争入札で追加ボーリング調査の業者を決めなければならないのは当然である。発注者が特定の業者に恣意的に工事をさせることは許されない。たとえば国の会計契約手続に関する会計法第29条の3 は「請負その他の契約を締結する場合、---公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならない」と定めている。 前述の「シュワブ(H25)地質調査(その2)」、「シュワブ(H26)地質調査」とも、一般競争入札で受託業者が決定されているのもそのためだ。
しかし、2月10日、沖縄防衛局で確認したところ、今回の追加ボーリング調査は「シュワブ(H26)ケーソン新設工事(1工区)」(五洋建設・清水建設・みらい建設工業共同企業体が受注)で実施していることが明らかになった。前述のように「シュワブ(H26)地質調査」は3地点だけの調査契約だったが、契約金額は約1.9億円にもなっていた。今回は13カ所の調査を日本でも最大級の大型調査船で行うのだから、その費用は莫大なものになるだろう。さらに「掘削調査は、24地点中残り1地点で実施するのに加え、実際の工事施工で必要な数十地点で行う予定」とも報道されている(2107.2.8 琉球新報)。このような大規模なボーリング調査を、一般競争入札にかけることなく、ケーソン工事の追加工事として行わせることは許されない。会計法違反の疑いが強い。
なお、防衛局は辺野古新基地建設事業で再三、このような違法な手法を使っている。先日からキャンプ・シュワブ内で生コンプラント設置工事が始まったが、この工事も、「シュワブ(H26)厚生施設建築工事」(H27.1.26契約、国場組)の変更契約として追加されたものである。当初契約とは無関係な工事である以上、一般競争入札で発注しなければならない。