なんとなくクラシテル

獣医という仕事をしている人間の生活の例の一。
ほとんどが(多分)しょーもない話。

割り箸事故

2009年04月16日 | 仕事
の一連の裁判がようやく結審したようだ。もう10年か、永過ぎる・・・・・・。
 裁判で何が明らかにされたのか、傍聴もしてないから分からないし、報道の内容を読んでもなんだかよく分からないんだけど。

 以前から疑問に感じていたこと。保護者は、折れた割り箸の片割れをきちんと保全確保して医者に持っていったのかな?これ、最低限やってくださらないと、医者は判断のしようがないんですよ。割り箸はレントゲンに映らない。従って、物証を確保して状況説明を明確にしてくれないと。
 但し、じゃあ、片割れの割り箸の現物を見せられて、で、状況説明を聞いて、なら事態を正確に診断できたか?かなり難しいんじゃないか、と思う。あっしだったら、「飲み込んじまったかな?」と思うだろう。確か、問診では嘔吐の訴えだったはず。胃内異物のせいで嘔吐か?と考えるのでは?で、繰り返すが割り箸はレントゲンでは映らない、となると、小児に内視鏡?これは救急の範囲内なのかしら?うーん、こんな負担の大きそうな検査をすれば(当時は経鼻内視鏡なんて細い口径の奴は存在してません)、その間に子供の容態が急変していた可能性も高いのではないか。で、内視鏡で胃を診た、として、割り箸がみつかりません、となると時間が経過している、腸に流れちゃったか?と考える可能性が高い。じゃあ、喉の傷は何?喉に傷があれば、その違和感からでも嘔吐は生じる可能性大である。傷から割り箸が出っ張ってなければ、脳に刺さっていると気付くというのは、無理だと思う。

 で、じゃあ、仮に刺さってる、と気付いたとして。どうにかなったでしょうか?ほぼ、無理じゃないかな。助けるのは。引っこ抜けばOK、なんて事案じゃない、引っこ抜いたら死んでます。というか、このケースは刺さった時点で即死しててもおかしくなかったのではないか。

 今日その話をしていて、患者さんの発言は。「私の子供が小さかった頃、私の親に『箸をくわえて走らせるな!』ってしつこく言われたもんよ。喉に刺さるからって」との事。そうなんです、保護者の過失はどう評価されたんでしょうか?

 10年前にこの事件が報道された時感じたのは「最悪の貧乏くじを引いたな、この先生、お気の毒だ」ってことなんだ。つまり、誰が救急で当直していても、どうにもならないケースだっただろう、限りなく、と思っていた、ずうっと。
 で、裁判につくづく時間がかかって。お互いに良かったことがあったのかどうか?

 動物でも異物飲み込み事故は本当に多い。飼主が全然気付いてないことも多々あり。その中で多分そうじゃないか?と診断して切腹手術まで持ち込むのは大変だ。レントゲンに映るものならまあね、映らないものはどうする?以前腸に軍手を詰まらせたケースでは、現物を引っ張り出して、目の前で明らかにしてるのに「覚えがない」の一点張りでねえ・・・・・。

 夜間救急で飛び込んできたケースでは。口に焼き鳥の串が挟まってる、「取れない取れない!~~~」ってパニックに陥ってる飼主をなだめつつ、何とか取ったのはいいんだが。翌日、その飼主は診療代金を投げつけるみたいに置いていきました。思い出すたび不快な気持ちになる事案。

 なんかね、この事故をマスコミが大騒ぎして報道してから、救急医療がおかしくなっていったような気がするんですよ。当時から、どうも公平性に欠ける報道姿勢だなあ、と思ってたんだけど。当時のマスコミの煽り方は異常な感じだったものねえ。医療報道に関しては、感情に走るような「文学的な」表現は謹んでほしいよ。それをやりたきゃ、小説でも書いてくださいな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする