なんとなくクラシテル

獣医という仕事をしている人間の生活の例の一。
ほとんどが(多分)しょーもない話。

「プロフェッショナル 仕事の流儀 ワンちゃんスペシャル」

2018年03月13日 | 仕事
の、訓練士に対する意見、その2。対抗意見を述べます。

 「犬を更生させる」というナレーションで笑っちゃったんだ。アホくさ。犬に善悪の感情なんぞあるはずないっしょ。更生ってどういう意味じゃ
つまり、この番組を作っている側が勉強不足なんですよ。刑務所かっつの。犬はただ、状況に対応しているだけなんですね。まあ、犬にとっては「刑務所」かもしらんなあ、この訓練所。環境は劣悪っぽいし、いつおっさんに怒鳴られるか、殴られるかわからんし。どうしたって、おっさんの一挙一動に注目せざるを得ない。で、びくびくしつつ、とにかく言う事を聞いてりゃいいらしい、という事をそれなりに覚えた犬が「更生」した、とみなされる。わけね。で、「更生」できなかった犬は、この場所で終身刑ってことかあ。

 この訓練所らしき場所の問題点を挙げると。
1)環境が劣悪:別に成田空港の犬ホテル並みにしろ、というわけじゃない。しかし、一応預かりものをよくまああんなきったない場所に置いとけるなあ、と感心。ワクチンは打ってるようだが、寄生虫はそれでは防げない。TVには映らないから分からないが、おそらく相当臭いはず。匂いに敏感な犬だと、それだけでノイローゼになりかねない。
2)記録を取っている節がない:犬のいわゆる「問題行動」は犬側からするとちっとも「問題行動」じゃない。悪意でもって何かすることがないのが動物で、犬側からすると、どの行動にも、ちゃんとした「理由」がある。しかも、その理由は結構単純なことが多い。それは、飼い主から詳細な問診を取って、さらに、犬の状況をきっちり記録しているうちに見えてくるもの。「更生」が目的だと、その辺の対応が雑になる。記録してないから、時間がかかるわけ。状況分析ができてないんだもの。
3)扱っている犬の数が多すぎ:人ひとりで扱える動物の数は、自分のようなプロでもいいとこ5匹。きちんと状況を把握して記録を取って、となると、その辺が当然限界になってくる。完全にオーバーフローです。多頭飼育崩壊寸前にも見える。1匹に関わる時間はかなり少ない筈だから、当然成果が上がりにくくなるよね。

 さて、当院ではどうでしょうか?
 爪切りするのに大苦労する犬なんか、ゴマンといますよ。普通です、こんなの。しかも、うちには助手なんかいません。自分と飼い主のみ。で、爪切りは、できますんですよ~~。飼い主に捕まえてもらって爪切りしまーす。飼い主の方に捕まえてもらうというのがポイント。飼い主の皆様には、自分とこの犬を扱う自信を持ってほしい。これは、飼い主が自分で見出さなくちゃならないし、その方がやりがいもあるってもんです。犬には、ちっと大人になっていただきます。大丈夫、うちでは、あんたが予想するほどひどい目には逢わないから。それを理解すると、落ち着いてくれる犬多し。

 で、あの訓練士のおじさんは、猫を扱うことはできないと思うんだ。猫、あの方法でやったら、殺しちゃうと思うよ。猫の爪切りのほうが断然大変なんだけど、うちではやってます、普通に。どの飼い主さんも頑張って協力してくれますし、できるようになるのだ。悪いけど、訓練所なんぞにお願いする必要なんかないよ。 

 

 
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「プロフェッショナル 仕事の流儀」

2018年03月13日 | 仕事
という番組がある。NHKが各仕事で当代一流とされる人達に取材して、その仕事ぶりを紹介するもの。今年1月29日には「ワンちゃんスペシャル」と称して、トリマー・獣医・訓練士の3人を取り上げていた。
 確か、この番組が取り上げようとした矢先に逮捕されちゃったコンピューター関連の人物がいましたよね。予告編までやってて、本編放映直前に逮捕、ちょっと危なかった~~、とNHKは思ってるかもねえ。

 大体、自分の仕事がらみの「スペシャリスト」なる人をテーマにした番組は見ない。あまり勉強になることもなくて、困ったなあと思う事が多いのだ。動物園なんかは面白いんですけど。ので、詳細はよくわからないのだが、この放映回に出た訓練士の訓練手法について、どうやらかなり議論が起きたようで、自分の大学の獣医科同窓会でも「あれどう思う?」という話が出たし、日本獣医動物行動研究会が体罰に対する声明を発表する、という事態になっている。無視できそうにないな、と思って、とりあえず、動画を探して見てみた。



 あーなるほどね。

 さて、この訓練士さんと同じようなセリフをどこかで聞きましたねえ。「戸塚ヨットスクール」ですよ。「自分は悪者になっても」かあ~~。うわ―自己満!!

 戸塚さんは日本全国から困り果てている親が送り込んできた「問題児」とされている子供を預かってビシバシスパルタ指導をやって、その体罰が高じて死者まで出して逮捕されて、でも、結局考えは変えてないし、信奉者も相変わらずいて、いまだ存続してる。体罰でもってしつけ、というのは、ものすごーく「魅力的」らしいっすね、一部では

 こういう訓練所なる場所の問題点多々あるんだけど。動物に対する体罰を伴う「躾」と称するものと、児童虐待・DV・パワハラ・セクハラ等々、根本は同じと見ていいんじゃないかと思う。一番深刻に捉えらているはずの児童虐待だって「こうやらなくちゃしつけにならない」と考えている人間は相変わらず多い。これはね、戦争が悪いと思ってるんだ。戦争で兵士間の変なきまりをいろんなところから来た色んな社会的立場の男どもに分からせ、守らせるには、暴力を使った方法が最も浸透させやすいから。戦争の悪行というか、悪影響ってとんでもない場所にまで及んでいるんですよ。腹立つよなあ。もっと腹立つのは、そういうのをどうしても礼賛する方向にもっていきがちなメディア。同じ舌で「虐待やめましょう」なんて言うなっての。

 この件については、ちょっとガンガン言いたいので、しばらく連載します。
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