ベック式!難単語暗記法ブログ

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心を動かし、やる気を高める作文指導

2008-02-05 | Weblog
   “ベック式”カリスマ講師塾①

 「フリーダム・ライターズ」という映画をご存知だろうか。
ロス暴動から2年後のロサンゼルス郡ロングビーチ。肌の色ごとに徒党を組み、人種間の憎しみを剥き出しにし、抗争に明け暮れる生徒たちの通う凄まじい高校にやって来た一人の国語教師が、文章を書かせることで生徒たちの意識を大きく揺さぶり、生への、そして知への欲求を高めていくという、教育に携わる者必見の映画である。
 エンドロールで、この話が実話だと知った私は、驚愕し、早速帰りに100円ショップに立ち寄って生徒の人数分のノートを揃えた。
 ちょうど夏期講習が始まる頃だったので、すぐに配り、作文指導と銘うって文章を書かせることにしたのだ。
 案の定、生徒たちは不平を漏らし始めた。
 何でこんなの書かなきゃいけないんだとブーブー言う声を聴きながら、とにもかくにも作文指導は始まった。
 「今、関心のあること」「人間にとって大切なもの」「尊敬する人」「私が親になったなら」などのタイトルで自由に書かせた。
身近なものから徐々に想像力を要するものへと深化させていきながら、誤字を訂正し、表現の誤りを指摘し、内容を評価するうちに、徐々に手応えが出始めた。
最初、5~6行しか書かれていなかった文章がだんだん長くなっていったのである。
 変化の兆しが見えはじめたのは、「自分の名前」というタイトルで書かせたときだった。
 それは自分の名前の由来とその名前に込められた願いを訊いてその感想を書かせるというものだった。
 生意気盛りとはいえ、彼らは中学生である。今まで考えたこともなかったであろう、名前の由来や、そこに込められた親の願いを知って書かれた作文はどれも皆非常に素直な内容のものであった。
 それと同時に、今まで聞いたこともなかったであろう、生まれたときの状況を知ることもできたようだ。
 例えば、今では元気一杯の、ある生徒の「健康」を意味する名前は、未熟児で病弱だった彼の健やかな成長を願ってつけられたものだったそうだ。
 そういう親の思いや名前に込められた願いを知った子どもたちは、自分の名前を愛するようになった。
 事実、このタイトルを発表したときに、「げ~っ、私自分の名前嫌いやねん!」と叫んでいた女の子のノートには「この名前が大好きになりました」と書いてあった。
 その他、ほとんどの作文に「自分の名前の意味をはじめて知った」「自分に対する親の願いがわかった」という感想に続いて、「こんな機会が持ててよかった」「こんなチャンスをくれた先生に感謝したい」などと、恐ろしく素直な言葉が並んでいた。
 多くの生徒の文章量がこれを機に増えていった。
こうなったらしめたもの、彼らと本気のやりとりができる。叱咤や激励、評価をどんどん書いていった。
 議論をすることができないと言われる今時の中学生たちと議論をはじめたのである。
 まったくやる気のない文章をたらたらと連ねていた生徒には挑発をもって臨んだ。次の回のノートには、案の定、彼女は「先生は私のことが嫌いなんでしょう」と書いてある。
 だが、やる気のない文章よりは怒りの方がはるかに扱いやすい。こちらも本音をぶつけることができた。彼女も負けまいと反撃を試みた。
 意外にうまいその文章を褒めつつも、塾に通っていながら、やる気がないなどと甘ったれたことをいうもんじゃないと本音をぶつけた。
 そして、彼女の潜在的な力を認め、勉強も必ずできる、全力で応援するという趣旨のことを書いたのである。
 この時、彼女のノートには、「コメントを見て泣きそうになりました。期待を裏切らないように頑張ります」と書いてあった。「私のこと嫌いなんでしょう」と書いてきた女の子がである。
 このドラスティックな変化は決して偶然ではない。たまたまうまくいったわけではないのである。
 彼らの書いたもの対して、こちらもコメントを書くわけだが、戦略的に毎回一人(こちらの気持ちを是非伝え、やる気を引き出したい生徒など)をピックアップしてノート一面にびっしりとコメントするようにしている。通常2~3行のコメントに慣れている彼らは一面のコメントに驚くことだろう。そしてほぼ確実に心を動かす。
 「戦略的に」というのがずるいと思われるかもしれないが、私たちはアマチュアではない。プロの講師には絶対に効果をもたらす技が必要なのである。
 感動は勉強に対するやる気へとつながっていくのである。

                               別宮孝司
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