ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

法科大学院への裁判官・検察官派遣停止

2015年03月29日 13時07分01秒 | 受験・学校

 今日(3月28日)の日本経済新聞朝刊42面12版に「裁判官・検察官の教員派遣 24法科大学院 停止」という記事が掲載されています。

 見出しの24のうち、17の法科大学院は既に募集を停止しているか、今年募集を停止することが決まっていますので、大した影響はないと言えるかもしれませんが、今後も再編が進むかもしれないという点では見落とせません。

 法科大学院では、裁判官または検察官が教員として派遣され、講義が行われています。しかし、最高裁判所および法務省は、合格率の低さなどを理由に、2015年度から24の法科大学院に対する派遣を停止する意向を示しています。

 既に募集を停止している明治学院大学および東北学院大学、今年募集停止となる大東文化大学、白鴎大学、獨協大学、東海大学、関東学院大学、新潟大学、信州大学、広島修道大学、香川大学・愛媛大学連合、久留米大学および鹿児島大学、来年募集を停止する予定の東洋大学、静岡大学、京都産業大学および熊本大学については、仕方のないところと言えるでしょう。しかし、募集を継続している7校については、今後の運営に支障が出ることになります。おそらく、2015年度の時間割が組まれ、準備が進められているはずですから、穴埋めを急がなければなりません。問題は、担当者を今月中に見つけることができるかということです。場合によっては、2015年度に入ってから探し、後期のみの科目とすることになるのでしょうか。

 裁判官・検察官の派遣停止は、文部科学省による補助金減額政策と並び、法科大学院の淘汰・再編を促す効果を持つこととなるでしょう。ただ、両者は必ずしも連携しているという訳ではなく、入学者数が10人未満である法科大学院も派遣停止の対象となるとは言っても、若干の食い違いが見られます。

 ここで、2015年2月1日21時47分33秒付の「熊本大学の法科大学院も募集停止に向けて調整か」で載せた、5段階の補助金増減率を確認しておきます。なお、既に募集停止をしているところ、または募集停止を決定したところについては取り消し線を付しておきます。

【基礎額算定率】

 A(90%)

 早稲田大学(45%加算)、一橋大学(40%加算)、東京大学(35%加算)、京都大学(30%加算)、慶應義塾大学(30%加算)、北海道大学(15%加算)、大阪大学(15%加算)、上智大学(10%加算)、名古屋大学(5%加算)、学習院大学(5%加算)、中央大学(3%加算)、東北大学(1%加算)、筑波大学(加算無し)

 B(80%)

 神戸大学(20%加算)、創価大学(15%加算)、成蹊大学(5%加算)、愛知大学(5%加算)、千葉大学(5%加算)、九州大学(加算無し)、横浜国立大学(加算無し)

 C(70%)

 同志社大学(35%加算)、岡山大学(24%加算)、琉球大学(15%加算)、立教大学(10%加算)、甲南大学(5%加算)

 D(60%)

 立命館大学(7.5%加算)、金沢大学(5%加算)、明治大学(5%加算)、広島大学(5%加算)、関西大学(5%加算)、関西学院大学(5%加算)、西南学院大学(5%加算)、青山学院大学(4%加算)、静岡大学(加算無し)、熊本大学(加算無し)、法政大学(加算無し)、神奈川大学(加算無し)、中京大学(加算無し)、南山大学(加算無し)、近畿大学(加算無し)、日本大学(改革案提案無し/加算無し)、山梨学院大学(改革案提案無し/加算無し)、東洋大学(改革案提案無し/加算無し)、名城大学(改革案提案無し/加算無し)、福岡大学(改革案提案無し/加算無し)

 E(50%)

 北海学園大学(加算無し)、京都産業大学(加算無し)、國學院大學(改革案提案無し/加算無し)、駒澤大学(改革案提案無し/加算無し)、専修大学(改革案提案無し/加算無し)、桐蔭横浜大学(改革案提案無し/加算無し)、愛知学院大学(改革案提案無し/加算無し)

 2015年度からの派遣停止の対象となった法科大学院のうち、学生募集を継続する7校は、いずれも上の基準額算定率ではDまたはEに分類されています。しかし、金沢大学の法科大学院は、補助金基準額算定率60%に5%が上乗せされることとなっていますが、派遣停止の対象となりました。また、Dに分類されるところでは、他に中京大学、南山大学、近畿大学および福岡大学が対象となっており、いずれも加算額なしなのですが、同様の法科大学院は他にもあります。さらに、Eに分類される法科大学院では、愛知学院大学が募集停止を発表していますが、派遣停止の対象とはなっていないのでしょうか(それとも、既に停止されているのでしょうか)。日本経済新聞の記事によれば、Eに分類されるところで派遣停止の対象となっているのは京都産業大学、北海学園大学および専修大学であり、その他は対象となっていないようなのです。いずれも入学者数(ないし定員充足率)による判断でしょうか。基準が不明確である嫌いも否定できません。

 いずれにせよ、法科大学院の再編は今後も進められることでしょう。補助金に次いで教員の派遣停止となれば、どちらかのみが行われるとしても存続は難しくなります。

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