ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

コストが高くなっても民営化?

2015年03月05日 10時12分38秒 | 国際・政治

 今日(3月5日)の3時付で、朝日新聞社のサイトに「(静岡)下田の学校給食『高コストでも民間に』 検討委」という記事が掲載されています(http://digital.asahi.com/articles/ASH34440YH34UTPB005.html)。静岡版の記事です。

  見出しのみを読めば「?」と思うところです。記事を読み進めても「?」は消えないのですが、下田市が抱える事情もあるのでしょう。簡単に片付くような問題でもないようです。

 下田市は伊豆半島の南部にあり、江戸時代には下田奉行も置かれ、幕末に開港されて外交の舞台ともなった場所ですが、静岡県内では最も人口が少ない市であり、人口減少も続いています。市の公式サイトによると、2015年3月1日現在の人口は23573人、世帯数は11305です。

 市の産業は観光業が中心であると記してよい状態でしょう。工業については目立つものがなく、商業も衰退傾向にあるということです。観光業に頼らざるをえないということは、とりもなおさず、脆弱な経済的、または社会的基盤の上に成り立っていると表現することも可能でしょう。1980年代後半に咲き乱れた、今でも懐かしむ人が少なくないバブル経済が見事に崩壊してから、この地を訪れる観光客は激減していますし、2011年3月11日の東日本大震災の影響は大きかったようで、Googleで検索をかけると「計画停電、電車の運休、観光自粛ムードにより、観光客が激減。ホテル、旅館、その他観光関連産業の事業所を中心として、従業員、パート・アルバイトの大量解雇が発生。ハローワーク下田は、空前の人数の求職者、雇用保険手続きの失業者であふれた。観光産業に過度に偏った下田市の弱点があらためて露呈した」というWikipediaの「下田市」の項目にある文章が様々なサイト・ブログに引用されていることがわかります。

 このような情勢において、下田市が行政改革に取り組まなければならないことは明白です。とくに公務員の定数削減が喫緊の課題であると言えるでしょう。市は既に定員適正化計画を定めていますが、これが今回の話題につながります。

 市内には四箇所の学校給食調理場があります。しかし、いずれも老朽化しているために、2015年度中に、新たに学校給食センターを建設し、2016年度から運営することとしています。おそらく、一箇所に統合するということなのでしょう。学校給食は教育委員会の所掌事務に含まれているため、下田市教育委員会は、学校給食センターの在り方を第三者の視点でチェックするという趣旨の下、「市学校給食あり方検討委員会」を設けました。この委員会には、下田市内の小中学校長、調理員、保護者代表などからなる14人の委員がおり、3月3日まで検討を続けてきました。

 上記朝日新聞記事では、同日の会合の様子が報じられています。最終回ということで、報告書をまとめた訳ですが、問題はその中身です。

 そもそも下田市が定員適正化計画を定めていることから、市の正規職員が退職した後も補充しないという部署なりポストなりがいくつもあるでしょう。調理員もその一つで、市は正規職員である調理員が退職した後には補充人事を行わないとしています。そうなると、早晩、正規職員の調理員がいなくなる可能性もある訳です。

 そこで、学校給食センターを下田市直営の機関とするか、業務を民間に委託するか、という選択になるのですが、「市学校給食あり方検討委員会」は民間に委託するのが望ましいという結論を報告書に入れ、まとめたそうです。しかし、民間委託は行政主体(国、都道府県、市町村などのこと)のコストを下げるために行うはずなのに、下田市の学校給食に関しては民間委託よりも市直営のほうが安く付くという計算結果が伴われています。

 記事に書かれているところでは、「民間委託と直営の経費を比較するため、市教委は東京の大手給食会社に参考見積もりを依頼し、委員会に提出した。それによると、人件費や光熱水費などを含めた年間の総経費は、民間委託で7400万円、直営だと6100万円だった。民間委託にすると、市からの指揮命令を受ける管理者を別に設ける必要があり、管理経費を上乗せした結果、高くなったのではないかと市教委はいう」。市直営のほうが1500万円も安いのです。

 報告書が手元にある訳ではないのでよくわからないのですが、一社だけに見積もりをさせたのでしょうか。そうであるとすれば疑問が湧きます。普通は複数の業者に見積もらせないのか、と。学校給食には或る程度の特殊性もありますが、一社しか存在しないということでもないでしょう。下田市内に業者がなければ、静岡県内、あるいは神奈川県西部(小田原市など)にも業者はあるのではないでしょうか。

 また、民間委託の場合の管理経費については、それが適正なものであるかという問題もあるでしょう(委託とは言っても最終的に市の業務であることに変わりはないので、一定の経費がかかることは当然です)。

 ともあれ、市直営のほうが安ければ、当面は直営を維持すべきである、という見解もありえます。実際に、「市学校給食あり方検討委員会」においてもこのような意見が出されたようです。しかし、直営を維持するということは定員適正化計画の変更をも意味しかねず、そこまで手を付けることができないというのが教育委員会の見解でした。こうなると、民間委託しか選択肢はないということになります(実は臨時職員のみで運営するという選択肢も存在しますが)。

 少なくとも短期的には下田市直営のほうが安く上がるが、長期的な視点に立てば民間委託とせざるをえない。このようにまとめられる、というところでしょうか。 

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秋月城址へ行く(4)

2015年03月05日 00時45分46秒 | 旅行記

 〔今回は、「待合室」の第296回(2008年12月7日から16日まで)として掲載した記事の再掲載です。かなりの時間が経過したこともあって、一部を修正しております。なお、写真撮影日は2008年9月7日です。〕

 

甘木駅から自転車で秋月城址に向かい、城址に入る橋に到着しました。いよいよ、杉ノ馬場に入ろういうことで、小さな橋を渡ります。

 橋を渡りきる前に、橋の上からの風景を撮影しようと思いました。下流のほうを撮影したものです。 左側は、いかにも城の石垣のように見えて、なかなかの雰囲気をかもし出しています。川面からは大きな石が見えます。何らかの法則で敷き詰められているようにも見えますが、どうなのでしょうか。多くの川のように、実はコンクリートで川底が固められていたとすれば興醒めです。

 秋月美術館の奥のほうを撮影してみました。昔ながらの日本家屋です。 いや、日本家屋でも上層の人々などが住む家屋でしょう。今では屋根瓦なども見なくなりつつあります。葺いたりするのが大変でもあるからでしょう。しかし、秋月城址付近ではよく見かけます。

 実は、私は鉄筋または鉄骨の住宅よりも日本家屋のほうを好みます。冬の寒さなどを考えると鉄筋または鉄骨の住宅のほうが住みやすいのですが、夏などは日本家屋のほうが住みやすいような気がするのです。また、手間はかかりますが畳敷きの部屋は気分のいいものですし、板敷きであっても、日本家屋のほうが西洋風家屋より心地の好いものです。

 そして、縁側があることです。ベランダよりも縁側です。ついでに言えば、庭に木々が生えていて、蚊に悩まされたりしながらも虫たちなどの様子を見たり、鳴き声を愛でたりするということができる、そんな空間を手に入れたいと思っています。

 橋の上から、反対側を撮影しました。 こちらのほうが、いっそう好ましい風景となっています。手前はお店の屋根なのですが、その屋根も懐かしさを覚えさせるものとなっています。この奥のほうへ、川を遡ると、どこへ向かうのでしょうか。甘木駅前の観光案内所でもらった絵地図によると、この野鳥川は八丁峠のほうから流れているようです。そうすると、山の向こうは嘉麻市のほうでしょうか。また、古処山や屏山などのほうにも行けるでしょう。

 秋月美術館です。ここが杉ノ馬場の入口にあたります。中に入ってみようかと思ったのですが、入っていません。この後、秋月からは遠く離れた場所にも行きたかったからです。 今考えると勿体無い話です。

 ここは、秋月藩の重臣であった戸波家の屋敷跡であるそうで、黒田家の遺品は勿論、ルノワール、横山大観、岸田劉生の作品も展示されているそうです。

 それにしても、簡素でありながら風格を感じさせる入口です。 質実剛健という言葉を形にしたようなものでしょう。豪華絢爛な建物は見慣れると飽きてしまいますが、質実剛健という感じの建物は、見慣れれば見慣れるほど味がわかってきます。

 この建物が何であるのか、よく覚えていませんが、秋月美術館からは少し離れています。お店か食堂かもしれませんが、 何となく、民家園を歩いているような気もしてきます。このような、趣のある建物は、実際に住むとなったら維持費やら何やらがかかって大変でしょうが、一軒欲しいと思ったりもします。

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