静岡の山に登っていると たいていどこかで茶畑の中を歩くことになる。 腰の辺りまで刈り取られたお茶の木は 全体で見ると 緑の幻術作品の様に綺麗。 斜面を歩くきつさは別として開放感と 美しさを感じることが出来る。
それとは別に前から不思議に思っていたことがあった。 お茶畑には 一列に並んだお茶の木の間に 小さな隙間がある。 畑の畝の様に 伸びている。
この隙間に立って お茶の新芽を摘んでいるのだと思った。 絵に出てくるお茶摘みは 茶摘み娘が ここに立って 絣の着物を着て 摘んでは籠に入れていた。
「あんな狭いところに立てない。 私 お茶農家には お嫁に来れないな。」「途中で疲れても 座ることも出来ないよね。 直立不動の作業だよ。」凄い激務だねと思っていた。
神野山の麓にもお茶畑があった。 静岡ほどでは無かったけれど あちこちに綺麗なお茶ばたけは広がっている。「ほらね やっぱり狭いよ」
と あ! 何か面白い機械が来た。その機械は火星人の様な長い足を持っていて お茶の木の上の高さに アーチ状の刃がついていて 進む毎に 新芽を根こそぎ刈っていく。
機械で摘むことは知っていたけれど やはりあの隙間に入って 手で摘む代わりに ぶい~~んと機械が刈るのだと思っていた。
あの狭い隙間は 足長の機械が入る 隙間だったのだ。
機械を操っているおじさんは 機械の端に座って 摘まれて(というより刈られて)袋がいっぱいになったら 袋を取り替える。
横から見ると 袋は 風神の担いだ袋の様に 熊谷次郎直実の母衣の様に 後ろにたなびかせている。 袋の中で茶葉がくるくる踊っているのが見える。 早い早い あっという間に 袋はいっぱいになって 次の袋に・・・
暫くその鮮やかな仕事ぶりに見とれていた。 やっと謎が解けたよ。 これなら私もお茶農家にお嫁に行けるかも知れない
あ 私結婚しているのだった・・・ しかも すでに婆さん