世界一周タビスト、かじえいせいの『旅が人生の大切なことを教えてくれた』 

世界一周、2度の離婚、事業の失敗、大地震を乗り越え、コロナ禍でもしぶとく生き抜く『老春時代』の処世術

雨宿りに見る人情

2011年07月02日 | 
旅先では



概ね地元の人はにこやかで親切だ。




どんな貧困に喘ぐ国に行っても



子供たちは


どこまでも明るく屈託のない笑顔を見せてくれる。




それがまるで


定番のように。






旅人は


その裏にある現実の影までは気づかない。



気づこうとしないのかもしれない。






また


一過旅人であれば




そこまで気にする必要もないのだろうが。










いきなりのスコールだった。



夕食を終えて


ホテルに帰る途中、




豪雨が襲った。





雷は轟き、


道は瞬く間に川になる。



歩けば今にも足がとられそうだ。





それ以上に怖いのは



感電だ。





信じられないかもしれないが



ベトナムでは


電線による感電死がよくある。






歩いていて


電柱のトランスから火花が散って


危うく火傷しそうになったこともある。









突然の豪雨に襲われたとき


ホテルまで


2ブロックのところだった。






レストランの前のテントの軒先の下で



小降りになるまで待つことにした。






10分が経ち



20分が過ぎた。





雨は一向に収まる気配がない。



むしろさらに勢いを増すようだ。






その間、


レストランのオーナーらしき無愛想なおばさんが出てきては




テントにたまった雨を


従業員に下から押し上げさせて取り除く。






邪魔にならないように


小さくなって雨をしのぐボクに




端にどくよう冷たくあしらう。





ボクは


雨が止むまでと


ビールを所望した。





夕食は済ませたばかりだったので



その旨伝えた。






ところが



ビールだけなら



向こうの店に行け、と




数軒先の怪しげなバーを指さす。






そこへ行くまで



ボクは道を泳いでいかねばならないだろう。


(これはチョット大袈裟だが)





少なくとも


下着までずぶ濡れになり、



へたをすれば

足をすくわれてドボンするか



感電死するかだろう。






だが


レストランのオバさんの目は


それを促す。






意を決してボクは



バーの前まで走った。





入ろうかどうしようかと逡巡していると




土砂降りの中


傘を差した女性が通り過ぎようとしていた。






ボクは


渡りに船とばかりに


彼女の傘の下に飛び込んだ。




断られることを覚悟に。






ところが


「OK」 と


何とも嬉しい返事。





そして


ホテルの前まで送ってくれた。






「お礼に、ボクの部屋で服を乾かしていかない?」



という


見え見えの誘い文句にも




爽やかな笑みを浮かべて雨煙の中に消えていった。







これで

ベトナム人のイメージを壊さずに済んだ。




日本人のイメージは壊したかもしれないが。