「軟禁されている、助けて」
悲痛な泣き声が電話から漏れてくる。
そこは、福岡県のとある小さな町だった。
彼女は外国からショービジネスの世界へ飛び込んだ。
だが夢見ていた世界とはあまりにかけ離れていた。
彼女との面識は一切ない。
ただ彼女の要請に応じてボクは車で土砂降りの雨の中2時間の道のりを走った。
なぜかじっとしていられなかったのだ。
やっと着いたが、門前払いを食らった。
そこの経営者にも直接掛け合ったがまったく無駄だった。
そこには20人ほどの外国人タレントが軟禁されていた。
小さな部屋にすし詰めの生活を余儀なくされ、
ほとんど外に出ることさえできない。
買い物に行く時は監視がつく。
逃げ出さないようにだ。
外部の人間との接触は必要最小限に抑えられる。
かろうじて携帯電話は高いお金を払って手にすることができた。
借金まみれだという。
こうして半年間休みなく、
ショータイムの時間だけお客の前に出て披露する。
そうして得たわずかな給料を母国に暮らす子供や親への仕送りに当てる。
仕方ないという。
――――――――――――――――――――――――
ボクは警察に連絡した。
やがて、最寄りの派出所から中年の警官が軽自動車のパトカーでやってきた。
その狭いパトカーの中で状況を説明した。
その警官は困り果てた様子で本部に電話を何度も入れた。
本部からの指示で、軟禁されている本人と電話で話したいという。
ボクは、彼女の携帯に電話して事情を話した。
だが警官は英語ができないからと直接対話を断った。
完全に逃げ腰が見て取れた。
そしてそれは、次にかかってきた県警本部からの電話で明らかになった。
その道に詳しい上司が電話口に出た。
こういう外国人は、
お金を稼ぐために来ているのでみんなタコ部屋で生活している。
外出させないのは、迷子になる可能性があるからだ。
買い物に同伴するのも同じ理由。
監視ではない。
携帯電話を持たせていることで、軟禁とはいえない。
ナルホド、物は取りようだ。
そして、暴行や売春行為があれば別だが、とその警官は付け加えた。
本人が惨状を訴えても認められないという。
つまりそれが外国人を受け入れる日本の実態なのだ。
ボクは彼女に助けてやれないことを謝った。
そして、もし暴行や性行為を強要されたらすぐに連絡するように言った。
彼女は力なく電話の向こうで頷いた。
こうしてボクの行為は無駄足に終わった。
―――――――――――――――――――――――
以前紹介したベトナム人の研修生もアパートのタコ部屋で生活していた。
彼女らにはまだ自由があった。
ただ、月4~5万円という安月給は同じだ。
これは最低賃金にも満たないが、
なんだかんだと理由をつけて差し引くのだろう。
日本の使う側からすれば、安い賃金で労働力を確保でき、
平均給料が月1万円前後の国からすれば
4~5万の手当てでも大いに魅力的なのだろう。
そして、お互いが持ちつ持たれつの実態を
政府も公安も黙認している、というのが現実なのだ。
―――――――――――――――――――――――――――
アルジェリアの事件は言うに及ばず、
中国では、
日本人経営者に対する軟禁事件が起きている。
多数に無勢だからだ。
労働組合が認められていない中国では
こうするしか労使間交渉の手立てがないからだろう。
日本に来ている外国人出稼ぎ者たちにとっていまだ労使交渉は存在しない。
反乱を起こせば、強制送還が待っている。
これも国際格差の証左なのだ。
日本人もいずれ世界で同じ立場に置かされる日が来るかもしれない。
それを覚悟して、国際情勢に精通しておく必要がある。
ボク自身ヤバイ橋を渡りつつ、また一つ勉強になった。
悲痛な泣き声が電話から漏れてくる。
そこは、福岡県のとある小さな町だった。
彼女は外国からショービジネスの世界へ飛び込んだ。
だが夢見ていた世界とはあまりにかけ離れていた。
彼女との面識は一切ない。
ただ彼女の要請に応じてボクは車で土砂降りの雨の中2時間の道のりを走った。
なぜかじっとしていられなかったのだ。
やっと着いたが、門前払いを食らった。
そこの経営者にも直接掛け合ったがまったく無駄だった。
そこには20人ほどの外国人タレントが軟禁されていた。
小さな部屋にすし詰めの生活を余儀なくされ、
ほとんど外に出ることさえできない。
買い物に行く時は監視がつく。
逃げ出さないようにだ。
外部の人間との接触は必要最小限に抑えられる。
かろうじて携帯電話は高いお金を払って手にすることができた。
借金まみれだという。
こうして半年間休みなく、
ショータイムの時間だけお客の前に出て披露する。
そうして得たわずかな給料を母国に暮らす子供や親への仕送りに当てる。
仕方ないという。
――――――――――――――――――――――――
ボクは警察に連絡した。
やがて、最寄りの派出所から中年の警官が軽自動車のパトカーでやってきた。
その狭いパトカーの中で状況を説明した。
その警官は困り果てた様子で本部に電話を何度も入れた。
本部からの指示で、軟禁されている本人と電話で話したいという。
ボクは、彼女の携帯に電話して事情を話した。
だが警官は英語ができないからと直接対話を断った。
完全に逃げ腰が見て取れた。
そしてそれは、次にかかってきた県警本部からの電話で明らかになった。
その道に詳しい上司が電話口に出た。
こういう外国人は、
お金を稼ぐために来ているのでみんなタコ部屋で生活している。
外出させないのは、迷子になる可能性があるからだ。
買い物に同伴するのも同じ理由。
監視ではない。
携帯電話を持たせていることで、軟禁とはいえない。
ナルホド、物は取りようだ。
そして、暴行や売春行為があれば別だが、とその警官は付け加えた。
本人が惨状を訴えても認められないという。
つまりそれが外国人を受け入れる日本の実態なのだ。
ボクは彼女に助けてやれないことを謝った。
そして、もし暴行や性行為を強要されたらすぐに連絡するように言った。
彼女は力なく電話の向こうで頷いた。
こうしてボクの行為は無駄足に終わった。
―――――――――――――――――――――――
以前紹介したベトナム人の研修生もアパートのタコ部屋で生活していた。
彼女らにはまだ自由があった。
ただ、月4~5万円という安月給は同じだ。
これは最低賃金にも満たないが、
なんだかんだと理由をつけて差し引くのだろう。
日本の使う側からすれば、安い賃金で労働力を確保でき、
平均給料が月1万円前後の国からすれば
4~5万の手当てでも大いに魅力的なのだろう。
そして、お互いが持ちつ持たれつの実態を
政府も公安も黙認している、というのが現実なのだ。
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アルジェリアの事件は言うに及ばず、
中国では、
日本人経営者に対する軟禁事件が起きている。
多数に無勢だからだ。
労働組合が認められていない中国では
こうするしか労使間交渉の手立てがないからだろう。
日本に来ている外国人出稼ぎ者たちにとっていまだ労使交渉は存在しない。
反乱を起こせば、強制送還が待っている。
これも国際格差の証左なのだ。
日本人もいずれ世界で同じ立場に置かされる日が来るかもしれない。
それを覚悟して、国際情勢に精通しておく必要がある。
ボク自身ヤバイ橋を渡りつつ、また一つ勉強になった。