【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

資料ブン投げ映像が波紋…カジノ誘致の林市長のリコールを求める動きは加速必至だ。

2019-08-26 21:58:11 | 転載
公開日:2019/08/26 14:50 日刊ゲンダイ
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/260835


この直後に悪態を…(林文子横浜市長)/(C)共同通信社拡大する
 カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致表明をめぐり、横浜市が大揺れだ。カジノ誘致を「白紙状態」と訴え、一昨年3選した林文子市長の方針転換に市民は猛反発。22日に市役所で会見した林市長は報道陣の追及にイラ立ちを隠さず、終了後のペーパーぶん投げ映像がSNSで拡散され、ますます株を下げている。林市長のリコールを求める動きは加速必至だ。

 会見で林市長は、カジノ誘致の理由として高齢化や人口減少による財政難を挙げ、開業後の経済効果が1兆円に上るとの試算を公表した。しかし、昨年、市が実施したパブリックコメントでは94%が誘致に否定的。そうした点を会見で問われると、「〈白紙にした〉というのは一切やりません、ということではないんですよ」「納得いくかは、みなさまがお決めになること」と憮然とした表情で開き直っていた。

 会見後の林市長の行動もホメられたものじゃなかった。24日放送の「報道特集」(TBS系)が悪態をオンエアし、話題騒然だ。それによると、ペーパーの束を手に仏頂面で会場を後にした林市長は執務スペースに姿を消した。その直後、すりガラス越しに見えたのは、大量のペーパーが放り投げられ、宙に舞う様子。林市長が怒りにまかせてブン投げたのだろう。林市長の本性が垣間見えるこの映像はツイッターで拡散されている。
 カジノ問題に詳しいジャーナリストの横田一氏は言う。

「市民の間では〈林市長にだまされた〉という声が広がっている。市長リコールと同時に、カジノ誘致の賛否を問う住民投票実施に向けた署名集めの動きに弾みがついた格好です。前回の市長選で林市長を応援した民進党(現在は立憲民主党)の牧山弘恵参院議員は選挙中、〈林市長はカジノ賛成ではない〉〈市民の意見を聞いて、それに従うことを約束している。一筆取っている〉と言っていました」

 横浜市の有権者は312万2275人(7月3日現在)。リコールには約49万人の署名が必要だ。前回市長選の林市長の得票数は59万8115票。カジノ誘致反対を掲げた対立候補2人の得票数は合計で52万7562票だ。クリアできない数字ではないだろう。



「ハマのドン」と呼ばれる横浜港運協会の藤木幸夫会長も「山下ふ頭は我々の聖地。命を懸けて反対する」とボルテージを上げている。林市長は万事休すじゃないか。

猛暑、臭いだけではない 国民が騙されている東京五輪の暗部

2019-08-19 19:50:44 | 転載
公開日:2019/08/17 17:00 更新日:2019/08/17 17:00日刊ゲンダイ転載


写真:いろいろ握ったのか(C)共同通信社/小池都知事肝いりの「かぶる傘」に広がりなし(C)日刊ゲンダイ
構成
➀ 【開催まで1年を切った東京五輪のテスト大会の惨状にはア然とするほかない】
②【■「求めやすい価格」リオ五輪と大違い】
③【経団連のためのイノベーティブとほど遠い政策】
➃【■国民を食べさせる産業消滅】




Ⅰ 【開催まで1年を切った東京五輪のテスト大会の惨状にはア然とするほかない】

 お台場の海を泳いだ男子トライアスロン選手が「正直、くさいです。トイレみたいな臭いがする」と不満を漏らし、猛暑を考慮してランの距離を半分の5キロに短縮した女子トライアスロンではフランス選手が救急搬送された。馬術選手は「馬も人も危ない暑さ。もう少し早くという意見を出さないといけない」と訴えた。マラソンコースに整備され始めた遮熱性舗装は、かえって暑さ指数(WBGT)を高くするとの研究結果が専門家から出される始末だ。

 招致段階からウソまみれだった東京五輪のデタラメは、もはや覆い隠しようもない。IOC(国際オリンピック委員会)に提出した立候補ファイルで〈この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖〉とアピールしたが、この時期の日本列島を襲う殺人的猛暑を知らない国民はいない。環境省が連日にわたって運動を控えるよう注意喚起しているのに、メダルを争うのは自殺行為だ。もっとも、五輪をめぐる問題は「臭いお台場」「命にかかわる暑さ」だけではない。
 2013年9月のIOC総会の五輪招致最終プレゼンで、安倍首相は世界が懸念する福島原発事故の汚染水について「アンダーコントロール」と大ボラ。汚染水はいまだダダ漏れだ。行き場のない汚染水を貯蔵するタンクは東電の試算では22年夏に満杯になる見通しで、汚染水からセシウムやストロンチウムなどの放射性物質を取り除いた処理水を海洋放出する計画には国際社会から非難の声が上がる。元東電の炉心専門家が「福島第1原発は津波の前に壊れた」と告発した衝撃も広がる。招致をめぐるJOC前会長の竹田恒和氏の贈賄疑惑もいまだ解明されないままだ。


「世界一コンパクトな五輪」と売り込みながら予算は雪だるま式に増え、東京都、大会組織委員会、国が負担する総経費は3兆円に膨れ上がっている。招致段階の4倍増である。

Ⅱ【■「求めやすい価格」リオ五輪と大違い】
安倍は1年前記念セレモニーで「オリンピックの感動を共に分かち合うことができることを、心から楽しみにしております」と得意満面だったが、高額で入手困難なチケットを手にできる国民はどれほどいるのか。


 開会式30万円、閉会式22万円。日本勢のメダル獲得が期待される男子100メートル決勝などの陸上競技の午後決勝は13万円だ。優勝に絡めそうな競技は軒並み高く、体操競技決勝7万2000円、柔道決勝やテニス決勝は5万4000円、男女のバドミントン決勝やレスリング決勝が4万5000円(いずれもA席)。「できる限り求めやすい価格に」を大会テーマにした16年開催のリオ五輪とはえらい違いである。富裕層向けに11日間パッケージの635万円チケットも売りに出されるというから、恥も外聞もない金満五輪道を突っ走っている。

 経済評論家の斎藤満氏は言う。
「東京五輪は禍根を残すだけではないでしょうか。招致の前後で話が変わる。大量のボランティアを募って国家的イベント化させているにもかかわらず、チケットは高額でおいそれと手が出ない。銀行員時代に米ニューヨークに駐在したのですが、日米の違いをつくづく感じたのが文化的催しの身近さ。メトロポリタン歌劇場では25ドルほどでオペラ鑑賞ができ、カーネギーホールなども手頃な料金設定をしています。それを可能にしているのが企業や篤志家からの寄付。お金持ちだけが楽しめるような文化は広がっていかないので、ハードルを下げて門戸を開いているのです。日本企業の内部留保は450兆円に迫る勢いなのですから、国民が気軽に五輪観戦できるように支援する動きがあってもよさそうなものです」


 庶民が見られもしない自国開催の東京五輪にどんな意義があるのだろうか。国民はペテン政権に完全に騙されている。

Ⅲ【経団連のためのイノベーティブとほど遠い政策】
 なぜ、こんなにチケットが高いのか。なぜ、こんなに金がかかるのか。それが果たして国益なのか。


 月刊誌「世界」(9月号)で立教大大学院特任教授の金子勝氏(財政学)が重大な指摘をしている。

「新・賃上げ論 その条件は何なのか」と題した寄稿で、日本経済をメタメタにしたアベノミクスの3つの悪循環を分析。▼高付加価値の新製品を創り出せなくなった日本企業の国際競争力低下によって産業衰退が加速▼輸出企業が円安と賃下げで収益を上げようとするため内需弱体化▼異次元緩和で出口のないネズミ講にどっぷり――に集約できるという。そして、五輪をこう位置付けている。

〈「骨太の方針2018」に示される安倍政権の産業政策について、三つの問題点を指摘しておこう。まず『インダストリー4・0』、『ソサエティー5・0』などとスローガン的な言葉だけで飾られているが、具体的な国家戦略を持っていない。政府は、守旧的な重化学工業を中心とする経団連のために、政策的予算的な重点になる産業政策を実行している。それらは、原発再稼働と原発輸出、リニア新幹線、国土強靱化計画や東京オリンピックと建設事業、大阪万博とカジノIRといった旧来型のものに占められている。とてもイノベーティブと呼ぶに値するものではない〉
 安倍官邸は長期政権を支える財界やオトモダチの要望に応えているだけ。この国の成長に不可欠な改革に背を向け、産業戦略を描こうとしないというのである。


Ⅳ【■国民を食べさせる産業消滅】

 金子勝氏に改めて聞いた。

「世界は産業と技術の大転換期を迎え、各国がしのぎを削っている。いまこそ産業衰退を食い止める戦略が必須なのに、安倍政権は現実を無視し、五輪という国家的行事を利用して深刻な事態を覆い隠そうとしています。五輪で建設需要を掘り起こし、大阪万博やカジノ建設で引っ張り、リニア中央新幹線を走らせる。そうした派手なイベントを次々に打ち出すのは目くらましです。前回の東京五輪では東海道新幹線が開通し、6年後の大阪万博も盛り上がった。二番煎じで成長期の残像を呼び起こそうということでしょうが、当時とは産業構造が全く異なります。デジタル通信機器、半導体、液晶ディスプレー、情報通信、バイオ産業。先端産業分野は見る影もなく衰退し、国民を食べさせていく産業がなくなろうとしている。パンとサーカスに踊らされたこの国は、祭りの後に一体どうなるのか」 時事通信の世論調査(7月5~8日実施)では、競技などを会場で見たいという人は「ぜひ」と「できれば」を合わせても37.1%しかいなかった。昨年7月調査の45.6%から8.5ポイントも低下である。


 複数回答による会場観戦を望まない理由は、「テレビなどで見られれば十分」が最多の71.2%。「会場が遠くて行くのが大変」が40.0%、「見たい競技のチケット入手が困難で高額」が23.5%、「夏の暑い時期で熱中症など体調面が不安」が20.6%と続いた。複数回答による開催に向けた不安は「渋滞などで交通機関の利用が不便になる」が40.2%の最多で、「開催費が膨らみ、税金で穴埋めされるのではないか」が39.1%に上った。

 五輪の自国開催の無意味と百害がいよいよ鮮明になってきた。


小泉進次郎の“安倍家臣”化が酷い! 結婚報告の仕掛人・菅義偉との対談で改憲に全面賛成、分断批判でも安倍を擁護

2019-08-12 00:16:13 | 転載
2019.08.11 06:58リテラ転載

写真 ”安倍家臣化”丸出しの進次郎(オフィシャルサイトより)
構成
❶【序】
❷【進次郎が「憲法改正が神格化され過ぎない環境」と、お試し改憲論を主張】
❸【進次郎の入閣、改憲のスポークスマン化で安倍の改憲は一気に進む】




Ⅰ:【序】

 滝川クリステルとの結婚発表を官邸でおこなうという“公私混同”会見をおこない、メディア総動員の「おめでたムード」をつくり上げた小泉進次郎議員。その官邸で結婚報告を受けた安倍首相と菅義偉官房長官は“寝耳に水だった”とすっとぼけていたが、本サイトでもお伝えしたように、安倍官邸が進次郞に接近し、進次郞もそれに応じ、結婚発表を安倍政権のPRにすべく協力した結果だ。

 進次郞の取り込みに動いたのは菅官房長官だと言われており、実際、10日発売の「文藝春秋」9月号では、“安倍官邸の広報官”である田崎史郎氏を司会に、進次郞と菅官房長官が対談をおこなっている。そして、すでに一部メディアでも報じられているように、この対談では進次郞の閣僚入りについて、菅官房長官が「私はいいと思います」と太鼓判を押している。

 結婚発表の直後に発売された雑誌で、官房長官が閣僚に推薦する──。あまりにタイミングが良すぎるが、ようするに安倍官邸は、人気の高い進次郞の結婚発表でおめでたムードをつくり、そこに閣僚入りにお墨付きを与えることでさらに報道を過熱させ、新たな話題で内閣支持率を上げようという“メディア展開”を、田崎氏を巻き込むかたちでずいぶん前から練っていたというわけだ。

 しかも、この対談で進次郞と菅官房長官は、社会保障制度の改革で一致。さらに官邸が官僚の人事権を掌握している 問題でも、進次郞は「官僚主導から官邸主導へ、この方向性は間違いなく正しい」と肯定するなど、石破茂支持から安倍支持へ乗り換えたのがありあり。

 対談では、進次郎が参院選で「忖度」発言によって落選した塚田一郎・前国交副大臣の応援演説に入ったときの話として、「「私は忖度しません」と演説したんです」と語っているのだが、対談を読むと、忖度どころか“安倍官邸の家臣”感さえ漂っている。

 それを象徴するのが、この対談で繰り広げられている「憲法改正」についての問題だ。

 まず、菅官房長官が「憲法改正は自民党の党是です」と述べると、進次郞も「改憲にはもちろん賛成です」と呼応。こう続けるのだ。

「九条二項の「陸海空その他の戦力は、これを保持しない」はどう考えてもおかしい。こんなの建前だし、国際社会でも通用しないですよ。この一点をもっても、憲法改正すべきです」

 安倍首相は現在、憲法改正を進めるために、憲法9条1項2項を残して自衛隊を明記する案を押し出しているが、進次郞は“2項改正”を主張しているのだ。
 進次郞はそのあと、一応、「ただ、現実に憲法改正を進めるには大事な点が二つあります」と付け加え、「一つ目は、社会を分断しないというアプローチ。例えば、国民投票の時に改憲派と護憲派が街宣車に乗って互いが互いを攻撃するような光景を生んではいけない。憲法改正によって、分断を大きくするような事態は絶対に避けなければいけません」などと、抑制的なセリフを吐いていたが、これがお得意の好感度上げポーズでしかないことは明らかだ。

  なぜなら、その後、田崎氏が珍しく、安倍首相の「こんな人たちに負けるわけにはいかない」発言を取り上げ、「総理こそ、社会の分断を招いているとの声も一部にありますが」と踏み込んだ質問したのだが、進次郞は「僕は別に安倍総理のことを言っているのではなく」と即座に否定。「日本に限らず、いま世界中で社会の分断が深刻化している。アメリカもEUもそうでしょう」とごまかしてしまったのだ。

Ⅱ:【進次郎が「憲法改正が神格化され過ぎない環境」と、お試し改憲論を主張】


 分断を避けるというなら、世論調査で国民のほとんどが喫緊の課題に「憲法改正」を挙げていないことを指摘し、石破茂などと同様、「国民の深い理解なくしてやってはならない」と主張すべきだが、そんな言及はまったくなし。しかも、「分断とどう向かい合うか。日本も無縁ではないことが参院選の結果でもハッキリしてきた。「分断しない政治」は今後の一つのテーマです」と述べるのだが、どうすれば分断を生まないか、その具体策については一言も発さない。

 神目線でいかにも公正そうなことや改革派っぽいことを語るものの、実際に耳を傾けると話の中身はすっからかん……。これは以前から指摘されてきたことだが、ここでも進次郞は雰囲気だけの公正中立な改革派を気取って、結局、何も言っていないのだ。

 しかも、うんざりしたのはこのあと。“憲法改正を進めるにあたっての大事な点”の2つ目として、こんな話をはじめたことだった。

「二つ目は、総理も最近「(九条に自衛隊の設置根拠を明示する)自民党案にとらわれない」と仰っていますが、野党を含めて「どんな案だったら賛成できますか」と虚心坦懐に聞いてみること。最終的にはこの令和の時代に、憲法改正が神格化され過ぎない環境を作るべきです。同じ敗戦国のドイツは戦後六十回以上、憲法を改正しているのに、日本はゼロ。これはどう考えても不利益の方が大きいと思う」
「令和の時代に、憲法改正が神格化され過ぎない環境を作るべき」って、ようするに“一回、お試し改憲をやって、改憲に対する国民のハードルを下げていこう”ということではないか。

 しかも、これはいま安倍政権が考えていることと完全に一致する詭弁だ。本サイトでは以前にも紹介したが、安倍首相に近い自民党の木原稔議員は2018年1月におこなわれた櫻井よしこ氏が理事長を務めるシンクタンク「国家基本問題研究所」の月例研究会で、“私の理想は2012年の自民党改憲草案、二項を削除する改憲案”だと述べた上で、こう話している。

「もし、憲法改正は一回しかできないという法律なら、二項削除で戦うしかないと思っています。しかし、憲法改正は何回でもできる。一度、改正に成功したら、国民のハードルはグッと下がると思います。そして、一回目の改正を成功させたあとに、二回目の改正、三回目の改正と、積み重ねていけばいいと思っています。最終的には前文も当然、改正しなければいけない」
 つまり、進次郞が言う「憲法改正が神格化され過ぎない環境」をつくることによって、安倍政権は、進次郞が求める憲法9条2項改正も、さらには前文さえも変えてしまう算段なのである。

Ⅲ:【進次郎の入閣、改憲のスポークスマン化で安倍の改憲は一気に進む】

 進次郎が今回の菅義偉との対談でこの“お試し改憲”を口にしたのは偶然ではないだろう。今回の結婚発表からはじまる「進次郞フィーバー」を安倍官邸がつくり出した裏には、一気に憲法改正に弾みをつけるという目論見があるからだ。

 このまま進次郎が入閣すれば、安倍政権の内閣支持率は急上昇するのは確実。そうしたなかで、もともと9条改憲に積極的な進次郎議員が安倍改憲のスポークスマンとして前面に出てくれば、国民世論も一気に改憲に傾く。安倍政権の極右思想や戦前回帰志向への警戒感が薄れ、進次郎によって“改憲=新時代”というイメージにロンダリングされてしまうだろう。

 そして、実際に進次郞は「令和の時代に、憲法改正が神格化され過ぎない環境を」などと言い出した。この進次郞の主張の物騒さを、結婚のおめでたムードを煽るメディアが指摘することはないだろうし、国民もそれに流されてしまう可能性は非常に高い。

 対談では、田崎氏が「次の総裁選で、進次郞さんはポスト安倍の有資格者だと思いますか?」と訊くと、菅官房長官は「ええ、私はそう思いますよ。早すぎるということはない。本人がやる気があれば別に構いません」と回答している。メディアがしきりに演出する「次期総理大臣」という期待感とあいまって、進次郞の発言の影響度は今後、どんどん増してゆくだろう。
 憲法改正に向け、安倍官邸が味方につけた最強の広告塔──。これまでにない警戒が必要だ。
(リテラ編集部)


勇気ある声が、次の声を呼ぶ 性暴力被害「フラワーデモ」のうねり 〈寄稿〉北原みのりさん

2019-08-10 09:19:23 | 転載
2019年8月8日東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/culture/culture_news/CK2019080802100104.html

各地で相次ぐ性暴力事件無罪判決に抗議のフラワーデモが開かれている=6月中旬、東京都千代田区で

 今年三月、性犯罪事件の無罪判決が四件相次いだ。女性が抵抗できない状況だったと認めたのに無罪、父親による娘への性暴行も無罪…。司法の理不尽さへの怒りと悲しみから、花を持って性暴力の被害者に寄り添う「フラワーデモ」が四月に始まり、毎月十一日に開催されるようになった。今月十一日にも全国各地で開かれる。共感が広がる背景には、長年被害の苦しみを無視してきた社会への異議申し立てがある。

 一連の無罪判決が報道された直後、私は衝撃でいてもたってもいられない思いに駆られた。友人と一緒に、「四月十一日に花を持って集まろう」とツイッターで呼びかけた。団体を通じた動員がなかったにもかかわらず、その晩、東京駅前に四百人以上が集まった。

 驚いたのは予定のスピーチが終わって一時間たっても、誰も帰ろうとしなかったことだ。群集の一人が、「話したい」と手を挙げた。幼少期に性暴力を受け、そのトラウマで学校にも行けなくなり、やっと手にした非正規の仕事でさらにセクハラを受けた人だった。

 「なぜ、被害者が転々としなくてはいけないのですか」。その叫びは次の声を呼び、次の語りはまた次の語りを呼んだ。そこにあったのは、戦略のない、ただ「いてもたってもいられない」という思いだった。

 間もなく福岡と大阪から「こちらでもやりたい」とメールが届いた。声は勢いよく広がり、五月は全国で三カ所、六月は十カ所、七月は十四カ所でフラワーデモが開催された。

フラワーデモでプラカードを掲げる参加者=6月中旬、東京都千代田区で

 性暴力被害者の多くは女性と子どもだ。デモで「(性暴力を振るわれたときに)殴られれば良かった」と話す女性が何人もいた。「触られた」と訴えるだけでは取り合ってもらえないからだ。胸がふさがる思いだった。長年女性運動をしてきた人が、デモ参加後に電話してきた。「若い女性が、こんなに苦しんでいるなんて、いったい私たちは何をしてきたのか」と。

 震える声で語られる参加者の話はみな違うが、一本の線でつながる。それは性暴力の多くが「なかった」ことにされてきた事実だ。
 韓国は、性暴力被害者への支援が日本の比ではないレベルで充実している。背景にあるのは、沈黙を強いられる彼女・彼らの声を聞く社会の力だ。性暴力の痛みを訴える「#MeToo」は、その声を信じて支える「#WithYou」(あなたと共に)が不可欠なのだ。だから、フラワーデモの花には「あなたの声を聞く」という意思表明を込めた。日本社会には、その意思がずっと欠けていたのだと思う。

 この間、記者と話す機会も多かった。一連の無罪報道の口火を切った福岡地裁久留米支部判決を速報したのは、毎日新聞の女性記者だ。同じく男性社会であるマスコミでは多くの女性記者が日常的なセクハラにあえぎ、当事者として性暴力の問題にかかわろうとしていた。性暴力の無罪判決自体が最近増えたのかどうか、正確には分からない。だが少なくとも「これは報道すべき事実」と考えた記者がいたから、私たちは司法の現実を知ったのだ。

 私たちは性暴力被害者に、ずっと絶望を強いてきた。だが今や、勇気を出して上げられた声は、次の声を呼ぶのだと実感している。まずは刑法で、同意がない性行為は犯罪だと定める必要がある。今はフラワーデモの当面の目標を、来年が見直し時期となっている刑法改正とし、しばらくは続けていこうと思う。最も痛みを感じている人の声に寄り添い、その声が社会を変えていけると信じたい。
 (きたはら・みのり=作家)