【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

横井久美子50周年記念コンサートの驚き  櫻井智志

2019-07-26 22:33:52 | 音楽と人生


 2019年7月21日、日曜日。東京都中野区にある中野ZERO大ホール。北口にある中野サンプラザとちょうど反対の南口側にある。一階二階の1300人近くの客席は満員。

コンサートをイメージしてゆくと、あっと驚く。午後2時開場で入ると、広いロビーには、【手を取り合って 地球は謳う!】というイヴェントが何と14:00~15:00まで・休憩時・演奏終了後~19:00まで行われるという。〈ベトナム〉〈歌う楽校〉〈おいで一緒にinくにたち〉〈平和・人権コーナー〉〈アイルランド〉〈ネパール〉のコーナーがたくさんの人びとの活気であふれている。

     世界を旅して出会って歌って50年。
     人と人が紡ぎあってできた
     楽しいタピストリーのような世界!

  この構想は、本番のブザーがなってコンサートが開始された時に、より鮮明となってゆく。


 
 コンサートは、午後3時に開始。ギター/コーラスの安田雅司郎さん、バイオリンの今井真実さん、ベース/クラリネットの中村和彦さん、さらにフラットマンドリン/パーカッション/コーラスの北村しんさん。豊かで音楽性の高い楽器演奏者が前奏を奏でる中、横井さんの歌声は聞こえるが姿が見えない。会場内満員の観客の視線は声を追って客席の後ろにふりかえる。オプニングの「私に人生といえるものがあるなら」(笠木透作詞・アメリカ民謡)はこうして始まった。
休憩の15分をはさんで、前半15曲、後半14曲。約30曲を横井久美子さんはこの日歌い続けた。
ちなみに、2曲目からの作品は、以下のとおり。

2 あくび 谷川俊太郎作詞 横山作栄作曲

3 自転車にのって 横井久美子作詞/作曲
元歌に続けて、子どもの頃のご長男とのほほえましいやりとりが替え歌として相次ぎ、親子のコミュニケーションと子育て、親離れの家庭史がほのぼのと伝わってくる。 

4 なみちゃん 刈谷美津子原詩/横井久美子作詞/作曲

5 My Son 横井久美子作詞/作曲
思春期に入り、自我の確立に悩む息子さんを、母親として一定の距離を保ちつつ成長を慈しみ見守る時間が、再現される。

6 母に贈る言葉 横井久美子作詞/アイルランド民謡
私は、横井さんがお母さんの生前に、大人同士の或る葛藤を感じさせる言葉をうのみにしていた。横井さんの心の奥に深い母への追慕と感謝の表現を、ことばでも歌唱でもお聴きして、胸をうたれた。自らが亡父に生存中は尊敬と愛憎の相反する気持ちでいて、亡くなってから今ではもはや片側のコミュニケーションのみ。横井さんが自立する青春期に反発し、そこで鍛えた感情は、より深い人間洞察と静かな親への慕情が結晶化し、我が身をふりかえる契機となった。

7 人生のはじまり 横井久美子作詞/作曲
「40歳代後半は様々なことがあって・・・」。MCのことばに、最初同時にこの歌が入ったアルバム『メッセージ』で聴いたときを思い出していた。1980年12月に東京・草月ホールで「女を歌う・横井久美子リサイタル」を5日間開いた。ゲストにジャーナリストの筑紫哲也さんが登場。2人のやりとりを会場で興味深く聴いていた。

8 おいで一緒に パブロ・ネルーダ詩/笠木透作詞/ディナ・ロット作曲
Song Uniteとして尾崎ツトムさん、山本さとしさん、松島よしおさん、いわき雑魚塾、増田康記さん、斎藤悟さん、横山作栄さん、島袋美恵子さん、鈴木幹夫さん、大熊啓さん、カーミーズ の素晴らしいフォークシンガーたちがこの名曲を歌い横井さんともに会場を「おいで一緒に」ワールドへ招いてくれた。。

9 あなたを見ていると  横井久美子作詞/作曲
櫛田ふきさんの80才の誕生日を祝う作品。2001年に102才でお亡くなりになるまで「ふきと久美子のトーク&ライブ」は17回開催されたそうだ。婦団連の会長を務めた櫛田ふきさんと丸岡秀子さんは、私にも戦後に女性の人権回復・向上の取り組み以外でもベトナム反戦運動など平和運動でも大きな足跡を残された。

10 飯場女のうた 井尻光子原詩 横井久美子作詞/作曲 朗読:「飯場女のうた井尻光子
横井さんに紹介され最初に朗読した井尻光子さんは90才を超えていた。無実の夫が冤罪で、飯場で働き家族を支え続ける。民衆が国家権力の強大さの前でたとえ抵抗しても無力であるかも知れない。だが、耐え続け生き続けて40年以上の歳月を入れて生き続けてゆく。その姿は頼もしく、崇高な強烈さを保持し続けてゆく。





11 筑豊の子守歌  大野隆司作詞 岡田京子作曲
 作曲の岡田京子さんと夫の安達元彦さんを、横井久美子さんか笠木透とフォークスのコンサートかどちらかでステージで拝見したことがある。フォークス結成時に安達元彦さんはそのメンバーだったと思う。やはり横井さんのコンサートのほうか。岡田京子さん作曲のこの歌は、民謡とフォークとが相俟って、表現する横井さんの歌唱力の高さで、聴いていても新たな視野を感じる。

 12 赤い椿と青いげんぼし 田中 暢作詞 横井久美子作曲
 新潟に住む小林ハルさん。ごぜの世界を身をもって体得したいと熱望する横井さんはハルさんに入門を願い、結果としては断られる。歌の中に、強烈にアピールするごぜの存在を通して、訴える表現力の深さは聴く者を感動へいざなう。横井さんの歌の中で私が好きな作品の上位曲である。

 13 ノーモア・スモンの歌 横井久美子作詞/作曲
 ステージにスモン訴訟の画像とスモン訴訟東京弁護団弁護士鈴木堯博さんの朗読が始まる。横井久美子さんがいかに社会問題に怒り参加し音楽で表現する。とことん全国のスモン訴訟に加わり広く国民に伝達したかの足跡を知ることができる。なおかつ、その歌は陳腐な宣伝ではなく、歌として音楽として聴く者の心を揺り動かす。社会的課題のなかに入り、そこで把握した人間的感性の深さが、歌自体としても社会運動としても共に見事な峰に到達している。

 14 夫へのバラード  横井久美子作詞/作曲
 はじめこの歌を聴いたときに、文字どおり夫へのメッセージとして聴いていた。今回の記念コンサートで、北海道じん肺訴訟弁護団の三上直子さんが朗読した。このうたが大きなすそ野の上に立脚したメッセージソングと知る。

 15  にんげんをかえせ  峠三吉詩/アメージンググレイスより
 峠三吉の名作を、アメージンググレイスと組み合わせ、横井久美子ワールドを造出した。ノーモア・ヒバクシャ訴訟弁護団の中川重徳氏が朗読し、尾藤廣喜氏の尺八の音色が歌に深い音色をそえていた。

ここまでが前半の15曲である。
30ページを超えるパンフレットは、受付で無料配布してくれた。この冊子には、これ自体が一冊の横井久美子ブックとして出版されれば、全国の横井久美子さんを知るファンにとっても音楽研究者にとっても、実に貴重なパンフレットである。この冊子も50周年記念コンサートも、コンサート委員会の充実したかたがたの努力と熱意がみなぎるものである。横井久美子さんの夫、ご長男、ご長女のエッセイは実に家族の愛情にあふれ、感銘を受けた。



 
 後半に入る。

 16 世界中の愛をあつめて 横井久美子作詞/作曲
この歌を初めて聞いたように思う。プログラム全曲の中で他の曲としっかり溶け込む。

 17 レッサン・フィリリ 横井久美子作詞/ネパール民謡
この歌とともにネパール・サチコール村に横井さんを導いた桜井ひろ子さんとサチコール村「マガール子バンド」が、舞台に登場。ダン・バハール・タダさん(40歳)を団長に6名が来日、レカ・サルさん(副団長45歳)、ジャナック・シング・タダさん(太鼓25歳)、クッソン・サルさん(太鼓13歳)、ホーリ・バハドールさん(笛16歳)、ルビン・ラクカルさん(ギター17歳)。マガール子バンドについては、横井久美子さんのご著作『村人総出でつくった音楽ホール』(本の泉社1512円)DVD『いのち燦めく村』(横井久美子監督 税込み1500円)が参考となる。来日した青年たちは、このドキュメンタリー映画に出演しているという。

 18 戦争は動けない 門倉訣作詞/青山義久作曲
 1970年前後。ベトナム戦争がアメリカ軍の陸海空の軍隊の攻撃とベトナムの民衆との抵抗によって熾烈を究めた。日本にある米軍基地の武器が、相模原補給廠から横須賀港の米軍艦へ移動、この時に生まれた名曲だ。戦争に反対する市民たちや社会党共産党の活動家など広範なひとびとが補給路に身を横たえるなど戦争への反対意思表示を行った。横井さんは1973年11月に「女性文化代表団」の一員としてベトナムを訪れ、故松本清張氏と共にファン・ヴァン・ドン首相に会見し、ホン・ハー劇場など11カ所で公演した。プログラムの年譜によると、1994年、2003年、2004年、2005年からは毎年のように ベトナムを訪問している。1971年に拡声器から流れる歌「戦争は動けない」を聴いた13歳のチャン・フォン・リエンさんは興味をもち独学で日本語教師となる。リエンさんはその歌手横井久美子さんと2007年5月に会うことが実現し、横井さんも同年8月にリエンさんを日本に招待して、「戦車闘争から13年横井久美子コンサート」を神奈川県相模原市で開催する。日本語教室を主宰するリエンさんとベトナムの中高生は、ステージに登場して朗読した。横井さんの歌にシングアウトする会場。

 19 戦争入門~ブレヒトによせて~ 横山作栄作詞/作曲
 この歌を以前からカセットやCDで聴いたことがある。1960年代のフォークが21世紀の今も新たな響きがある。
ブレヒトによせて、横山作栄さんが作った作品も、横井さんの歌唱も、強くこころに訴えるものがある。

 20 よみがえれ我が大地  横井久美子作詞/アイルランド民謡
 ハープの種類と思うがアイルランドの楽器を演奏しながら、横井さんはこの歌を歌った。やはり国立音大で音楽を専門的にまなんでいるためと思うが、このコンサートでも打楽器や外国の民族楽器などを自在に駆使して、歌唱をより効果的に高めている。

 21 風の中のレクイエム 横井久美子作詞/作曲
  きわめて自然体の歌詞に、深い意味合いと心地よい音感が感ぜらる。歌曲として、新たな地点を獲得した象徴と思う。

 22  アシンボナンガ(姿が見えない) ジョニー・クレッグ作詞/作曲 横井久美子訳詞
 この歌は、横井さんとバンドの安田雅司郎さん、北村しんさんの掛け合いがとても音楽効果を高めている。南アフリカのマンデラ氏は獄中に数十年閉じ込められていた。この歌もレジスタンスの中で世界中に広まった。マンデラは後に獄を出て、大統領となっていく。

 23 四月のカーネーション G・ムスタキ作詞/作曲 横井久美子訳詞
 「ヒロシマ」「私の孤独」で、私もムスタキを知っていた。この歌は、コンサートの中で横井さんが歌の成り立ちを教えてくれた。カーネーション革命とも呼ばれるヨーロッパの民衆の革命運動を、ムスタキが歌にして、それを訳して横井さんは日本に定着させてくれた。

 24 私の愛した街 フィル・コルター作詞/作曲  横井久美子訳詞
 1975年2月にベルリンでの「第5回ポリティカルソングフェスティバル」に招待されて歌った横井さんは、そこでこの歌を知る。歌の謂れを知り、翻訳して自分でも歌い続け、さらに歌が生まれたアイルランドに何度も渡航し、1998年には文化庁芸術家在外研修員として、アイルランドのリマリック大学アイリッシュ・ミュージック科に半年間留学した。横井さんは、コンサートの始めに、ラストに、この歌を歌うことが多かった。

 25 辺野古の海  横井久美子作詞/宮古島民謡
 横井さんは、沖縄県に何度も足を運ばせている。米軍基地の移転に対する県民の闘いを何度も応援している。高江に住民の抗議を県外からも機動隊が多数派遣された。横井さんは一緒に座り込み県民の闘いを共有した。「おいで一緒にinくにたち」のライブでも、「もし本土から2000人の応援があったら、阻止できた」と嘆く現場にそのとき200人の県民と共にいた。さらに、横井さんはコンサ-トを那覇市で開いたときく。
 この歌のステージには宮里幸子さんが琉球舞踊を踊った。舞踊の立ち居振る舞いに、沖縄文化の風格を感じた。

 26 阿武隈高地 哀しみの地よ   伊東達也作詞/横井久美子作曲
 「阿武隈高地 哀しみの地よ」同名のアルバムが当日発売され会場で、購入できた。そこに横井さんの解説が掲載されている。

<原発ゼロを目指して>

阿武隈高地は、はるか昔、日本列島が形成される以前に、海底から隆起して、その後、幾世紀もかけてできた緑豊かな大地です。宮城県南部から茨城県北部まで170kmにわたり、東から浜通り、中通り、会津盆地が走り、人々の暮らしを育みながら、東北の自然や歴史や文化のふるさとになってきました。私は、福島を訪れる度に、この阿武隈高地が、原発被害のために、鋭い叫び声をあげ、今また海底に沈みこもうとしている恐怖を感じます。それも、日本列島全体をジワジワと道づれにして、この恐怖に打ち勝つには、「原発をなくせ」と声をあげ、裁判で闘う人たちと想いを共にすることだと思います。そんな想いでこのCDをつくりました。(横井久美子)

 この歌のステージでは、「歌う楽校」「いわき雑魚塾」「さんしょ」「パパラギ一座」の皆さんが、横井さんの想いを後押しした。

 27  わが大地の歌  笠木透作詞/田口正和作曲 with50周年記念合唱団
 2014年7月11日、「秘密保護法廃止・原発ゼロ~横井久美子&笠木透コンサ―ト」が国分寺市いずみホールで超満員のなかで行われた。ガンと闘病中の笠木さんは快諾して歌った。客席にいた私は笠木さんから目を離せなかった。杖をもちつつも力強く歌い、時に苦痛を耐え途中歌声が途切れても、バックの雑花塾が素晴らしいフォローを行った。
同年12月22日、笠木透さんは亡くなった。
横井さんは1972年以来、笠木透氏と出会い、中津川フィールドフォークで高石ともやさん、もんたよしのりさん、宇崎竜童さん、我夢土下座など多彩な人々と音楽や交流を愉しんだ。
 横井さんも笠木さんも【貧困や差別や暴力のない平和な暮らしのために文化で闘う】共通する志をもっていた。

 28 歌って愛して  横井久美子作詞/作曲   
with50周年記念合唱団の温かく力強いうたごえとともに、横井さんが歌い続けた気持ちがあふれ会場に伝わってきた。

 29 歌にありがとう 横井久美子作詞/作曲


 30曲近くの歌をこの日、横井さんは歌い続け、新曲をプレゼントして、ステージ正面の階段を降り、中央階段を昇り退場した。照明が全開にされた会場を拍手が鳴りやまなかった。
 退場して、観客と交流している横井久美子さんに、尊敬の気持ちで一言こえをかけて満員の出口を後にした。<終>


20回目の『平和のためのコンサート』で気づいた重要な問題提起

2019-07-25 00:51:44 | 社会思想史ノート
                     櫻井 智志

Ⅰ:第20回コンサート概要

 2019年6月8日。新宿区の牛込箪笥区民ホールで行われた第20回平和のためのコンサートは会場満員の観客と、出演アーチストの演奏歌唱が一体化して、20周年を飾るにふさわしいコンサートであった。

例年第一部の講演が、20周年を記念した企画となっていた。今回は「平和への祈り」という主題に特化して、【語りと音楽による「あの星はぼく」被爆二世の死】を訴えていた。詩:名越操さん、作曲:木下航二さん、編曲:腰塚賢二さんの作品である。河原田ヤスケ氏の語りとアンサンブル・ローゼによる歌唱(ピアノ伴奏末廣和史さん)によって表現されていた。

第二部。信田恭子さんのヴァィオリン独奏やロシア文学に造詣の深い伊東一郎氏の独唱(ピアノ伴奏:児玉さや佳さん)、アンサンブル・ローゼによる重唱(末廣和史ピアノ・信田恭子ヴァイオリン)、その他どれも芸術的に磨かれた内容だった。
私は入場していただいたプログラムを読み、鈴木武仁氏の寄稿文にはっとした。

Ⅱ:「平和のためのコンサート」と重要な市民運動
*転載

~第20回 平和のためのコンサート~によせて
      ストップ・ザ・バイオハザード
      国立感染研究所の安全性を考える会会長
                    鈴木武仁

 このコンサートは、芝田進午・貞子ご夫妻を初め、平和と安全を求める市民による裁判闘争、即ち国立感染症研究所の品川庁舎から現在の戸山庁舎への移転に伴うバイオハザード(生物災害)
を防ぐ裁判闘争の支援を目的として始められました。

 以後、私たち「国立感染研究所の安全性を考える会」及びその前身である「予研=感染研裁判の会」は、これまで1989年から30年にわたる予研=感染研再移転要求運動を展開してきました。

 この運動の支援を目的に、2001年4月7日、東京信愛教会を会場に「予研=感染研裁判と新井秀雄さん支援コンサート」(180名)を開始し、2004年6月、名称を「支援コンサート」から「平和のためのコンサート」に一新、牛込箪笥区民ホール(400名)に会場を移し、今回第20回を迎えることができました。
 
 その間、オウム真理教サリン事件、阪神淡路大震災、東日本大震災とそれに伴う福島第一原発事故が発生したとはいえ、感染研が、人命に及ぶような大事故を起こさずに過ごせましたのは、皆様方の市民的監視とご支援があったがゆえと理解しております。ここに心より感謝を申しあげます。

 この鈴木氏の中にある【2001年4月7日、東京信愛教会を会場に「予研=感染研裁判と新井秀雄さん支援コンサート」】が2004年から現在のかたちに発展したという事実。2010年に出版された書籍に、芝田進午氏が死去後に、裁判原告団団長を継承した武藤徹氏が書いた文章に【2004年4月22日に、第一回の「支援コンサート」が開かれています。2003年の第四回まで開かれ、多額の寄付が寄せられました。以後は、「平和コンサート」に引き継がれています。】
とある。
(『国立感染研は安全か バイオハザード裁判の予見するもの』国立感染症研究所の安全性を考える会 編著(緑風出版)第一章 バイオハザード裁判とは?二 環境を守るために市民はどう立ちあがったか  武藤 徹 p35

 芝田夫妻は、「ノーモア・ヒロシマコンサート」を新宿区朝日生命ホールなど都内と広島大学教授だった広島市で多年にわたって開催した。それは、芝田進午氏の核時代と「人類絶滅装置大系としての核」廃絶についての広範な学際的研究を裏付けられている。
『現代の課題 Ⅰ―核兵器廃絶のために』青木書店1978年
『反核・日本の音楽 ノーモア・ヒロシマ音楽読本』汐文社1982年矢澤寛・木下そんき編
『核時代 Ⅰ―思想と展望』青木書店1987年
『核時代 Ⅱ―文化と芸術』青木書店1987年

 さらに、お住いの新宿区戸山に、予研(感染研の前身)が強制的に移転を強行する時、ライフワークも当時研究中の研究も停止して、国立予研・感染研について、住民自治会など戸山に住む住民や早稲田大学やなど公的施設の人々も反対運動に立ち上がった。

Ⅲ:芝田進午というひと

 私は、この文章を書き始めて、『国立感染研は安全か』と『実践的唯物論への道 人類生存の哲学を求めて』とを再読している。後者の中の『Ⅴ 核時代・バイオ時代における「実践的唯物論」の課題』『20 バイオ時代の危険と「実践的唯物論」の新しい形態の追究』「予研移転阻止闘争の開始」の箇所には、この問題に関わり、驚くべき浮かび上がった歴史の暗部が事実に基づき叙述されている。いまそのまま引用するのは先に延ばす。

 広島・長崎に核兵器を投下したアメリカ国家の首脳部と米軍は、なぜ広島に原爆を投下したか?それは、原爆攻撃のもうひとつの側面は、大量人体実験という側面だった。そして米軍のABCC(原爆傷害調査委員会)を支援するために国立予防衛生研究所を日本政府は設置した。

 さらに予研にはかつて七三一部隊に協力していた医学者が多数集められた。

 詳細ははぶくが、原爆投下―七三一部隊-国立予研は、無縁ではない。一つの連環を形成している。そのことが、核廃絶文化の一環のノーモア・ヒロシマコンサートと、「予研=感染研裁判と新井秀雄さん支援コンサート」とが「平和のためのコンサート」として結晶化する由縁があったわけである。

 新井秀雄氏は国立予研・感染研の主任研究員だった。敬虔なクリスチャンの新井秀雄さんは、芝田氏たちの考えを聴き、自ら芝田氏たちを支援する。それゆえに新井さんは処分を受ける。人間の本質は、うわべの主義主張ではなく、その人の「人間性と人格」に帰する。

 芝田進午というひとこそ、実践的知識人であるだけでなく、現代社会において人類生存のための最大の啓示を豊かに教え育む教師であった。~了~

「大阪維新と自民党大阪府議団」  櫻井 智志

2019-07-20 15:21:09 | 政治・文化・社会評論
【*この記事は、吉富有治氏『「維新」とは何なのか』(月刊誌『紙の爆弾』2019年8月号)に拠る。

その具体的検証をおこなうことは、小生にはできないので、大阪維新の会は自民党大阪府議団の分裂で設立された、ということのみを事実であろう、という命題の提示にとどめたい。

また吉富有治氏の文章をもとにしているが、掲載の責任はあくまで小生櫻井智志が全面的に負うものであり、評論著者の吉富氏には全くないことを一言添えておく。】



 大阪維新の会が誕生したのは今から10年前である。

その端緒は2009年に自民党大阪府議団が3つのグループに分かれたことだった。

「自民党大阪府議団」「自由民主党・ローカルパーティー」「自民党・維新の会」である。

1年後の2010年4月、後者2つの会派が合流して、「大阪維新の会」を設立した。


 自民党大阪府議団が分裂したきっかけは、大阪市最大の不良債権とよばれた旧WTCビル(大阪ワールドトレードセンタービルディング、現・大阪府咲洲庁舎)の買い取りをめぐる問題だった。

 当時、大阪府知事だった橋下徹氏はWTCビル買収の議案を府議会に提出する。自民党大阪府議団が特に反発し、それに異を唱えたのが松井一郎府議だったのだ。

 当時最大会派だった自民党大阪府連が反対したこともあり、2009年の2月議会でWTCビルの購入案は否決された。

だが、松井一郎府議ら一部の自民党府議が賛成票を投じたことで自民党府議団では内紛が起こり、松井府議らは党外へ出ていく。

 その後に気脈を通じた橋下徹知事を代表として、大阪維新の会を設立したのが、そもそもの経緯である。



*この後に重要な事実が展開されるが、それは是非、吉富有治氏の論稿を御覧いただければ幸いである。
―了―







自民党離れする保守層と共産党との関係

2019-07-19 08:03:57 | 転載
7/18(木) 0:00配信

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190718-00010443-besttimes-pol&p=1
写真・図表:BEST T!MES
■自民党離れする保守層


 先日「安倍疲れ」という言葉が頭の中に浮かんだ。ネットで検索すると、すでに存在する言葉でいくつかヒットした。そこで「国民の安倍疲れ。この言葉に尽きると思います」とツイートしたら、共感のコメント、リツイートをたくさんいただいた。本当に国民は疲れているのだと思う。「もういいよ」「疲れたよ」「ぐったりだよ」と。

この記事の写真はこちら

 私は「ああ、この言葉が今の世相にしっくりくるんだな」と思った。皆、疲れて、いらいらしているのだ。ウソや不正を告発したところで、確信犯的にウソを積み重ねている連中が相手では暖簾に腕押し。不満はたまっていても、声を上げ続けるのはしんどい。そしていつしか口をつぐむことになる。いや、連中は口をつぐむ人間が増えていくのを待っているのだろう。

 安倍関連メディアは「民主党時代に戻るのか」「安倍さんを降ろしてその先はどうするのか」といった情弱向けのテンプレートを社会に投下し続ける。

 野党がだらしない? 

 政権に対する批判の受け皿がない? 

 寝言は寝てから言え。

 そろそろ目を覚まして現実を直視すべきだ。

 今回の参院選では、受け皿がありすぎて、困るくらいなのだ。

 前回の選挙との一番の違いは、この30年の失政をなんとかしようという動きがでてきたことだ。

 つまり、日本人が正気を取り戻し、立ち上がり始めた。

 特に保守層や改憲派(ビジネス保守・愛国カルト・ネトウヨは除く)が遅きに失したとはいえ、安倍一味の正体に気付き始めたのは大きい。

 西尾幹二も晩年の西部邁も安倍を批判したが、先日は改憲派の代表的論者慶應大学名誉教授の小林節が共産党支持を打ち出した。

 右翼団体の一水会も「今こそ、対米従属・自民党幕府の売国、腐敗を断罪する救国維新派の『処士横議』が重要だ」とツイート。

 大阪では自民党支持層の一部が共産党のたつみコータロー候補支持に流れている。自民党大阪府連が官邸の意向に屈し、大阪市解体の住民投票実施賛成に寝返ったので当然だろう

 野党は32の1人区すべてに統一候補を擁立した。保守層や改憲派の票が野党に集まれば、世の中は今よりははるかにマシになる。 

 「れいわ新選組」は安倍政権の売国政策(TPP、水道法、カジノ法、漁業法、入管法、特定秘密保護法、国家戦略特別区域法など)の一括見直し・廃止を唱えている。ここまで明確に反構造改革を打ち出しただけでも、高く評価しなければならない。

 この流れは大きい。


■共産党と組んでもいいのか、ダメなのか? 
 安倍は移民政策を採用しないと言いながら、移民政策を推進。日本はすでに世界第四位の移民大国になっている。二〇一四年のダボス会議では、徹底的に日本の権益を破壊すると宣言。電力市場の完全自由化、医療の産業化、コメの減反の廃止、法人税率の引き下げ、雇用市場の改革、外国人労働者の受け入れ、会社法の改正などを並べ立て、「そのとき社会はあたかもリセット・ボタンを押したようになって、日本の景色は一変するでしょう」と言い放った。

 典型的な〝ファミコン脳〟だが、これらの工作はほぼ完了したとみていい。日本の景色はすでに一変している。

 安倍はTPPを推進し、水道事業の民営化や放送局の外資規制の撤廃も目論んできた。入管法改定に関しては法務省がデータをごまかしていたことが明らかになったが、森友事件における財務省の公文書改竄、南スーダンPKOにおける防衛省の日報隠蔽、裁量労働制における厚生労働省のデータ捏造など、すでにわが国は常識が通用しない三流国になっている。これらはいずれも安倍案件だ。

 こうした中、「国益を守れ」「社会を守れ」「地域を守れ」と主張する日本共産党に国民が関心を持つようになったのは、当然なのかもしれない。急進的に国の形を変えようとする連中に比べ、旧態依然とした共産党の主張は「保守的」に見えなくもない。

 しかし、日本共産党とは相いれない部分も多い。私は共産主義も新自由主義と同様、近代が生み出した病の一環であると考えているからだ。

 日本共産党は本気で政権を取る気があるのか? 

 そこで衆議院議員で日本共産党大阪府委員会副委員長の清水忠史氏にまとめて話を聞き、『日本共産党政権奪取の条件』(KKベストセラーズ刊)として参院選前に世に問うことにした。特に第三章、第四章では、党名、暴力革命、コミンテルン、唯物史観、自衛隊と憲法9条、ソ連・中国の暴走、日米安保、皇室に対する態度についてなど、かなり踏み込んだ議論ができた。

 要するに、多くの日本人が持っている共産主義に対する負のイメージに対し、今の日本共産党がどのように考えているか問い詰めた。

 必要なのは、まずは議論の足場をつくることだ。そして現実に対応することだ。

「宇宙人が地球に攻めてきているときに、米ソ対立もないだろう」と清水氏は言う。

 今は右左、保守革新、イデオロギーで対立している時間の余裕はない。国の破壊・解体、全方位売国を続けている勢力から、日本を守らなければならない。

 清水氏は「あとがき」でこう述べる。

「安倍政権は、外国人材を無秩序に受け入れる入管法を規制緩和。TPPやEPAにより日本の伝統的農業を海外に欧米に売り渡す亡国の政治を繰り返してきた。さらに、水道事業まで水メジャーの利益に差し出す民営化法まで成し遂げた。年金支給額は物価の上昇に遠く及ばず、むしろ下がった。米国のいいなりに兵器を爆買いする様には防衛省の元幹部でさえ首を傾げている。その上、消費税率の引き上げを企てる」

「『日本を取り戻す』との掛け声のもと、安倍政治が進めてきたのは結局、国民生活を破壊し、米国やロシアに屈服し、日本の文化と歴史を破壊する売国の政治に過ぎなかった」

 われわれのスタート地点は「常識」だった。

 「常識」の通用しない集団、嘘をつい国民を騙してき集団には退場していただかなくてはならない。

 もう時間はない。

 安倍一味から早急に日本を取り戻すべきだ。


【巻頭特集】 ドヤ顔で韓国叩き 常軌を逸した安倍政権の危うさ、愚かさ

2019-07-18 20:32:29 | 転載
2019/07/18 17:00日刊ゲンダイ 転載

写真:2人揃って「俺が正しい。文句あるか」/(C)日刊ゲンダイ


 半導体材料の輸出規制強化を巡り、日韓の“口撃”の応酬が止まらない。
 韓国の文在寅大統領は15日、過去2回の見解表明より激しい口調で日本を批判。
「日本が歴史問題を経済問題と関連付けたことは、両国関係発展の歴史に逆行する」と非難し、「結局は日本経済に、より大きな被害が及ぶ」と警告した。

 日本側はすぐに反発。世耕経産相は16日の閣議後会見で、「安全保障のために輸出管理を適切に実施する観点から運用を見直すもので(徴用工問題に対する)対抗措置ではない」と反論、「(文在寅の指摘は)全く当たらないと申し上げておきたい」とボロクソだった。

 直前の12日には日韓の事務方が経産省で会合を持ったが、双方がそれぞれの言い分を主張し、反論し合う泥沼状態。韓国が24日までの再会合を要請しているが、日本側は「信頼関係が崩れた現状では開催は難しい」として拒否する方針だ。
 対立は修復不可能なほどに過熱するばかりで、軍事上の機密共有を可能にする日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の維持にも影響を及ぼす可能性まで浮上しているのである。

 それにしても、世耕の会見はヒドかった。「俺が正しい。文句あるか」というようなドヤ顔で韓国叩きだ。言葉遣いもいかにも嫌みで、「大臣の立場でいちいち反論はいたしませんけれども」と前置き。文在寅が輸出管理違反疑惑について国際機関に調査を依頼したいと発言したことについても、「何か国際機関の、どういう国際機関かよく分かりませんが、チェックを受けるような性質のものではない」と勝ち誇ったような物言いだったのだ。

 百歩譲って、韓国側の対応に問題があったとしても普通、担当大臣なら「両国にとって不幸な出来事」などと、もっと言葉を選ぶものではないのか。大臣が対立を煽ってどうするのか。


■浅い思慮でパンドラの箱を開けた


「日本企業に、より大きな被害が及ぶ」という文在寅の発言はまんざら間違っていない。早速、半導体材料で、韓国とのビジネスを狙う国が出てきた。

 12日にはロシアが外交ルートを通じ、自国製フッ化水素を韓国企業に提供する意思を示していると韓国メディアが報じているし、16日には中国の化学原料メーカーが韓国の半導体メーカーからフッ化水素を受注したと中国メディアが伝えた。

 日本商工会議所の三村明夫会頭が会見で「(規制された半導体材料を)韓国は国内で自分で作るようになるかもしれない」と懸念を示していたが、現に韓国政府は自国生産へ巨額投資すると言い出してもいる。

 政府は韓国イジメで勇ましくとも、日本メーカーにとってはサムスンなどの韓国の電機メーカーは“お客さま”だ。フッ化水素などの半導体材料で日本メーカーがほぼシェアを独占しているのは、200億~300億円程度のニッチな市場だからこそ「日本に任せられてきた」(業界関係者)のだという。
 韓国国内では日本製品の不買運動が激化し、きのう(17日)発表された韓国からの訪日観光客の最新データでは3・8%減少(前年同期比)している。国際社会も「自由貿易を否定するトランプの真似」と厳しい評価だ。


 経済ジャーナリストの山田厚史氏が言う。

「日本は自分たちの姿を国際的に外から見ることができなくなっています。今回の韓国叩きは、徴用工問題だけでなく、慰安婦問題、レーダー照射問題、天皇発言問題(韓国の国会議長が天皇に謝罪を求めた問題)の4事項を受けて、安倍親衛隊が『何とか韓国をギャフンと言わせたい』とさまざまな選択肢を練ってきたもののひとつ。経産省シナリオではありますが、通商政策担当の一部には慎重な意見もあった。

 ここへきて『対抗措置ではなく安全保障上の問題』と言い出したのは、WTOに持ち込まれたらヤバイと思っているからでしょう。もっとも、安全保障を理由にしても認められるかは微妙です。WTOはこれまで、安全保障を理由にした規制について結論を出していない。そのため通商関係の現場では、お互いにヤケドをしないよう、大人の対応をしてきたのです。日本が貿易上の規制で『ホワイト国』と『ブラック国』に分けていたことも俎上に載せられる可能性があります。安倍政権は浅い思慮で、パンドラの箱を開けてしまいました」

 冷静な判断ができず、常軌を逸している安倍政権。「俺様がいつも正しい」ならば政治など必要ないということになる。
「弱者イジメ」でネトウヨを煽り支持を広げる
 安倍政権が狂っているのは今に始まったことではないが、驚くのは、今回の韓国に対する輸出規制強化に、世論が拍手喝采を送っていることだ。


 JNNの最新の世論調査では日本政府の措置について、「妥当だと思う」が58%、「思わない」が24%。朝日新聞では「妥当だ」が56%、「妥当ではない」は21%だった。内閣不支持層ですら43%が「妥当だ」と答えたというから、暗澹たる気持ちになる。

 背景にあるのは、1965年の「日韓請求権協定により解決済み」という理屈なのだろうが、寝た子を起こしたのは安倍の方だ。先の戦争を正当化する歴史修正主義を持ち出し、慰安婦問題に決着がついたはずの「河野談話」や侵略を謝罪した「村山談話」を見直そうとした。植民地支配の反省なく相手を見下し蔑むから、韓国側もかたくなになる。

 聖学院大教授の石川裕一郎氏(憲法)はこう話す。
「今回の輸出規制問題についてはテレビの論調が酷過ぎます。多くが『日本政府は理性的に大人の対応をしているのに、韓国側が子供っぽく感情的になっている』というもので、日韓を対等に扱うのではなく、韓国をバカにしている。それを見て、安倍政権のコアなシンパだけでなく、平均的な日本人にも韓国を見下す感情が広がってしまうことが心配です。


 安倍政権は参院選の選挙対策として韓国叩きをやっている面もあると思います。しかし選挙が終わっても、日韓両国の国民感情に大きな禍根を残す。隣国関係というのはどうしても感情的になる歴史はあるのですが、相手をバカにしたらアウトで、妥協点を探れなくなってしまうのです」


■米国の家来同士が仲間割れ

 韓国を見下す姿勢は、安倍自民党が支持拡大策として利用してきた“弱者イジメ”の風潮を思い出させる。生活保護バッシングに、生産性の低い人を切り捨てる政策。安倍が国会や選挙演説で好んで繰り出す民主党政権批判もその延長線上にある。そうやってネトウヨを煽り、支持を広げ、さらにそれがネットで増殖される。狂ったゴロツキ政治がますますエスカレートしていく異様。それが今のこの国の実相だ。


 ジャーナリストの斎藤貴男氏はこう言った。

「いつまで原始人みたいなことをやっているのでしょうか。敵をつくって、差別することで、力を得る。その典型です。しかし韓国は、経済的にも今や弱い国ではない。本当に関係がこじれてしまったら、日本にとっていいことは一つもなく、ネトウヨが喜ぶだけです。


 通常は、高い地位にある人は、差別など恥ずかしくてできないものですが、安倍政権はそれをやってしまうからこそ、支持者がさらに支持をするというおかしな状態です。韓国側も感情的で大人げない部分もあるとは思いますが、国際社会は『米国の家来同士が仲間割れしている』と冷ややかですよ」


 山本太郎代表率いる「れいわ新選組」の街頭応援に立った脳科学者の茂木健一郎氏が、「日本って、他人のことをこんなに揶揄したりする人ばかりの国だったっけ? こんなにお隣の国の悪口を言ったり、意地悪するような国だったっけ?」と言っていた。日本を卑しい国におとしめた張本人が安倍政権だ。それなのに、与党優勢という選挙情勢は異常。こんな政権は絶対に勝たせてはいけないし、一日も早く引きずり降ろさなければならない。








<参院選ルポ>性被害の痛み、政治に反映を 苦しみ続けた葛藤を歌うシンガー

2019-07-14 08:44:50 | 転載

2019年7月13日 東京新聞朝刊
写真:抱えてきた心の苦しみや葛藤を歌に込める志万田さをりさん=東京都国立市で(本人提供)


 「イメージしよう その痛みが 認められる世界」「君は何も悪くない もう一人じゃない」。学校の部室のような雑然としたステージで、心地よいギターの音色にパワフルな歌声が重なる。東京都国立市のJR南武線谷保駅近くのライブスペース。シンガー・ソングライターの志万田(しまだ)さをりさん(32)はときどき、このステージに立ち、抱えてきた心の苦しみや葛藤を歌に込める。

 小学五年の頃から友達と連れだって動くのが嫌になり、一人でいることが増えた。「なんでこんなに生きづらいんだろう」。いつも心がモヤモヤした。思春期は常に焦燥感に駆られ、心臓の鼓動が速くなったり、吐き気がしたりするパニック発作を起こした。理由は分からなかった。

 「おっぱいも搾ってよ」。二十歳だった大学二年の頃、アルバイト先の居酒屋で生搾りグレープフルーツサワーを持っていくと、客の男性にからかわれた。動揺が収まらず、抑うつ状態が数日続いた後、記憶が突然よみがえるフラッシュバックが起きた。

 三歳のころ、三つ上の兄と公園で遊んでいたときの記憶だ。ボールを壁に投げる兄をネット越しに見ていると、後ろに立っていた見知らぬ男に抱きかかえられた。男はズボンを下ろし、性器をおなかにこすり付けてきた。

 忘れていたはずなのに、生々しい記憶とともに、あの現場にいるような感覚に襲われた。食事がのどを通らなくなり、体重が五キロ落ちた。夜も眠れず、大学二年の後期は不登校となり、翌年は休学。二十三歳まで薬を飲み続けた。

 悩み続け、足を運んだのが、二〇一七年九月に開かれた一般社団法人「Spring(スプリング)」の発足集会。実父に七年にわたり性的暴行を受けたと告白した山本潤さん(45)らが立ち上げた。志万田さんはスタッフとして加わり、情報発信や国政への陳情などに携わるようになった。

 この年の七月、性犯罪に関する刑法の規定が百十年ぶりに改正され、強盗よりも軽かった強姦(ごうかん)罪の法定刑引き上げなどが実現した。だが、暴力や脅しなどが伴うことを罪の成立条件とする「暴行・脅迫要件」が残った。幼少時の性被害の時効の延長や廃止、夫婦間の性暴力を犯罪に当たると明記することは見送られた。

 「性被害によるトラウマ(心的外傷)は長期にわたり、その後の人生に影響を与える。選挙で選ばれる政治家には、性犯罪の実態に見合った刑法改正はもちろん、被害の大きさを広く伝える教育制度をつくってほしい」と志万田さん。

 三月には十九歳の娘をレイプしたとして起訴された父親が無罪となるなど、性犯罪で四件の無罪判決が続いた。衝撃を受けた女性たちが東京、名古屋など各地で抗議の「フラワーデモ」を続け、男性も参加するなど、性被害について声を上げる動きが広がっている。

 志万田さんは政治も社会も、一人一人の思いが積み重なっていくことで変わると考える。「同じ被害や心の傷をこれからの子どもたちが負うことのないよう、性暴力被害者の声をすくい上げ、政治にきちんと反映できる政治家が出てきてほしい」 (望月衣塑子)

<性犯罪を巡る刑法改正> 明治以来110年ぶりに、2017年7月改正。強姦(ごうかん)罪の法定刑の下限が引き上げられたが、被害者が性交に同意していないことだけでなく、相手からの「暴行または脅迫」によって抵抗できなかったことを証明しなければならない要件などは残された。被害者団体などはさらなる改正を求めて6月、法務省に4万5000筆超のインターネット署名を提出。法務省は1月から始めた被害の実態調査の結果を20年3月ごろまでにまとめ、性犯罪に関する規定を見直すかどうかを検討する。

「改正」で力を増す悪法 権利制限の一途  池内 了

2019-07-13 20:00:09 | 転載
*この論文は東京新聞2019年6月14日夕刊に掲載されたものです。電子版を俟ちましたが7月13日現在発見できず新聞紙を視写させていただきます。(櫻井智志)
(写真:週刊エコノミストから、池内 了氏)


 悪名高い治安維持法は、第二次世界大戦が終わるまで、度重なる「改正」と拡大解釈によって取り締まる対象がどんどん拡大され、罰則も厳しくなって国民は物言えぬ状況に追い込まれた。国民の権利を制限し侵害する可能性がある悪法は、いったん成立してしまうと、権力はさまざまな理屈をつけて「改正」し、国民を支配する範囲を拡大するのが常である。

Ⅰ:権力者の都合

 第二次安倍内閣になって以降、特定秘密保護法、安全保障関連法、組織的犯罪処罰法(いわゆる共謀罪法)など政治に絡むさまざまな法が作られたり改正されたりし、最近では「働き方改革」と称して労働基準法や労働安全衛生法など労働関連法が「改正」され、高度プロフェッショナル制度が新設された。

 これら多数の法は、国会を通過してひとたび法律として施行されると、人々は「悪法も法」として従わざるを得なくなる。最初は露骨な悪法化は控えられるのだが、人々がその法に慣れて抵抗しづらくなると「改正」の動きが出てくる。権力を持つ者にとって都合が良いように変えられていくのだ。最近「改正」があった二例を検証してみよう。

Ⅱ:盗聴しやすく

 一つは、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」(いわゆる盗聴法)で、オウム真理教事件を契機に一九九九年に成立した。犯罪の組織化や複雑化に対応するためとしてする、捜査に通信(電話やメールなど)の傍受(盗聴)をすることを可能としたのである。通信の秘密や自由を侵害する危険性があることから、最初は四つの犯罪類型に限られ、裁判官の傍受令状と通信事業管理者の立ち会いが義務であり、通信当事者には事後的な通知をすることとした。

 ところが、相次ぐ「改正」で、窃盗や詐欺などさらに九つの犯罪も傍受可能と適用範囲が拡大し、事業者の立ち会いが不必要となり、事業者の施設で行っていた傍受を専用機器を備えた各警察本部で行えるようにした。どんどん警察の独断による盗聴が可能になり、秘密のうちに思想や行動調査のための監視を行う体制を整えるようになっている。現に労働団体の会合を盗撮するという警察の問題行動が暴かれたことがあった。

 もう一つはドローン規制法の「改正」である。二〇一六年に成立したドローン規制法では、国会・首相官邸・皇居・原子力施設上空のドローンの飛行が禁止されたのだが、六月中に施行予定の今回の「改正」では、防衛関係施設として自衛隊および米軍施設を加え、施設・敷地の上空だけでなく周囲三百メートルの区域の上空までもが原則禁止になる。米軍についてはさらに基地の敷地外の提供水域や空域も含まれる。この影響を大きく受けるのが沖縄で、たとえば辺野古埋め立て現場は米軍キャンプ・シュワブと提供水域に囲まれているためドローンが飛ばせず、赤土で汚染された海域など工事の進捗状況が撮影できなくなる可能性が高い。

Ⅲ:基地の監視は

 今後心配されるのはドローン禁止を口実にして基地周辺の監視が厳しくなって、基地内外の実情把握が困難になり、基地が治外法権となってしまう危険性があることだ。やはり戦前に基地が見える丘で写生していただけなのに、スパイと決めつけられて罰せられた事例があったことが思い出される。

 初めは、あまり影響がないと思っていても、悪法は必ず「改正」され、国民の権利が蹂躙(じゅうりん)されていく道をたどる。国民の権利を制限する可能性のある悪法は、最初から一切拒否する姿勢を貫かねばならない。

(いけうち・さとる=総合研究大学院大学名誉教授)

『news23』党首討論で安倍首相の醜態一部始終! 自民党フェイク本配布問題で悪あがき、ルール無視に小川彩佳は…

2019-07-04 16:38:54 | 転載と私見
2019.07.04 11:27リテラ転載と私見

構成
➀【『news23』(TBS)での党首討論の安倍首相】
②【フェイク野党攻撃本に乗っかって「枝野は無責任」と主張を始めた安倍】
③【志位「自民党は出所不明の文書を議員に配るのか」のツッコミに安倍は…】
④【議論を「学級崩壊」状態にしたのは安倍なのに玉木の発言を「学級崩壊になるから」と制止】
⑤私見【安倍自民党の報道統制と闘うジャーナリスト群像】


写真:『news23』での党首討論(TBSニュースHPより)


Ⅰ:【『news23』(TBS)での党首討論の安倍首相】
 本日、公示日を迎えた参院選。昨日には日本記者クラブや民放のニュース番組で党首討論がおこなわれたが、またも安倍首相は醜態を晒しつづけた。とくに酷かったのが、『news23』(TBS)だ。

 同番組では、まず最初に街の声をVTRで紹介し、年金2000万円問題への不安や「軍事より社会福祉を」といった街頭インタビューを放送。そのなかで厚労省が2日に発表した「国民生活基礎調査」で1世帯あたりの平均所得が4年振りに減少したことなどを示したのだが、安倍首相は「現役世代の勤労所帯は月3万円増えている」と反論。「一回の発言は40秒まで」というルールを超過し、司会の小川彩佳キャスターから「40秒経ちました」と制止されたのだが、しかし安倍首相は「大切なことなので」とルールを無視して持論を展開。再び「ルールはお守りいただけたら」と言われても話をつづけた。

 その上、小川キャスターに「国民生活基礎調査」で生活が「苦しい」と感じる世帯が全体の57.7%にも達していることを突きつけられても、安倍首相はそのことをまるで無視。「一方で内閣府の調査では75%が『いまの生活に満足している』、これは過去最高の数字です」と言い、別の調査結果を持ち出して、話をすり替えてしまったのだ。

 本サイトでも過去記事で指摘しているが(https://lite-ra.com/2018/09/post-4228.html)、安倍首相が持ち出した内閣府の「国民生活に関する世論調査」はかなりバイアスがかかっていると言われているシロモノだ。一方、今回発表された「国民生活基礎調査」は厳しい生活を余儀なくされている人が増えていることを裏付けるものとなった。だが、安倍首相はこうした不都合なデータから背を向け、ひたすら論点をずらしつづける始末。

 そんななかでも、とくに安倍首相が恥ずかしすぎる論点ずらしに出たのが、例の“野党&メディア攻撃まとめ”トンデモ本問題が取り上げられたときだ。

『news23』では、小川キャスターが「選挙戦を前にちょっと刺激的な資料が出回っている」と言い、一冊の冊子を取り出した。本の名は『フェイク情報が蝕むニッポン トンデモ野党とメディアの非常識』だ。

 これは本サイトでも紹介したように(https://lite-ra.com/2019/06/post-4784.html)、自民党本部が参院選を前に党所属の国会議員に「演説用資料」として配布している本で、“立憲民主党の枝野幸男代表は革マル派に近い”だのといったネトウヨが流布しているデマ攻撃そのまんまの文章や、野党党首らを醜く描いたイラストを掲載する一方、安倍首相を誰だかわからないほどに美化したイラストとともに礼賛するなど、とても政権与党が配布しているとは思えないレベルの冊子。

 しかも、この冊子は「terrace PRESS」なるサイトからピックアップされた記事を加筆・修正したものを掲載しているというのだが、このサイトは意図的にgoogleの検索に引っかからないようにするタグが埋め込まれているだけでなく、運営者情報さえも記載されていないのだ。

 ともかく、安倍自民党はネトウヨフェイクニュースの総決算のような冊子を「演説用資料」として議員に配るという信じられない言動に出ているわけだが、『news23』では、この冊子に掲載された醜く描かれた野党党首や美化された安倍首相の挿絵をフリップで紹介。番組アンカーの星浩氏は「総理、これ国会議員に20部ずつですかね、配られているということですが、ご覧になられたことありますか?」と質問したのだが、対する安倍首相は、こんなことを言い出したのだ。

「あの、党本部でですね、いろんな冊子を配っていますが、あの、私、いちいちそれを見ておりませんので、まったく知らないんですが。無責任だと言えば、無責任だと思いますよ」


Ⅱ:【フェイク野党攻撃本に乗っかって「枝野は無責任」と主張を始めた安倍】
 テレビや新聞でも取り上げられて問題になっているのに、党を代表する総裁が「見てない」「知らない」って。しかし、まあ一応はこういう冊子を配ることを安倍首相も「無責任」だと認めるのか……と思いきや、じつはこの安倍首相が言った「無責任」というのは、問題の冊子のなかからフリップに抜き出された「枝野代表の無責任を嗤う」という見出しのこと。ようするに、安倍首相はトンデモ冊子の主張をそのままテレビで肯定してみせたのである。

 フェイクを振りまくトンデモ冊子を配布したことの責任はおろか、冊子と同じように「(枝野代表は)無責任だと思いますよ」とテレビの党首討論で言い出す総理大臣……。もはや絶句するしかないが、さらに驚いたのはこのあと。安倍首相は枝野ディスのあと、間髪入れずに、こうつづけたのだ。

「たとえば、立憲民主党と言いながらですね、憲法9条について統一候補を選んでいるにもかかわらず、共産党は『自衛隊、違憲だ』って言ってますね。で、枝野さんは合憲だと言っている。立憲なんだから、憲法の根本、安全保障の根本じゃないですか。それなのに、それを横に置いておいて統一候補っておかしいでしょ。とくに、福井県においては立憲民主党は候補者を擁立しない、島根、鳥取もそうですよね。共産党の候補者を、応援している。枝野さんに訊きたいんですけど、枝野さん、福井県に住んでいたら、共産党の候補者に入れるんですか?」

 冊子の話だったのに、いつのまにか野党共闘に難癖をつけはじめる──。まさしくトンデモ冊子を地でゆく安倍首相の話のすり替えぶりに、さすがにスタジオは一瞬ポカンと無言になったほど。そして、“いや、話が違うだろ”といった感じで一気にスタジオがざわつき、小川キャスターも元の話題を戻そうとしたのだが、安倍首相はその進行を遮り、こうまくし立てた。

「ちょっとねえ、そのマンガ(挿絵)なんかより、大切なことじゃないですか」

「マンガなんかよりも」って、アンタたちが配っている冊子なのに……。こうして安倍首相は必死になって野党統一候補が問題だと叫びつづけたのだが、一方の枝野代表は「生活防衛こそがいまの国民のみなさんのいちばんのテーマであり、その点で一致している」「安保法制は違憲であり変えるべきだということできちっと合意している」と冷静に反論、「何もどこか指摘されるような問題があるとはまったく思っておりません」と淡々と返答した。

Ⅲ:【志位「自民党は出所不明の文書を議員に配るのか」のツッコミに安倍は…】

 だが、安倍首相の暴走は止まらない。「それは違いますよ! ちょっと待って、ちょっと!」「すいません! いまの、いまの大切な点なんです!」などと声を上げ、星氏の進行をシャットアウト。これには共産党の志位和夫委員長も「自衛隊違憲か合憲かという点では立場は違うが、いま問われているのは合憲か違憲かではない。安保法制という立憲主義を壊して憲法違反の法律をつくったことは許せないということで一致している」と枝野代表と同様に強調。さらに冊子について「もうコメントは要らないと思う」としながら、「出しているところはテラスプレスっていうんですか? 出所不明ですよ。安倍さんね、出所不明の文書をね、自民党の本部として国会議員に配るんですか? これ一点を取ってもね、ほんとうに選挙を真面目にやる資格がないと言われてもしようがないですよ」と安倍首相を諭したのだが、安倍首相に聞く耳はなく、またもこう喚いた。

「先程申し上げましたように、私、読んでないですから、反論のしようがないんですよ。いま、いきなり言われたんですが、そんな似顔絵なんかよりもですね、中身についてちゃんと……じゃあ憲法だったら憲法の論争をしましょうよ、星さん!」



 わかりやすいまでに露骨に慌てふためき、何が何でも冊子の話からずらすために野党共闘批判を繰り返す安倍首相。まるでそれが野党の急所であるかのように安倍首相はワンワン吠えるのだが、他方、枝野代表は「私、福井県民なら野党統一候補に投票します」とあっさり返答。それでも安倍首相は「立憲民主党、立憲主義なんでしょ? それを横においておくというのは極めて無責任」などと暴走を止めようとはしなかった。

 自分の党が配布した冊子が問題になっているのに、とにかくそれを無視し、自分の言いたいことだけを言いつづける……。これにはほとほと呆れたように、冊子で攻撃対象となっている野党側も「こういう冊子はやめてくださいよ」(国民民主党・玉木雄一郎代表)、「この冊子については、反省してくださいよ」(志位委員長)と述べるに留まり、“ゆ党”たる日本維新の会の松井一郎代表までもが「出所不明のものをね、まあ自民党も配るのはこれは大人げないと」と苦言。

 しかし、松井代表はつづけて「大事な参院選挙の党首討論で、出所不明のアレをね、本をね、TBSが、TBSが取り上げてやるような話なんかなと、思いますけどね」とメディア批判で安倍首相をフォロー。安倍首相も「私も知りませんよ! 必要ないでしょ! 何のために! くだらなすぎますよ!」と興奮し、この冊子の話題は終わったのだった。

Ⅳ:【議論を「学級崩壊」状態にしたのは安倍なのに玉木の発言を「学級崩壊になるから」と制止】
 いかがだろう。もはや安倍首相の態度は無責任というようなレベルではないことがわかっていただけるかと思うが、じつはこのあとも安倍首相は、日米貿易交渉でトランプ大統領との「密約」があるのではないかと追及する玉木代表に「密約だ、密約だって言うのは勝手ですけど、じゃあ、なんか証拠でもあんの?」とガラの悪さを露呈。その上、こんな台詞まで吐いたのだ。

「私がしゃべってるあいだ、玉木さん、静かにしていただけますか? 学級、崩壊した学級みたいになっちゃいますから」

 さんざん話題をずらしてギャンギャン吠えて学級崩壊状態だったお前が言うか……という話だが、これが日本の総理大臣の姿なのだから笑うに笑えない。ただひとつたしかなのは、安倍首相こそが自民党が配布したトンデモ冊子を実践・体現する者だということだ。

 きょうからの選挙戦でも安倍首相は、国民が不安を抱く年金問題では恣意的な解釈をした都合のいいデータを並べ立てて粉飾し、またぞろ野党批判を街角でがなり立てるのだろう。こんな低レベルかつ国民と向かい合わない政権与党でいいのか。有権者は冷静な判断をしていただきたいものだが……。

(編集部)

Ⅴ:私見【安倍自民の報道統制と闘うジャーナリスト群像】

 安倍晋三氏が政権を担当して、どれだけの報道人が現場を引退させられたことか。
NHK「クローズアップ現代」の国谷祐子さん、NHKの相澤冬樹氏。TBS「news23」の岸井成格氏・膳場貴子さん、テレビ朝日「報道ステーション」の古館伊知郎氏、「Jチャンネル」のコメンテーターの大谷明宏氏。
これで全員ではなく、多くの被害者がいる。
 さらに眼の前で相次ぐ圧力を見て、萎縮したり暮らしのためにやむなく自粛せざるを得なかった方々も多数いよう。
 今回の「news23」は、小川彩佳キャスターとそれをフォローした星浩アンカーも、協力して政治報道の根幹を保つ努力を試みた。
 厳しい日本社会の報道・言論の第一線で、権力者の恫喝と同僚へのアメの篭絡で自らがムチを奮われる。それでも日本の報道をまともな報道を貫き続ける闘うジャーナリストたちを私たちは尊重しなければ、誰が日本の言論・報道の砦を守るのだ?! 
 TBS『報道特集』など良心的健闘番組のテレビばかりか望月衣塑子ら東京新聞など日本のジャーナリストは、週刊金曜日を今も守る本多勝一、OBの村上義雄、在野の佐高信、日刊ゲンダイ、リテラ、しんぶん赤旗、全国中の琉球新報、沖縄タイムス、田崎基氏ら神奈川新聞など力強い地方新聞。

 究極的に、要は受け手の私たちの課題なのだ。

安倍首相が党首討論で夫婦別姓とLGBTの権利保護に「NO」…しかも自分でNO表明したのに「印象操作だ」と逆ギレ!

2019-07-03 21:31:31 | 転載
2019.07.03 06:21リテラ転載



安倍首相が党首討論で夫婦別姓とLGBTの権利保護に「NO」…しかも自分でNO表明したのに「印象操作だ」と逆ギレ!の画像1
「原発の新増設は認めない」に一人だけ挙手しなかった安倍首相(日本記者クラブより)

 選択的夫婦別姓について「経済成長とは関わりがない」と暴言を吐いたばかりの安倍首相だが、本日おこなわれた日本記者クラブでの党首討論会(自民、公明、立憲民主、国民民主、共産、日本維新の会、社民の7党)で、その性差別的姿勢がはっきりとあきらかになった。しかも、その姿勢を自分で表明しておいて「印象操作だ!」と逆ギレしてごまかす、総理大臣とは思えない醜態を晒した。

 それは、記者団からの質問に答える党首討論会第二部の最後。記者からの質問に挙手で回答する方式でいくつか質問が投げかけられたときのことだ。

 まず、質問のひとつ目は「女系天皇を認めてもよいと思う方」。これに賛成を示して挙手したのは共産党の志位和夫委員長と社民党の吉川元幹事長だけだった。

 さらに、「原発の新増設は認めないという方は挙手してください」と質問されると、安倍首相を除くすべての党代表者が挙手。与党である公明党の山口那津男代表も隣に座る安倍首相の様子を伺いながら最後に手を挙げていた。安倍首相だけが手を挙げず、手持ち無沙汰に書類をペラペラとめくるのみ。そして、公明党の山口代表が「再稼働は認めるが新増設は認めない」と説明すると、安倍首相も慌ててなぜかこうつづけた。

「あの、自民党も政府もですね、現時点で想定は、新増設については想定していないということであります」
「新増設をしないというなかにおいて、エネルギーの安定供給を、わたしたちはエネルギーミックスを立てているということ」

「新増設はしない」と言うのなら、山口代表と同じように「新増設を認めない」として挙手すればいい。なのに、なぜかそうはしない安倍首相。これはようするに、新増設する気があるということではないのか。

 この挙手による賛成・反対の意志表示の方法で、安倍自民党の不都合な問題に対するペテン師的態度が露わになったといえるが、さらに刮目すべきのはこのあと。その後の質問では、安倍自民党が覆い隠そうとしている問題点への姿勢がよりはっきりしたからだ。

「選択的夫婦別姓を認めるという方は挙手してください」

 この質問に、やはり安倍首相を除くすべての党代表者が挙手。山口代表も手を挙げ、安倍首相だけが「選択的夫婦別姓を認めない」としたのだ。

 つまり、先日は「経済成長とは関わりがない」と夫婦別姓の議論から逃げた安倍首相だったが、この直球の質問に安倍首相は居心地の悪そうにヘラヘラと笑いを浮かべるだけ。そもそも夫婦別姓を認める気がないことをはっきりと示したのである。

 これだけではない。つづいてなされた質問は、こういうものだった。

「LGBTの法的な権利を与えるというのを認めるという方は」

 この質問に対し、今度は安倍首相と山口代表以外が挙手。またも安倍首相の多様性を否認する姿勢が浮き彫りとなったのだ。

 しかも、手を挙げなかった安倍首相は、すぐさまこんなイチャモンをつけはじめた。

「これですね、あまりにもね、ちょっとね、単純化してショーみたいにするの、やめたほうがいいですよ」
「政策的なね、政策的な議論をちゃんとしないとですね、イエスかノーかということでは政治はないですから。どういう議論をしているんだ、いまの段階で答えられなくても直ちにノーではないんですから、それはね、それは印象操作するのはやめたほうがいいと思いますよ。何か意図を感じるんだけど。何かそういう意図を感じるな」

 いやいや、大前提として党首討論会の開始前には“イエスかノーかで質問することもある”と前置きされていたし、なによりもこれは「印象操作」でも何でもない。選択的夫婦別姓や LGBTの権利保障という問題は「政策的な議論」ではなく、基本的人権にかかわる問題として「イエスかノーか」で姿勢を示せるものだからだ。

 つまり、安倍自民党が多様性を認めない、基本的人権を疎かにする姿勢であることが明確になった結果、安倍首相は「印象操作だ!」「意図を感じる」などとわめき立てることしかできなかったのである。

 この幼稚な態度には、御用ジャーナリストのひとりである読売新聞の橋本五郎氏でさえ、「安倍さんは説明されたわけでしょ? 説明なしにただ手を挙げろと言っているわけじゃありませんから。それで説明をされたわけですから」「簡単に賛成・反対とはいかない問題なんだって、逆にわかったじゃないですか」となだめたほど。これに対し、安倍首相は「……ありがとうございます」と述べ、挙手による質問コーナーは終わった。

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 まあ、都合が悪くなると、すぐに「印象操作だ」とわめき立てる安倍首相の恥知らずぶりはともかく、ジェンダーや性的マイノリティについて、安倍首相がいかに差別的な考えを持っているかはこれでよくわかったはずだ。

 安倍自民党は「ViVi」Web版のタイアップ企画で、「ViVi」公認のインフルエンサー「ViVi girl」が寄せた「Diversity」(いろんな文化が共生できる社会に)というメッセージをあたかも自民党のメッセージであるかのように拡散させたばかりだが、実際には、性的マイノリティの権利保障も、女性の人格権を認めず社会的に不利益をもたらす夫婦同姓を見直すこともしないというのだ。

 本サイトでは昨日の記事でも、安倍首相が下野時代に「夫婦別姓は家族の解体を意味します。家族の解体が最終目標であって、家族から解放されなければ人間として自由になれないという、左翼的かつ共産主義のドグマ(教義)。これは日教組が教育現場で実行していることです」(「WiLL」ワック2010年7月号)と発言するなど、夫婦別姓反対の急先鋒だったことを紹介したが、それはいまも変わらないのである。

 LGBTについても同様だ。杉田水脈議員による「LGBTには生産性がない」発言が大問題になったために、なんとなくLGBTを認めているふりをしているが、杉田議員をずっと庇いつづけているように、安倍首相のLGBTへの考え方は杉田議員と変わりはない。

 にもかかわらず、金にあかせて、「多様性」を訴える若い女性たちのメッセージをあたかも自民党が理解しているかのようなふりをして、詐欺的PRを展開する。その悪質なやり口には呆れ返るしかない。

 安倍首相は、社会的弱者の権利を認めるか認めないかという設問に「印象操作だ!」と難癖をつけたが、印象操作をしていたのはどっちだ、という話だろう。

 しかし、安倍首相の卑劣な本質はまだまだこんな程度なものではない。今晩は、『報道ステーション』(テレビ朝日)や『news23』(TBS)、『news zero』(日本テレビ)でも各党党首・代表者による討論がおこなわれる。またも安倍首相が不都合な質問に「印象操作だ!」「意図を感じる」などと言い出すことはないか、しかとチェックしたいと思う。

(編集部)

最終更新:2019.07.03 06:24

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