【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

イスラム国人質問題と私たちの求めるもの

2015-01-28 22:38:50 | 社会・政治思想・歴史
生きた日本国憲法の尊重こそ大事にしたい
櫻井智志


 このままで行くと、24時間の時間切れで後藤さんは極めて生命が危うい危険性がある。私は、この記事を早めに読んでいたが、なによりも後藤さんの実母石堂順子さんの気持ちを考えると、政治の論理に終始して、生きる権利を喪失させられることに匹夫の勇を奮って書いている。

ツイッター上で、日本共産党志位和夫氏は池内さおりさんに注意を促したというツイッターを知り、疑問に思ったが、さまざまな情勢から判断した志位委員長のお考えは理解できたので、書かなかった。

読者は下記の新聞記事をお読みになって何をお思いになられるだろうか。

私は「I AM  KENJI」コミュニテイに参加して、考えに考えて、この文章が「国民的共同をめざして」に違背しないかどうか迷い続けた。

しかし、現実にひとりのすぐれた日本人ジャーナリストの生命が奪われる時間が迫っていることを考慮して、書く。もしかしたら、この記事が直接の原因で「国民的共同をめざして」を閉鎖せざるを得ないかもしれない。

迷い迷いを重ねつつ、それでも個人が信ずる信念を言明することこそ、日本共産党のかたがたが、戦前戦時中に虐殺されても、反戦平和を主張した原点と考える。

===以下日刊ゲンダイweb転載===============

安倍政権に同調する野党…真っ向対峙は「生活の党」だけか

2015年1月28日


「生活の党と山本太郎となかまたち」の小沢一郎(72)と山本太郎(40)の2人が27日、揃って記者会見し、両者が共同代表に就任すると発表した。

「党名に固有名詞が入るのはいかがなものか」「シロウトの山本太郎と共同代表とは小沢も落ちたもの」などと揶揄する一部メディアもあるが、今の野党でマトモに安倍政権と対峙しているのは「生活」だけかもしれない。

 イスラム国による人質事件を受け、民主党内では「政府を後押しする姿勢を見せるべき」との声が上がり、共産党も政権批判をした議員をいさめ、発言を自粛している。安倍首相が2人の人質をほったらかしたまま中東を歴訪し、イスラム国対策に2億ドルの支援を表明した“外交ミス”をとがめることもない。

 ところが「生活」は違った。この日の会見で小沢代表は、ハッキリこう言った。
「人命救助を最優先することが大前提。しかし、事件は何が原因で起きたのか。日本はイスラム国に敵対する国を支援すると表明したのだから、敵国と認識されるのは当たり前のこと。今後、政府はどう対処するのか。米国を中心とした有志連合に参加し、集団的自衛権の行使に踏み切っていいのかどうか、国会の場でしっかりと主張していきたい。人命救助最優先を理由に声を上げない今の野党はおかしいのではないか」

 山本代表もこう気勢を上げた。
「<政府を批判している時ではない>という同調圧力が出来上がっている。(安倍政権が)これを利用して海外派兵や集団的自衛権に足を踏み入れようとしているのは明らかだ。安倍首相が日本のトップとしてふさわしいのかどうかを含め、上げるべき声は上げていかなければならない」

 野党には安倍首相の横暴にストップをかける責任がある。民主党も共産党も少しは見習った方がいい。

======転載終了======

 私は小澤一郎氏にも山本太郎氏にも批判的見地はもっている。しかし、今回の人質問題に関しては、両者の発言を否定するところはなにもない。もしも、このまま事態が進み、後藤氏が解放されても、虐殺されても、日本の政治は特定秘密法と安倍の政治手法によって、完璧な高度管理抑圧社会体制に陥っていく。安倍総理を頂点とする社会体制の許可する範囲内での批判や政党運動に縮小されたものしか認められなくなっていく。
 私は、安倍政権批判の文を書く度に、苦しい心理状態を感じ続けている。それでもいま言わなければ、手遅れになるという思いがすいぶん重なり続けてきた。それでも書くのは、胆管癌の激痛と闘いながら、生物化学兵器や細菌の住宅密集地における人間の生命の危険性を住民運動、裁判運動で戦い続けた芝田進午先生の記憶があるからだ。
 みんなが大勢参加したから後から社会運動に参加するのか。はじめは少人数でも絶対少数でも、社会的批判が必要ならば、「ノー!!」と声低く言うべきだ。

 結論が出てくるのは、もう間近だ。

弱者に寄り添い平和に徹した後藤さんを見殺しにするのか、「積極的平和主義者」アベシンゾー様

2015-01-26 16:36:19 | 転載と私見
常に弱者に寄り添う 人質事件・後藤さん、著書で訴え
2015年1月26日 13時58分
シリア北部アレッポで取材活動中の後藤健二さん(左)=インデペンデント・プレス提供
写真
 イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」とみられるグループに拘束されたフリージャーナリスト後藤健二さん(47)は紛争や貧困に苦しむ子どもたちを取材するため世界各地を飛び回ってきた。その成果の一端を、これまで著したノンフィクションで知ることができる。作品に共通するのは、困難な状況にある人たちに寄り添うという信念だ。 (栗原淳、福田真悟)
 後藤さんは児童書を出版する汐文(ちょうぶん)社(東京都千代田区)から四冊を出している。いずれも、世界で起きている深刻な社会問題を、子どもたちにも分かりやすいよう平易な文章で報告している。
 「ルワンダの祈り」(二〇〇八年)はアフリカ中部ルワンダで一九九四年に起きた内戦の生存者に取材している。百日間で百万人が虐殺されたとされる悲劇に迫り、家族の絆の大切さを訴えた。
 また、旧ソ連のエストニアで、住民の九割がエイズ(後天性免疫不全症候群)に感染しているという村に入り、生後二カ月の娘への母子感染におびえながら生活する十六歳の少女の苦悩を伝えるのが「エイズの村に生まれて」(〇七年)。後藤さんは、エイズまん延の背景に、貧困や差別があるとして、エイズの親から生まれたり、エイズで親を失った子どもたちに希望を与えてあげられますか、と問い掛けている。
 「ダイヤモンドより平和がほしい」(〇五年)は世界で最も貧しい国の一つ、西アフリカのシエラレオネで起きたダイヤモンドをめぐる政府と反政府軍の戦争がテーマ。子ども兵士だった少年が多くの人命を奪った過去に苦しみながらも更生を目指す姿を描き、産経児童出版文化賞に輝いた。
 作品には、子どもや市民ら弱者を思いやる後藤さんの視点がにじみ出る。両親を殺害され、残虐な行為に加担せざるを得なかった少年に「もっと寄り添いたいと思っていました」と心情を吐露していた。
 「もしも学校に行けたら」(〇九年)でも、タリバン政権下でかなわなかった学校教育を受ける夢を抱き続けたアフガニスタンの少女を取り上げている。
 汐文社は「著作を読めば紛争などで苦しむ子どもたちの姿を伝えたいという後藤さんの思いが分かるはずだ」としている。
(東京新聞)
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私見
 このように平和を世界に実現するために尽力しているおかたこそ、言葉の真実で言う【積極的平和主義者】と呼ぶべきであろう。
「積極的・平和破壊主義者」の安倍総理には、後藤母子さんのように高潔な人格を理解できないのだろう。後藤・湯川両氏が捕虜にされていることを知りつつ、すぐ近辺の中東で「イスラム国」を刺激する思慮のない暴言をえらそうに演説した安倍晋三。その失策はあまりにも大きい。安倍晋三は忘れるが後藤健二さんは積極的人道主義者たちの間で忘れられることはない。

湯川さん殺害とイスラム国人質事件に考えること

2015-01-25 23:05:23 | 言論と政治
 湯川さん殺害という最悪の事態に至ったイスラム国人質問題。事件の本質に迫るアプローチが、日刊ゲンダイで展開されているので、転載させていただく。


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【日刊ゲンダイ政治社会面】転載


 イスラム国による日本人2人の人質事件は、拘束中の後藤健二さん(47)が一緒に拘束された湯川遥菜さん(42)とみられる男性の殺害画像を持たされ、湯川さんが殺されたことを動画サイトで伝えたことで、新たな局面を迎えた。危険を顧みずに、イスラム国支配下に入った2人の自己責任を問う声もあがっているが、それだけでは本質を見誤る。政府の責任は極めて重大なのである。

 湯川さんがイスラム国に拘束されたのは昨年8月。同10月には後藤さんが消息を絶った。ところが、外務省が「緊急対策本部」を設置したのは、事件が表面化した今月20日である。2人が拘束された情報をキャッチしていながら、数カ月にわたって無視し続けたのは、「自己責任だ」「放っておけ」という空気が外務省内で支配的だったからだという。省内には「いい迷惑だ」とまで言い放つ職員もいたそうだ。

 1年前に安倍首相の肝いりで発足した「日本版NSC」も、全く役に立たなかった。これまでに行われた28回の会議では、「イスラム国」が議題になったことは一度もなく、パイプづくりも怠っていた。安倍首相だけが勇ましく「積極外交」なんてホザいていたが、その裏の危機管理は全く機能していなかったということだ。

 加えて、ヨルダンの現地対策本部で指揮を執る中山泰秀・外務副大臣は、イスラム国と敵対するイスラエルと親密で、「日本・イスラエル友好議員連盟」事務局長だった。この人選にも、中東の識者たちは驚いていた。

 中東各国に駐在する大使たちも頼りない。駐トルコ大使の横井裕氏は79年に外務省入省後、「チャイナスクール」に所属し、アジア大洋州局中国課長、在上海総領事、駐中国公使などを務めた中国通で、中東各国とは全くの無縁。そんなのが人質解放交渉でカギを握るといわれる駐トルコ大使なのだから頼りない。

(*このあと最終段落は、不倫大使云々という記事で、本題からややはずれて別の予断を読者に持たせるので省略します)

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 後藤さんの釈放は、現在牢獄にあるイスラム国の死刑囚との交換が条件だそうだ。しかし、現地ではそうとう困難な事態と言われている。日本の戦後平和外交は、矛盾する二つの要素のせめぎあいとともに進んできた。最近になり、安倍政権登場で、平和外交は根本的な変質をとげた。それは国内政治にも大きく影響している。日本国民が安倍政権を倒閣するだけの気概と意志とがなければ、諸外国はしだいに日本を見直し、見捨てていくことだろう。そうして、国内には治安維持法社会が広がり、海外の戦争国家とくんで世界中の鼻つまみ者として軽蔑されるだろう。そんな私たちであるならば、ノーベル平和賞を受賞しそこねたことがむしろ実態に即していたとい
えよう。

TBSテレビ『報道特集』を視聴しながら思ったこと

2015-01-24 20:35:14 | 言論と政治
TBSテレビ『報道特集』を視聴しながら思ったこと
櫻井智志



昨日1月23日のテレビ朝日報道番組で、ゲストして招かれた元通産官僚の古賀茂明氏が述べたことにはっとした。
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当初から安倍総理は、「有志国連合」に入れてもらうために中東歴訪の記者会見でイスラム国を挑発した。安倍総理の思惑通りに日本は「有志国連合」のメンバーとして認められた。安倍総理の思惑の真相は見事成果を得た。
古賀茂明氏は、さらに総理の会見よりも前にイスラム国から人質の通知はあったという。
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それを効果的に生かすチャンスをうかがっていた安倍総理は、中東歴訪を絶好のチャンスとして利用した。日本は世界中から信頼を失った。しかし安倍総理の思惑は実現した。膠着状態が続いているのは、安倍政権にとって、人質解放は二の次だからだろう。
これでもっとビッグ・ニュースが捏造されたり発生したりすれば、人質問題はマスコミの話題から消えていく。
以上は古賀氏の発言をもとに私が考えたことである。イスラム国は安倍総理と日本国民宛にメッセージを発している。イスラム国の不合理に、日本国民が情理を尽くした意思表示、異議申し立てを明確にすべきであろう。

その場その場で行き当たりばったりの安倍総理は日本国民を不幸のどん底に突き落とす

2015-01-23 21:14:39 | 社会・政治思想・歴史
フェイスブック【国民的共同をめざして】

その場その場で行き当たりばったりの安倍総理は日本国民を不幸のどん底に突き落とす
櫻井智志

 私は、安倍総理が中東歴訪中におこなった演説をテレビのニュースで見ていた。その言葉が、欧米諸国には心地よいものではあっても、これは危ういなあと感じた箇所がある。勇気あるリベラリスト孫崎享氏の評論を以下に掲げるのでお読みになると、なにがイスラム国の側の逆鱗に触れたのかがわかる。


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孫崎享のつぶやき
安倍首相「イスラム国の脅威を食い止めるため2億ドル」と戦う姿勢明言」。殺害なら安倍に責任
2015-01-23 08:085


今政府はやっきになって、2億ドルは人道支援目的であると宣伝している。朝日新聞など。相変わらず、政府の大本営発表をそのまま報道している。

 安倍首相が何を言ったかは、演説を見れば一目明瞭である。
 23日朝日は次のように報じている。

「政府は2億ドルは“人道目的”再三発信」
「「イスラム国」側は20日に公開した身代金要求で、日本の2億ドル支援は“我々の助成と子供を殺し、イスラム教徒の家々を破壊するためだ」等と主張した。
このためこの映像をイスラエルで見た安倍首相は、電話で菅氏に「2億ドルは人道支援だとあらゆるメディアを通じて発信してほしい」と指示した。外務省はホームページで、「2億ドルは非軍事分野での支援です」という「日本からのメッセージ」を載せた」

 では安倍首相はどのような発言をしたのか。
「イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します。
 イラクでは、全党派を含む、国民融和内閣による安定的な統治が絶対に必要です。日本は、そのための努力を支援し続けます。地域から暴力の芽を摘むには、たとえ時間がかかっても、民生を安定させ、中間層を育てる以外、早道はありません」

 この演説では、明確に「イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです」と述べている。

 確かに日本政府の云う様に、難民・避難民支援が主たるものである。
 しかし、今政府が行っている説明には、「ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです」というフレーズが抜けている。

 今政府ははやっきになって、2億ドルは人道支援目的であると宣伝しているが、安部首相が「ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです」とISIL対決姿勢を打ち出していたことには言及していない。

 更にイラクについては「イラクでは、全党派を含む、国民融和内閣による安定的な統治が絶対に必要です。日本は、そのための努力を支援し続けます。地域から暴力の芽を摘むには、たとえ時間がかかっても、民生を安定させ、中間層を育てる以外、早道はありません」とも言及している。今回の人質殺害予告は安倍首相の発言を原因としていることは明白だ。

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 念を押せば、イスラム国の様々な危険性や問題点を肯定しているわけではない。日本国の現在のありようと課題を明確にしたい。
安倍総理は、いままでの国会審議の様子でも、論理的な一貫性を欠いていることが多い。全く別の概念を修飾語でかざりながら、さらっと矛盾を自分の脳内では解決できているのであろうが、まるで矛盾そのものの答弁もある。集団的自衛権でも、消費増税でも、辺野古移転でも、どちらにでもとれるような曖昧な丁寧語が多い。「積極的平和主義」が「平和主義からの逸脱」を意味しているとは、外国の民衆には言葉だけではわからない。

 人質となっている後藤健二さんの母親石堂順子さんが日本外国特派員協会で記者会見をおこなった。
少し長いがきょうの東京新聞夕刊トップから書き写す。

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 私は石堂順子と申します。ジャーナリスト後藤健二の実の母親です。多くの外国人記者の皆さんにお集まりいただき、感謝します。日本国民・日本政府の皆さん、諸外国の皆さんに健二が大変ご迷惑をおかけしていることに心よりおわびします。私はこの三日間、ただただ悲しくて泣いていました。表現できません。健二は幼い頃から心の優しい子でした。健二はいつも「戦地の子どもたちの命を救いたい」と言っていました。中立な立場で戦争報道をしてきました。イスラム国の敵ではありません。日本は戦争をしないと憲法九条に誓った国です。七十年間戦争をしていません。日本はイスラム教諸国の敵ではなく、友好関係を保ってきました。日本は唯一の被爆国です。アメリカによる広島と長崎への原爆投下で数十万人が亡くなりました。あと遺された時間はわずかです。日本政府の皆さん、健二の命を救ってください。
「皆さまのお力で健二の命を救ってほしい」。石堂さんは涙をうかべながら、声を詰まらせて話した。
 今回の渡航について、後藤さんからは事前に知らされていなかったといい、「この三日間、ただただ悲しかった」と話した。22日に後藤さんの妻からの電話で、二週間前に子どもが生まれたばかりであること。先に拘束されていた知人の湯川遥菜さんを「何が何でも助けるために」と言って後藤さんが渡航したことなどを知ったという。
 「健二は小さいころから心の優しい子だった。いつも戦地の子どもたちの命を救いたい、と言っていた。乳飲み子を置いてまで、捕らえられた同胞、友達を救いたい、と言っていた。乳飲み子を置いてまで、捕らえられた同胞、友達を救おうと正義感を燃やしたのではないか」
 グループはビデオ声明で、安倍晋三首相がイスラム国対策で二億ドルの供与を表明したことを批判しているが、石堂さんはグループに向けて「日本は戦争をしないと憲法九条に誓った国。イスラム教諸国の敵ではなく、友好関係を保ってきた」と強調した。
 日本政府に対しては、「あと遺された時間はわずかです。健二の命を救ってください」と訴えた。これまでに、日本政府からの接触はなかったという。協会によると、会見は石堂さん側から人を介して、「世界に向けてメッセージを発信したい」との申し入れで開かれた。
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 まさに石堂順子さんの発言こそ、戦後の日本国憲法のもとで非戦平和のもとに生き抜いてきた日本国民の道義であり大義でもある。しかし、「特定秘密保護法」を強行採決して「集団的自衛権」を発動をめざし、「積極的平和主義」というデマゴギーのスローガンを掲げる安倍自公政権は、最初日本国民を戸惑わせ、ついには「日本は自らの憲法を捨て去り、軍事大国の仲間入りした」という事実が世界中にバレてしまった。
 それでも理性にのっとって、失墜発言をおこなった安倍首相の面子をもたてて、海外特派員協会で訴えた。それはまさに日本国の統治の法的倫理的規範に則ったものである。アメリカやイギリスのグループに入れば自国国民のことなど構わないというのが本音だとしたら、後藤=石堂親子の素晴らしい行為が気の毒すぎる。
 なお、私はTBSテレビのMEWS23の中心的ジャーナリストである岸井成格さんの言葉が心に残った。岸井氏はこう語った。
「日本では自己責任(論)という言い方がされていますが、慎重に使いたいものです。すべてを個人の責任ですませて社会が何も関わらないというのはどうでしょうか」(1月22日の番組中)。
 まさに後藤さんたちの人質は安倍総理と日本国民宛に向けられている。「イスラム国」の矛盾と問題とは別に、日本国民がいままで多くの先人の努力によってになわれてきた「非戦平和日本国」のくにの姿が厳しく試されている。

日本人が「イスラム国」の人質となった事件について

2015-01-21 16:57:07 | 言論対話原稿所収
日本人が「イスラム国」の人質となった事件について
櫻井智志

 私は腰痛でパソコンをひらけずにいたきのう一日、考えていた。きょうパソコンをひらき二つの情報が印象的だった。
1山下芳生氏ツイッター
2日刊ゲンダイweb「日本人拘束 安倍首相のバラマキ中東歴訪が招いた最悪事態」

1【山下芳生氏ツイッター】
山下芳生 (写真右)
@jcpyamashita

「イスラム国」を名乗る集団が日本人2人を人質に2億ドルの身代金を要求したと報じられている件について、メディアから問われて次のようにコメントしました。「テロ集団による卑劣な行為は絶対に許されない。政府として、情報の収集、事件解決のためのあらゆる努力をおこなうことを求める」

【感想】日本政府の姿勢としてどう対応すべきか明快な姿勢を貫くことを求めている。しかし、次の日刊ゲンダイの記事はもう少し掘り下げて考えていて大いに参考となった。

2【日刊ゲンダイ政治・社会面フォロワーズ】

日本人拘束 安倍首相のバラマキ中東歴訪が招いた最悪事態

2015年1月21日

 衝撃的な事態だ。日本人2人が「イスラム国」に人質として捕まり、72時間以内の殺害を予告された。
 イラクとシリアの北部一帯を支配し、残虐の限りを尽くしているイスラム国は、これまで人質に取った白人を容赦なく殺しているだけに、殺害予告は脅しじゃない。
 人質は湯川遥菜さん(42)と、フリージャーナリストの後藤健二さん(47)とみられている。イスラム国はビデオ声明で、72時間以内に2人の身代金2億ドル(約235億円)を払うように要求している。

 イスラム国が20日に流したビデオ声明は、「日本政府と国民へのメッセージ」というタイトルで、1分40秒ほどのもの。〈日本の首相へ。日本はイスラム国から8500キロも離れていながら、自発的に十字軍に参加した〉〈日本国民に告ぐ。おまえたちの政府は、イスラム国と戦うのに2億ドル支払うという愚かな決定をした。日本人の命を救うのに2億ドル支払うという賢明な判断をするよう政府に迫る時間が72時間ある〉とナイフ片手に英語で凄んでいる。
 ビデオ声明でも分かるように、今回の人質事件、安倍首相の「中東外交」が引き金になったのは明らかだ。
 16日から中東4カ国を訪問している安倍首相は、17日にカイロで行った演説で、「イスラム国の脅威を食い止めるために2億ドルを支援する」とブチ上げた。この演説がイスラム国の怒りに火をつけたのは間違いない。湯川さんは昨年8月、後藤さんは昨年10月にイスラム国に拘束された可能性が高いが、これまで殺害を予告されることはなかった。

元レバノン大使の天木直人氏がこう言う。
「イスラム国が、安倍首相の中東訪問のタイミングを狙っていたのは間違いないでしょう。しかも、首相は、イスラム国と戦うために2億ドルを支援すると表明した。彼らにとっては、飛んで火に入る夏の虫です。イスラム国は、ネットを駆使して世界中の情報を手にしている。恐らく、安倍首相が何を語るか、じっくり観察していたはず。深刻なのは、彼らは、日本の中東政策を問題にしていることです。日本は文字通り、イスラム国との戦争に巻き込まれてしまった」

 安倍首相は真っ青な顔をして「2億ドルは避難民への支援だ」と釈明していたが、もはや「イスラム国」に言い訳は通用しない。

■カネをバラまいただけの中東歴訪

 そもそも、安倍首相は、このタイミングで中東4カ国を訪問する必要があったのか。
 ちょっと考えれば、いま中東にノコノコと出掛けて、「イスラム国がもたらす脅威を食い止める」と2億ドルのカネを出すと表明すれば、イスラム国を刺激することは容易に想像がついたはずだ。

「地球儀を俯瞰する外交」を掲げる安倍首相は、これまで50カ国以上を訪問し、毎月、外遊すると心に決めているらしいが、中東に行く緊急性はまったくなかったはずである。

 実際、16日から20日まで駆け足でエジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナを訪ねているが、中身のある外交はゼロだった。エジプトに430億円、ヨルダンに147億円……と、ひたすらカネを配っていただけだ。総額2900億円である。浮かれてカネをバラまき、その結果、人質事件を引き起こしているのだから、どうしようもない。

「安倍首相は中東歴訪を中止すべきでした。いま、中東諸国は“イスラム国”を相手に必死の戦いをしている。フランスではシャルリー紙に対してテロが起きたばかりです。各国の首脳は正直、安倍首相をゆっくりもてなす状況ではなかったと思う。そもそも、安倍首相は、どこまで中東外交を理解しているのか。今回、ゼネコン、銀行、商社など46社の首脳をズラズラと引き連れていったのが象徴です。トップセールスといえば聞こえはいいが、結局、安倍外交はカネ、カネ、カネ。日本人2人の人質事件は、カネにものをいわせる安倍外交の虚を突かれた格好です」(天木直人氏=前出)

 中東4カ国歴訪は、安倍首相が「どこでもいいから外遊に行きたい」と外務省をせっついて組んだ日程なのだろうが、人質事件を引き起こした責任をどう取るつもりなのか。

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【私見】
 政府の対応としては山下芳生氏の対応がふさわしいと思う。しかし、なぜこのような事態が生まれたのか、天木直人氏が発言されていることには、深い洞察が感じられる。
 安倍総理は、むやみに海外にカネをばらまく遊説外交を見直すべきだ。日本国民が福島原発下の県民をはじめ、すさまじい窮状に
おかれていることを考えると、ばらまく金をまず日本国内の内政に、しかも日本国行政から切り捨てられようとしている人々に手厚い行政に使うべきだ。

 そうとう国内で弾圧を強いられている国民ばかりか、海外のひとびとも戦後70年、憲法九条のもとに戦争と武器使用に歯止めをかけて平和をめざしてきたことに敬意を払ってきた。それが安倍総理の政治姿勢でがらがらと崩壊しつつあることが、今回の事件の背景にある。

 今後具体策として、総理がもう少し見通しと洞察をもって外交にも取り組むべきだ。事件には情報を集め慎重な見通しで対応を進めていくべきだ。福田赳夫総理の時にダッカ事件が起きた。ハイジャック犯人は刑務所に入れられているメンバーの釈放を要求した。福田総理は、「超法規的措置」として犯人に収容されていたメンバーを渡した。
 いまでも「超法規的措置」への批判は強くある。しかし、具体的に発生した問題に対応した福田赳夫政権の対応は、足元をささえる腰がすわっていた。言うことがコロコロ変わるような総理には、統治能力があるかどうか疑わしい。下手な対応をすると、安倍総理は首相の座を失うことさえある。首相と自公政権の真価が問われている。さらに安易に「イスラム国」に参加したいとか取材したいとか、物見遊山のような日本国民の国際感覚のうすっぺらさも嘆かわしい。

日本共産党が反安倍自公政権勢力のより強固な牽引車となるために 2014/5/17 櫻井智志

2015-01-18 21:00:27 | 言論対話原稿所収
日本共産党が反安倍自公政権勢力のより強固な牽引車となるために

2014/5/17 櫻井智志

 日本共産党は、「軍国主義復活めざす“安倍暴走”と対決 開拓者の精神で強大な党を」と党幹部会が躍進月間を呼びかけた。

 そのよびかけは、以下のとおりである。

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 日本共産党は15日午前、党本部で幹部会を開き、同日から7月31日までを期限として「党創立92周年・いっせい地方選挙勝利をめざす躍進月間」をよびかける決議を全会一致で採択しました。午後には、「躍進月間」成功に向け都道府県委員長会議を開き、志位和夫委員長が幹部会を代表して決議の内容を報告しました。

 決議は、安倍政権の暴走の一歩一歩が矛盾を大きく広げ、とくに解釈改憲で集団的自衛権の行使容認をたくらむなど、「海外で戦争する国」づくりへの暴走は、「あからさまな軍国主義復活への暴走」にほかならず、保守の人々も含めた国民との矛盾、世界との矛盾を激化させていると指摘。この暴走と正面から対決して奮闘する決意を表明しています。

 政党状況をみると、かつての日本軍国主義による侵略戦争が、日本共産党以外のすべての政党が「大政翼賛会」に合流して進められたように、国会の「翼賛化」ともいうべき事態が深刻になり、「自共対決」の政党地図が鮮明になっています。このなか、多くの国民が安倍政権の暴走に危機感、不安感を募らせ、そうした気持ちを託せる政党を模索していますが、これにこたえられるのは日本共産党をおいてほかにありません。決議は、情勢は党の躍進を強く求めているとし、今こそ開拓者精神を発揮し、国民の中に広く打ってでて、強く大きな党をつくろうとよびかけています。

 「躍進月間」の課題と目標は、(1)党大会決定の「3文献」の全党員読了をめざしつつ、少なくとも党費納入党員を超える党員の読了をやりとげる(2)すべての支部が、党大会決定にもとづき、「政策と計画」を具体化し、「車の両輪」の活動(国民運動と党建設の活動)に踏み出す(3)党員拡大を根幹にすえた党勢拡大を安定的前進の軌道にのせる―の3点です。

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 安倍政権が自民党現役幹部からさえも、そして国中から批判されるようないい加減な行政を強権的に進めている。それに自覚的に対して躍進をめざすことは、抵抗政党でもあり、国民的政党でもあり、労働者と勤労国民のための労働者政党である日本共産党にとって、当然の自覚的営為であると考える。

 党員の質量ともに実力をつけて、日本共産党が開拓者精神を発揮して「強く大きな党をつくる」ことには、異論どころか応援のエールを送りたい。私にとり気がかりなのは、日本共産党が今以上に、せめて1960~1980年代の国会議席や首長選挙の成果を獲得することは、現実的に政治変革の実効力を発揮するだろう。

 しかし、私は考える。日本共産党の実力が現在の勢力であっても、市民運動と連携して、大衆運動から尊敬を集め、「共産党がそう言うなら」と国内の政治団体や政党に影響力を与えるような視点は考えられないものだろうか。候補者ご本人は限界を超えた選挙運動に取り組んだ京都府と石川県の知事選挙を例にとろう。
 京都府も石川県も、相手候補は、自民公明民主などほぼ主要政党の連携だった。一方日本共産党が推薦する候補は、政党としては単独であった。この選挙で棄権者は、60%、70%台にも及ぶ。大雪の中の激戦となった東京都知事選は、46%の投票率だから、棄権者は54%前後である。日本共産党が強大になれば、投票率も増えるだろう。だが、なぜ多数の与党系政党VS日本共産党の構図の選挙で、多くの棄権者が多いのか。政策の協定もおろそかな政党の野合に、国民が幻滅感をもっている。
 私が強調したいのは、日本共産党の発言や政策が、多くの日本国民に届き、無党派民主主義の市民たちが、勝手連的に共産党を支持して、大きなうねりになぜならないのか。そこにある問題が解決されていかなければ、暴走する安倍政権の今後も続く無軌道な日本国憲法破壊政治にストップをかけるブレーキは結果として役には立たない。もしも簡潔に言うなら、それは「統一戦線をどうめざすか」という課題となろう。
 日本共産党第26回党大会決議において、明確にこう示されている。

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第3章 自民党政権の反動的暴走と対決し、新しい日本をめざす

(20)統一戦線の現状と展望について

 前大会以降の顕著な特徴は、この数年来、原発、TPP、消費税、憲法、米軍基地など、国政の根幹にかかわる問題で、一致点にもとづく共同――「一点共闘」が大きな広がりをもって発展していることにある。広大な無党派の人々、従来の保守といわれてきた人々との共同が各分野で大きく広がっている。文化人、知識人、宗教者が新たに共同に参加する動きも広がっている。これは未来ある画期的な動きである。

 この動きを発展させ、日本を変える統一戦線をつくりあげていくうえで、次の諸点に留意して奮闘する。

 ――わが党は、どの分野でも、一致点を大切にして「一点共闘」の発展のために誠実に力をつくすとともに、必要なときには縁の下の力持ちとして粘り強い努力を重ねてきた。この姿勢を今後も堅持することが何よりも大切である。

 ――同時に、どんな問題でも、根本的打開をはかろうとすれば、綱領が示した国政の民主的改革が必要になることを、太く明らかにする独自の活動に取り組むことが大切になってくる。この点で、革新懇運動が、草の根から国民の要求にもとづく多彩な共同の取り組みをすすめるとともに、自民党政治を根本から変える「三つの共同目標」(①日本の経済を国民本位に転換し、暮らしが豊かになる日本をめざす、②日本国憲法を生かし、自由と人権、民主主義が発展する日本をめざす、③日米安保条約をなくし、非核・非同盟・中立の平和な日本をめざす)を掲げて国民多数の合意をつくるために奮闘していることはきわめて重要であり、この運動が情勢にふさわしく大きく発展するよう力をそそぐ。革新懇 運動を支える自覚的な民主勢力が、広大な国民と結びつき、その活動と組織を前進させることが、強く期待される。

 ――統一戦線をつくるうえで、労働運動が果たすべき役割はきわめて大きい。この点で、連合指導部の特定政党支持路線と労資協調主義路線という二つの重大な問題点が、深刻な矛盾にぶつかり、変化が起こっていることは注目すべきである。消費税増税、原発推進、公務員賃金削減など悪政を推進した民主党に対する労働者の怒りが広がり、連合系労組で特定政党支持の締め付けがきかなくなりつつあり、民主党一党支持を正面から掲げられなくなった有力単産も生まれた。職場からナショナルセンターの違いを超えて要求にもとづく共同を強め、特定政党支持を打ち破り、労資協調主義を克服するたたかいをすすめる。労働組合への組織率が、労働者全体の18%まで落ち込んだ事態を重視し、党と階級 的・民主的労働運動が協力して、広大な未組織労働者の組織化に取り組む。労働者の要求にもとづく共同行動を発展させるうえで、全労連の果たす役割はいよいよ大きくなっており、その発展が強く期待される。

 ――日本共産党は、単独政権でなく、民主連合政府という連合政権をめざしている。その場合の連合の相手はどこから出てくるか。革新懇型の共同――日本共産党と無党派の人々との共同が、いよいよ本流になってくるだろう。同時に、いま「一点共闘」をともにたたかっている人々のなかからも連合の相手が生まれてくるだろう。

 そして、そうした動きともあいまって、政党戦線においても、日本共産党との連合の相手が必ず出てくると、私たちは確信するものである。そのさい、私たちの連合の対象となる相手が、従来の保守の流れも含む修正資本主義の潮流であることも、大いにありうることである。日本共産党は、社会主義・共産主義の日本を展望する党だが、当面する変革の課題は、資本主義の枠内で「二つの異常」を正し、「国民が主人公」の日本への変革をはかることにあると考えている。将来的な展望の違いがあっても、「二つの異常」を正すという当面する課題での一致がえられるならば、統一戦線をともにつくりあげることは可能であり、共同のために努力する。

 日本共産党が、あらゆる分野で国民と深く結びつき、強大な組織力をもって発展することは、新しい政治への国民的共同と統一戦線を発展させるための決定的な条件となる。そこにこそ新しい日本への扉を開く保障があることを銘記して奮闘しよう。

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 以上の叙述は、私には極めて共感を覚えるし、「一点共闘」、「縁の下の力持ちとしての粘り強い努力」、「無党派の人々との共同」、「従来の保守の流れも含む修正資本主義の潮流との連合であることもありうる」などの指摘に、賛意を表する。
 問題はこのような統一戦線の展望の中にあるわけではない。これほど明確な統一戦線の展望をもっている日本共産党が、なぜ支配体制と闘う国民各階層から共闘の支持を得ることがやや弱いのかということにある。
 日本の反動的政治風土は、日本的反共主義を根深くもっていることは、間違いあるまい。日本的反共風土とそれを悪用した反共デマゴギーは、解決すべきひとつの大きな課題である。しかし、日本共産党はどのようにすれば根深い日本的風土に根ざして反共風土を克服して、国民的な統一と協同の事業を成就しうるか。

 最初に紹介した「軍国主義復活を阻止する強大な共産党建設」は、「あらゆる分野で国民と深く結びつき、新しい政治への国民的共同と統一戦線を発展させること」と相俟ってこそ、ともに実現しうるのだと考える。このような2つの大きな戦略的課題をどのようにして両輪として機能させていくか。
 唯一の国民的規模の抵抗政党である日本共産党が、自らの政策を実現する上で、そのことは運動の過程において絶えず振り返りを求められていよう。そのような政治的運動こそ、日本共産党が国民から道義的政治道徳的にも尊敬を得る要点ではあるまいか。(2014年5月17日未明)

予研=感染研裁判闘争と「人類生存の思想」 2013/12/28 櫻井智志

2015-01-18 20:37:18 | 言論対話原稿所収
予研=感染研裁判闘争と「人類生存の思想」

2013/12/28 櫻井智志

はじめに
 週刊新潮一九九六年十月三日号は、特集として『人体実験七三一部隊幹部が設立した「ミドリ十字」の黒い歴史』を伝えている。「葦牙」第二三号で、宮地健一氏が森村誠一氏と下里正樹氏との共同研究と、しんぶん赤旗紙上での連載中止の問題を詳説されている。そこで、七三一部隊についての労作『悪魔の飽食』シリーズについても紹介されている。森村誠一という小説家とすぐれたジャーナリト下里正樹氏とがいなかったなら、あれほど七三一部隊の反人間的な実態が広く国民に知らされることもなかったろう。
 週刊新潮の誌上で、匿名の記者は、「元社長、前社長、現社長の三人が逮捕された製薬会社ミドリ十字を設立したのは、人体実験で有名な七三一部隊の元幹部たちだったし、同社の役員が帝銀事件の容疑者だったこともあり、黒い歴史が連綿と続いた会社なのだ」と批判している。十年以上も、ともすれば体制側の御用記事や反体制勢力を揶揄する記事の多い同誌であるが、宮本顕治氏の「網走の覚書」の初出は一九七〇年代の週刊新潮であった。四ページにわたるその記事では、ミドリ十字は昭和二五年に、内藤良一氏、二木秀雄氏、宮本光一氏が興した「日本ブラッド・バンク」が社名を後に変更したものである。内藤良一氏は、京都帝大医学部と陸軍軍医学校卒で、表向きの経歴はアメリカやドイツに留 学した軍医学校教官だが、実際は日本の細菌戦争研究の第一人者石井四郎軍医中将に見出され、軍医中佐として七三一部隊を切り回した人物であった。当時の内藤氏の本拠は、石井中将が作った早稲田の陸軍軍医学校内の防疫研究室で、彼がそこの事実上の指揮官だった。石井中将は満州のハルピンの関東軍防疫給水部(七三一部隊の正式名称)で、捕虜を使った人体実験を行い続けた。同時に支那派遣軍や南方派遣軍にも防疫給水部を作って細菌戦争の準備を進めた。そのアジアにまたがる防疫給水本部が早稲田の防疫研究室で、内藤氏はその秘密の本部組織の運営者を任されていた。

1  なぜ芝田進午氏は予研=感染研と闘ったのか
 芝田進午は、国立予防衛生研究所の移転強行と闘った。略称・予研は、名前を改めて国立感染症研究所(略称・感染研)となってからは。「予研=感染研」の危険なままの実験強行を差し止めする運動を展開し、裁判闘争として闘った。「予研=感染研裁判」とは以上のような経緯がある。予研は、住宅地で人口密集地、近くに早稲田大学などの文教施設もある東京都新宿区戸山に移転を強行した。当初芝田氏らは、住宅地に高度の実験施設をつくることに環境権の侵害として反対していた。書名を集め、意思を明確にし反対闘争を積み重ねてきた。機動隊を導入して、移転を強行する予研=感染研にしだいになぜそれほどまでに住民の意向を無視するのかを調べた芝田氏らの反対運動は、立地・実験差し止め 訴訟の裁判をおこし、裁判闘争を柱に長期的な闘争を続けていった。地元の住民をはじめ、早稲田大学教職員組合や大学当局、多くの知識人、労働組合、住民団体などが支援を続けている。この予研=感染研裁判原告の会の代表として、一貫して反対運動の中心に立ってきたのが、法政大学、広島大学の教授を歴任した哲学者であり、社会学者である芝田進午氏である。この運動を芝田氏とともに担った武藤徹氏(数学者、芝田氏亡き後は裁判の会会長を引き継がれた)は、『国立感染研は安全か―バイオハザード裁判の予見するもの』(国立感染症研究所の安全性を考える会編著 緑風出版二〇一〇年初版)の中で「芝田進午という人」という小見出しで以下のように芝田氏の運動家としての様子を綴っている。

 予研=感染研裁判は、芝田進午なくしては考えられません。その厚い人脈が、この裁判を支えてきたからです。/予研=感染研裁判に関して言えば、「支援する会」で裁判を支え続けた浦田賢治は、芝田とともに東京唯物論研究会の再建に奔走した間柄であり、日本共産党副委員長として一貫してこの裁判にかかわってきた上田耕一郎もその一人です。/
予研の主任研究官でありながら、予研の危険性を歯に衣着せずに語った新井秀雄も、芝田の謙虚で穏和な人柄にうたれたといっています。戦う哲学者と、温顔とをつなぐものは何でしょうか。その秘密は、実は福沢諭吉の『学問のすすめ』にありました。福沢は、その中で「顔色容貌を快くして、一見、直ちに人に厭わるること無きを要す。・・・」と書いています。「以来、つとめて笑顔をたもち、ジョークを交えながら論争するようにしている。笑顔をたもつだけで、心に余裕がうまれ、頭の回転が速くなる」と芝田は書いています(『人生と思想』*櫻井注―芝田進午著青木書店一九八九年)。/残念ながら、芝田は、胆管がんのため、二〇〇一年三月一四日、地裁の判決を前に亡くなりました。奇しくも 、マルクスの命日でした。

 なぜ芝田氏は、予研=感染研と闘ったのか。大きく二つに分けて言えよう。
戦後四大公害病と呼ばれた水俣病事件、富山カドミウム汚染によるイタイイタイ病事件,新潟水俣病事件。さらに四日市公害事件(四日市喘息)など。これらの公害病に関わる裁判では、すでに健康破壊等の被害が発生した後に被害者と遺族が加害企業・政府の責任と金銭的賠償を要求する訴訟となった。芝田氏は、予防は治療と賠償にまさるものと考え、公害裁判で肝要なことは「予防の法理」であり、それこそが公害裁判の本来の在り方にほかならないと力説する。ところが、予研=感染研当局の立場は、被害が判明すれば賠償するという「賠償の法理」であった。さらにこれまでの公害裁判は、「化学災害」(ケミカル ハザード)であったが、一九七〇年代から人類は「バイオ時代」に突入し、「生物災害」(バイオハザード)の危険が警告されるようになってきた。
 生物災害を引き起こす病原体・遺伝子組み換え実験施設では組み替え微生物・生物産出毒素・DNA・寄生虫・有害昆虫などを保管・培養・実験しているので、バイオ施設が生物災害の源泉になる危険性が高い。バイオテクノロジーによって、未知の病原微生物が出現する可能性があり、その被害の範囲は、地域にとどまらず、全国民、全人類に拡大する危険がある。病原体と生物災害の間の因果性を論証することは、化学物質と化学災害 間の因果性に比べてはるかに困難である。それゆえ、生物災害に人類ができることは「予防の原則」を徹底させることである。
 感染研が強制移転した新宿区戸山は、感染研の周囲は住宅や学園、公共施設ばかりである。諸外国では、このような実験施設は周囲がきわめて人家とは離れた距離や空間を設定して建設・設置されている。まさに住民にとって、毎日が危険にさらされ続けている状態である。しかも感染研の周囲の住民のがん罹患率は高いことも立証されている。このような環境上重大な問題をはらむ予研=感染研に芝田氏らが裁判闘争にたちあがったのは理にかなっていると言えよう。

 もうひとつ重大な問題があきらかになった。
反対闘争を通じて、予研=感染研の体質そのものに七三一部隊との関連があることが徐々に明らかになっていった。七三一部隊の生き残り幹部が、歴代の予研の管理職を務めていた。敗戦は、日本の天皇制そのものの護持と引き替えに重要な国家主権に属する事柄をアメリカ占領軍GHQに引き渡した。そのひとつは、石井七三一部隊の生体実験に基づく化学兵器の重要機密と石井部隊そのものの存在の隠蔽である。また、広島や長崎に落とされた核兵器による被曝者をなんら治療行為を施さずに観察分類の対象としてモルモット扱いしたアメリカ軍ABCCの実態調査も、被曝治療のためではなく、落下した核兵器の成果を効果的に核戦略に利用するために使われた。ABCCの日本側組織が、予研であったの だ。予研=感染研反対運動によって、戦前の軍事機密が、アメリカ軍の庇護のもとに歴史の水面下で維持され続け、ついに日本帝国主義的復活の現段階において、暴露された。

2  バイオハザードとの闘争
 先に紹介した武藤徹氏は、芝田氏が予研=感染研裁判闘争に関わって、『生命を守る方法』(晩聲社一九八八年)『論争生物災害を防ぐ方法』(晩聲社一九八九年)『バイオ裁判』(晩聲社一九九三年)『バイオハザード裁判』(緑風出版二〇〇一年)を精力的に執筆したことを紹介されている。武藤氏によれば、総ページ数は一六四五ページにのぼる。芝田氏がご逝去されてからも、一緒に裁判闘争を闘った方々は、東京高裁、最高裁と上告し長期にわたる裁判闘争を闘い続けた。さらに芝田氏亡き後も先ほど紹介させていただいた『国立感染研は安全か―バイオハザード裁判の予見するもの』(緑風出版二〇一〇年全三〇五ページ)を刊行されている。執筆者のお名前を掲載させていただくと、鈴木武仁 、伊東一郎、武藤徹、島田修一、川本幸立、新井秀雄、本田孝義、長島功、本庄重男の九名の皆様方である。

 芝田氏は、予研=感染研との闘争によって、「戦後のわが国では、安全性の科学そのものが確立されてこなかった」ことを痛感したと述べている。このことは、芝田氏が亡くなられてかなり経つ二〇一一年三月一一日に起きた東日本大震災とそれに伴って発生した福島第一原発事故をめぐる菅・野田民主党政権、安倍自公政権の対応。原発に関わる専門機関などの対応しきれていない対応ぶりを見ていると、芝田氏の「安全性の科学」の問題は、高木仁三郎氏や武谷三男氏ら科学者が戦後訴えてきたのにもかかわらず、政府や専門機関によって充分に取り組まれてこなかったことの問題性を浮き彫りにしている。芝田氏は、武谷三男氏の『安全性の考え方』(岩波新書)を推奨している。執筆に先立つ三十年ほ ど前に当時の公害反対闘争の教訓を踏まえて書かれたもので、その内容は高く評価されると芝田氏は述べている。

 芝田氏は、新しい病原菌が相次いで出ていることに危機感を覚えていた。戦前の指定伝染病だった猩紅熱が、抗生物質が効くので対応がゆるやかになっていた。ところが最近劇症の溶血連鎖球菌というバクテリアに変質したものが出てきている。「溶連菌感染症」という疾病が子どもたちに広がり、ひどい場合は死亡にいたるケースもある。大腸菌のO―157菌という新たな細菌が出現している。B型肝炎も普通のものと遺伝子が一つだけ違う劇症のものが出現している。病院内感染症をひきおこすMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)も全国どこの病院でも大問題となっている。こういう病原体がなぜ出てくるのか。抗生物質によるもの、変異を起こさせる物質によるもの、遺伝子組み換えによるも の、原因はいくつか考えられるが、よくわかっていない。
 芝田氏は、生物災害を研究すると同時に予研そのものを研究してきた。予研は七三一部隊に協力していた医学者を多数集めて、しかも米軍の命令でできたものであり、その隠れた目的は、ABCCへの協力のほかに、もうひとつ米軍監視下で七三一部隊の研究を継続することであった。芝田氏らは文献的にも予研の初期の年報からチェックし続けた。相模原にあった米軍四〇六部隊がアメリカのフォートデトリックにある生物兵器の研究センターの支部でアジアにおける出張部隊と考えられている。その指揮監督のために一九六〇年代の中頃までやってきたことも明らかにされている。
 そのような体質の医学者が多数集められたことによって、日本の戦後の予防接種行政、予防衛生行政は非常に歪められたものとなった。
 芝田進午氏の研究は、芝田氏ひとりにとどまらない。裁判闘争における予研=感染研裁判原告の会、予研=感染研裁判弁護団、予研=感染研裁判を支援する会が裁判闘争に取り組んできたし、バイオハザード予防市民センター、国立感染症研究所の安全性を考える会など時期的に名称が重複するものもあるが、これらの団体は日本の生物災害の解明に向けて、長期にわたって継続的系統的実践的に、バイエハザードとの闘争に貢献されてきた。

3 人類生存のための哲学
 芝田進午氏の最後の遺著『実践的唯物論への道  人類生存の哲学を求めて』(青木書店二〇〇一年)は、三階徹氏・平川俊彦氏・平田哲男氏の三人の知識人が、芝田先生と対話をかわし、それを書き留めながらまとめた貴重な遺作である。その最終章の最終節は、『21 「人類生存のための哲学」の提唱』と名付けられている。芝田進午氏が構想していた領域を私の主観で歪めないために、小見出しを列挙させていただく。小見出しごとに若干のコメントをつけることとした。ナンバリングは私が便宜的に付けた。行数明示はどこに重点が置かれているかの参考になればと思ってのことである。

・① 百科全書の思想  七十五行
 芝田にとって、戦前の唯物論研究会を組織した戸坂潤は、尊敬する先達であった。戦前の『唯物論全書』の復刻版三〇巻を編集して出し、各巻の解題を集め、『唯物論全書と現代』を芝田、鈴木正、祖父江昭二の共編で出し、自らは序論に「百科全書思想の人類史的意義」を書いた。ソ連が解体する以前の一九九〇年だった。芝田は、ソ連型唯物論には、自然論、自然史の思想、実践的唯物論、労働論、疎外論、そして人間論・人格論・個人論、大工業論、科学革命論、技術革命論、民主主義論、人権論、先進国革命論、世界革命論等々の豊富な遺産が無視されてきたという。さらに、マルクスの出版の自由論や民族自決論に反する理論と実際をソ連がおこなってきたともいう。ただし、芝田はソ連をすべて否 定はしていない。ソ連の歴史的形成と存在は世界の、とくに発展途上国の変革に影響を及ぼしたかポジィテイブな面を評価すべきとしつつ、問題点を冷静に把握する必要を述べている。芝田は戸坂の「唯物論研究」「唯物論全書」「三笠全書」などの百科全書の思想的展開に感銘する。モレリ、ベール、ベーコン、ロック、ライプニッツ、ディドロ、ダランベール、ヘーゲル、サン=シモン、マルクス、エンゲルスに連なる系譜は、人類はキリスト教のために細分状態に陥れられるが、十八世紀は人類を細分と個別から抜け出させて総合し集中した世紀である。十八世紀は百科全書の時代である。エンゲルスのこの言葉を芝田は的確に把握した。戸坂潤は第一に自然史的な世界観、第二に実践的唯物論、第三に諸科学 がひとつの科学として位置づけている。芝田は戸坂の貢献を意義づけ、核時代、バイオの時代、環境危機の時代にはますます百科全書の思想でなければ、人類の生存はかちとれない、こう芝田はむすぶ。
「今日、論壇・学界ではマルクス主義は出番が少ないけれども、あらためて自信をもって大いに普及してゆく必要があるのではないかと思っています。その意味で戸坂のこの仕事を継承してゆく必要があります」。
・② 自身の「人間性と人格の形成」 五十九行
・③ 研究組織での経験について 三十三行
・④ 唯物論研究の現状と課題 六十四行
・⑤ 学会組織とのかかわり 十九行
・⑥ 闘争が趣味 八行
・⑦ 海外での出版 十二行
・⑧ 時代認識の転換 百五十五行

 芝田にとって、時代認識の転換を迫られたことは、五度あった。
一度目  一九六七年にベトナムに行ってアメリカ帝国主義をはじめとする帝国主義がこんなにも残虐なものかと、身にしみて認識したこと。
二度目  一九七〇年から二年間、東ドイツに留学し、いわゆる社会主義陣営が西側に追いつき追い越すことは不可能だと認識したこと。
三度目  芝田氏にとつて、重要な時代認識の変化は一九七七年に広島で開かれたNGOのヒロシマ・ナガサキの原爆の実相と後遺症のシンポジウムに出て、バーバラ・レイノルズさんに出会ったこと。彼女はHIBAKUSYA・ヒバクシャと表現し、国際的に通用させなければいけないと述べた。そこにいた別のNGOの中心的な人物の一人が「原爆投下のとき私は数百キロのところにいたが、私もHIBAKUSYAだ」と述べた。
四度目  一九八七年に重要な転機があった。バイオ・テクノロジーの問題、予研との闘争である。
五度目  一九八九年の東ドイツの崩壊、一九九一年のソ連の崩壊がどういう時代なのか、たしかに新しい時代になったということ。

 これらの五点を踏まえると、芝田は、帝国主義の残虐さに幻想をもっていない。さらに東ドイツなどの様子を見て、社会主義国の問題点をはっきりと認識していた。さらに核廃絶の問題において、社会主義か資本主義かではなく「核時代」という歴史認識において、社会主義も資本主義の国家ともに核廃絶の共同のテーブルにつく時代と認識していた。さらにバイオテクノロジーの問題は、新たな困難な課題を人類に突きつけており、事実の課題として人類は解決のための知恵を尽くさなければならないと主張している。また東欧やソ連の崩壊を事実として私たちの課題として引き受ける主体の決意をこめている。

結びに
 芝田進午における「予研=感染研」裁判闘争は、バイオハザードの闘争であった。同時に芝田にとって、何回かの時代認識の転換を認識する中で、自らの実践的唯物論哲学をさらに発展させる必要に迫られた。
 芝田は、「核時代」という歴史認識を最大の特質と考えていた。さらに「科学=技術革命」の一環としての「情報社会論」や予研=感染研と闘うバイオハザードの闘いについても、今までのソ連型哲学では解決し得ないことを見抜き、日本の戦前からの戸坂潤らの唯物論研究会の百科全書的思想や実践的唯物論哲学の発展を心がけてきた。
 芝田は実践的唯物論哲学も「核時代」認識も、実践のなかでより精緻なものとして実質的に深めていった。
 その過程で、社会主義か資本主義か、唯物論か観念論かという問題の立て方の不毛を新たな地平に発展せた。それが、「人類生存の哲学への希求」である。ベトナム戦争のアメリカによる北爆攻撃に抗議して焼身自死をとげたアリス=ハーズは敬虔なクェーカー教徒だった。核廃絶に取り組む闘いの中でも、感染研裁判でも新井秀雄さんのような敬虔なクリスチャンが国立感染症研究所の主任研究員という要職にありながら、自らに注ぐ不利益や処分に耐えて、人類のためにならないこととして毅然と告発した。唯物論者か観念論者かというふうな裁断ではなく、神を信ずるものもそうでないものも、核時代におけるバイオハザードに闘うためには、まさに<人類生存の思想>を最大の課題として、芝田は到達 していった。



急速に反動化を強める安倍自公政権にどう対応すべきか 2014/5/4 櫻井智志

2015-01-18 20:34:32 | 言論対話原稿所収
急速に反動化を強める安倍自公政権にどう対応すべきか

2014/5/4 櫻井智志

 憲法制定から半世紀以上たった。定着していた平和憲法が、安倍自公政権によって相次いで変質化させられようとしている。公明党は自民党の暴走を制止するかのような言動を表明し、それに期待をもったことも私にはあったが、とんでもない。すべての反動立法と選挙で、公明党が一度として自民党と対立した候補を立てたこともなければ、土壇場で制止したこともない。公明党・創価学会とは、平和や福祉の装いで国民の目くらまし効果を発揮する補完勢力でしかない。

 日刊ゲンダイは、このようなニュースを憲法記念日に伝えた。

===========================  細川護煕・小泉純一郎の元首相コンビが進める「社団法人・自然エネルギー推進会議」が、GW明けの7日に発足する。当日はフォーラムの形で細川と小泉が挨拶するほか、発起人に名を連ねる著名人のパネルディスカッションが予定されている。その後は全国で“脱原発”のタウンミーティングを企画しているというが、注目されるのは何と言っても「選挙」だ。「地方選挙や国政選挙で独自候補や野党などと連携した統一候補を立てて勝利し、それをきっかけに野党を再編して安倍自民に対抗する勢力をつくっていくのが最大の目標です」(細川周辺)
 まず手始めに取りかかるのが11月の福島県知事選。福島第1原発のお膝元だけに、原発政策を巡って全国注視の選挙となる。ここに推進会議として候補を擁立する計画で、すでに情報収集に入っているという。来年4月の統一地方選でも、知事や市町村長らの首長選挙で独自か統一候補の擁立を図るが、その勝利のウルトラCが小沢一郎生活の党代表との連携だ。
「細川さんは小沢ブレーンの平野貞夫元参議院議員とずっと連絡を取り合ってきた。推進会議ができたら、小沢さんと会って選挙の話をしようと日程を調整しています」(前出の細川周辺)
■情勢や人間関係もすべて把握
 生活の党は「原発ゼロ」だから連携は自然だが、なぜ小沢なのかには、別の理由があるらしい。
「前回の統一選の準備が始まった4年前は、小沢さんは民主党幹事長だったので、全国の首長選挙の細かな情勢や人間関係などをすべて把握しているのです。“小沢選挙”では、独自の世論調査などで選挙の膨大なデータを集めても、やたら公表するのではなく必要な人にだけ見せて<数字がこうだからもっと頑張れ>とやる。表に出していないから誰もそんなデータがあることすら知らないが、今もそのデータを手元に持っている。それで、細川・小泉コンビが選挙を制するため、小沢さんと連携したいということです」(政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏)
 小沢も最近会った「生活」の議員に、「今年中に必ず大きな動きがある。自分は何でもやる」と話したという。“一強”と浮かれている間に、安倍自民は地方から崩されることになる。
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 小泉改革の酷さと細川金権疑惑とから言うと、それほど期待はできない。しかし、安倍自公政権のあまりの超特急の暴走は、まだ小泉・細川のほうが・・・という気持ちになる。小澤一郎氏に私は民主党時代に期待していた。金権政治家と言われても、ダーティな鳩と佐高信氏が評価していたこともよく覚えている。
小澤氏が期待されながら、未来の党、生活の党とじり貧な選挙結果を見てきたせいか、次の選挙でも期待はしていない。それでも、安倍政権に比べれば、保守反動勢力の中で、日本維新の会やみんなの党、結いの党と比べると、これらの保守勢力は今までにその限界がためされ済みである。どうなるかは、日本共産党と市民運動勢力を最も期待しているけれど、福島県知事選、沖縄県知事選との関わりで、東京都知事選、京都府知事選で小泉・細川、小沢一郎諸氏の効果は薄かった。今回はどうか。反安倍勢力を分断する結果にしかならないというケースもある。政治力学はそうとう実態を見据えないと、あいまいな楽観はできない。

 東京都知事選で細川氏と闘った宇都宮健児氏は、都知事選後にも政治運動を続けている。宇都宮氏の護憲と平和を基調とする弁護士としての信念を堅持している。しかし、都知事選の結果は、安倍総理に大きく自信をつけさせ、それ以降の憲法の空洞化、武器や原発の輸出、国民の生活権の破壊政策など目に余る暴走政治は、世界中の懸念を増加させている。政治にもしもという仮定はあり得ないが、都知事選で細川氏が勝利しても桝添要一氏の都政とあまり変わらぬ結果であったかもしれないけれど、安倍総理に与えた打撃はそうとうなものであったろう。自民党町村派の先輩が小泉氏である。安倍総理は、マスコミに脱原発のアピールを一切封じ込もうとした。細川候補を徹底してつぶすために、マスコ ミを駆使した。新聞、週刊誌、テレビと安倍総理が怖れたのは、宇都宮都政の実現よりも、細川都知事実現を徹底して封じ込もうとした。そして細川氏は宇都宮氏にも下の順位だった。けれどもあれだけ牽制しつくしても、細川氏は宇都宮氏とほぼ同じ90万票台に達した。

 安倍政権の集団的自衛権の暴走を阻止する上で、小泉・細川、小沢三氏がなんらかの現実的な対策をもち、彼らが日本共産党など左翼政党や市民運動と提携する道はあるのか?ずばり言えばないだろう。両者とも提携など眼中にあるまい。よく共産党が統一一本化しないと非難されるが、細川氏らもそのような姿勢は皆無なのが実態である。

 このまま行くと、かりに小泉・細川・小沢三氏の提携で統一した候補を立てて、福島県知事選や沖縄県知事選を戦うことはあっても、市民運動、社共政党らとも提携しなければ、おそらく自公政権の押す候補に勝つことはできない。

 沖縄市長選挙では、保守系の無所属新人で前自民党県議の桑江朝千夫氏=自民、公明推薦、そうぞう、民主、維新支持=が革新・中道系の無所属新人で前副市長の島袋芳敬氏=社民、共産、社大、生活推薦=に2189票差を付けて当選した。鹿児島県知事選では、金子 万寿夫氏自民(公明推薦)が打越明司氏 無所属(民主、日本維新、結い、生活の党推薦)を破り当選した。日本共産党の三島照氏は、山本太郎氏が代表の新党ひとりひとりの有川美子氏にも当選ランクひとつ下の第四位であった。

 このような事実を見ると、小泉・細川・小沢の三氏が提携しても、自公候補、共産党候補と三極化して、結局は自公系候補が福島で勝つことがありうると予想される。深刻なのはじりじりと革新勢力を保守勢力が侵食し続けている沖縄県の知事選である。小泉・細川・小沢三氏が提携して候補者を出すなら、生活の党は、革新勢力にはつかない。自公、革新系、小泉・細川・小沢系候補の三極化でやはり自公政権候補の優位さが出てこよう。

 問題はこのような構図にならないで、選挙が活性化して安倍政権系候補に「ノー!!」と結果的にも示すことのできる選挙の構図である。
安倍政権勢力に対して有効な対応策を構築して闘う。そのためには、国民的な闘いのうねりが形成されなければ、実現は難しい。当面、安倍暴走政治に数々の護憲や反原発などの集会で、在野勢力はよく努力している。その願いを現実政治に生かすための海図をいかに描いていくのか。大きく問われている。

日本のリベラル層の怠慢。何故ソーシャル・メディアを活用できないのか。

2015-01-18 12:21:21 | 転載と私見
崎享のつぶやき
日本のリベラル層の怠慢。何故ソーシャル・メディアを活用できないのか。
2015-01-18 07:483




 今日、日本の政治をおかしくしている最大の要因はマスメディアの権力に対する隷属である。国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(RSF)が2014年、「報道の自由」の国際比較で前年の五十三位から五十九位になったと報じた。2014年下落した最大の理由は原発関連で必要な報道がほとんどなされていない事、そして秘密保護法である。
 

 「報道の自由」度が五十九位になったという事は、そこまで日本の民主主義が侵されていることを意味する。日本のリベラル層もこの点に対し、異論は挟まない。「そうだろう」と納得する。

 問題はここからである。日本の大手マスコミが酷ければ、当然、代替のニュース源を認めなければならない。それが今日、ソーシャル・メディアである。

 中東、ロシア、中国等その国の新聞、テレビが信用できない国に於いては、ソーシャル・メディアが発達している、これが抗議運動の起爆剤になっている。

 日本はどうであろうか。ソーシャル・メディアはネトウヨの武器となっている。安倍首相などの武器となっている。対して、リベラル層の利用は本当に低い。

 講演で聞いてもツイッターの利用者は5%にも達しない。ツイッターは情報入手だけではなくて、リツイートの形で、情報拡散に積極的に関与する、

 今、我々は民主主義を与えられたものとして維持するという姿勢以上に、積極的に守る姿勢が必要だ。その基礎は情報にある。

 そうであれば、リベラル層はソーシャル・メディアの活用を行い、積極的に民主主義の保持に努力をすべきだ。日本のリベラル層の弱点は「自分が正しければよい」としている事である。「連帯してこの流れを止めなければならない」との意識が薄弱である。
 
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私見
 「ソーシャル・メディアはネトウヨの武器となっている」。
この指摘をかみしめたい。その点で日本共産党の見識に敬意を表する。
ニコニコ動画を使った「とことん共産党」という娯楽的要素も加味したネット対談番組は、一般の商業テレビ放送でも通用する水準である。
 日本共産党の都議選、参院選、総選挙とあいつぐ躍進には、いくつかの要因があるが、そのひとつに間違いなくソーシャル・メディアの有機的利用がある。また、自民党も全国的にピラミッド型に「ネット・サポーターズ」を組織して生かすとともに、国政選挙などでも対策室チームを専門的につくり対応していることも見逃せない。
 それだけに、安倍自公政権もソーシャル・メディアを統制する裏工作や対応策を考えていることも油断せずに見守る必要がある。