日本共産党の英断と「国民的統一戦線」の可視化
櫻井 智志
志位和夫日本共産党委員長が、二つの判断をおこなった。それは英断と呼んでよいと私は考える。
二つの判断のひとつは、安保法制を廃止して戦争立法を許さないために、他の政党、団体、個人など国内各層へ結集を呼び掛け参院選では広範な共同のテーブルにつくことで、仮称「国民連合政府」をめざそうという判断である。
その時印象深かったのは、志位氏の発言である。氏は、「これは短期に結果を求めて、成功しなければ敗北、というようなものでなく、ある程度時間をかけた中期的な展望を考えています」と述べられた。このことは今後の方向性に期待を感じさせるものだった。
この提案は、社民党や新社会党のような比較的近い立場の政党とともに、小沢一郎氏と山本太郎氏が共同代表の生活党、緑の党などにも阿吽の呼吸で共感を得た。しかし、民主党では代表の岡田克也氏は、志位氏の提案に好意的に耳を傾けて、共闘については民主党にもちかえり党内の合意が成立するかどうか吟味していた。やはり前原元代表や細野豪志議員、民主党政権で官房長官を務めた枝野議員らは、共産党との共闘に難を示した。自民党首脳の中でも京都選出の谷垣氏は、放送記者の前で志位提案に水をかけるような否定的な発言をテレビが報じた。
このような中だるみをしばらく静止していた志位氏が、次の大胆な政策を発表した。打ち出した内容は、参議院一人区での共産党候補を取り下げて、自公おおさか維新らの与党及び与党候補の政党に対決する政党を支持して当選させる勇断である。
今まで地道で継続的に地域に根ざした選挙運動を準備していた予定候補の皆さんにとっては、党中央委員会の決定ではあるけれど、様々な複雑な心象をいだいたことだろう。それだけに、中央と全国各地域の予定候補の重要な決断での一致には、外側から見ていても深く尊敬の念を抱く。
統一・共同候補樹立のために熊本県参院選選挙区候補として、自らが党の方針から候補を降りたのが芋生よしやさん。このような事実をどう見るか。私は日本共産党以外の国民の中にある「民主集中制」批判について、官僚制や権力集中制などの「疎外された官僚集中制」からの影響はありうると思う。対立物の相互浸透は、論理的にもあり得る。けれど、今回の参院選をめぐる日本共産党の鮮やかな決断と決定との敏速な現実化は、「民主集中制 」の典型的な意義である。私は全国の地方の参院選候補について、一人区の候補を応援したいと考えてきた。今朝の東京新聞の記事によると、具体的例を新聞社の調査に基づきあげている。共産党鳥取委員会は、二県でひとりの選挙区となった鳥取・島根の遠藤秀和さんの擁立を取り下げ、民主・社民推薦の福島浩彦候補を支援することで、福島氏と25日に協議すると明らかにしている。他にも二県の一人区候補として、三ヶ尻亮子さんも徳島・高知の各地を地道に運動を進め、私はフェィスブックの三ヶ尻さんのブログを拝見するたびに力量のある政治家と考えている。自分が一人区の予定候補者だったら、と思うと、今後の政治家としての生涯の見通しと考え合わせ、正直寂しさとつらさも噛みしめる場面があることを想像する。幸い熊本選挙区のあべ広美さん、沖縄選挙区のイハ洋一さんは、国民の幸福のために実践し続けた経歴と力量を備えている。
一人区での候補見送りとは、現地で考えるならば、身を切る辛さをもあろうし、候補を立てないことで共産党の得票数、得票率でも今後不安な要素もはらんでいる。
けれど、それらを承知しつつ、志位委員長が一人区取り下げと決断したことは、大きく政界に激震を与えた。民主党と維新の党は、野党五党共闘をも承けて、政党として一本化する交渉に入った。志位さんの提案は、国民全体に政治がよくなる可能性の確率を高めて、活性化させている。テレビ朝日系列の「報道ステーション」はもうすぐ三月降板まで間もないが、古館伊知郎キャスターと番組スタッフは、この志位提案と民主・維新の両党統一とを、安倍政権の権力に対峙するという視覚から報道した。期待しているTBS「news23」も番組中で丁寧に取り上げていた。紹介そのものは、与野党に配慮したバランス的な番組内容のように思えた。ただ、岸井キャスターは、これらの共闘が安保法制・戦争法案の廃止をしっかりと実現するべきと述べて健在ぶりを示した。
なぜ日本共産党は、一人区の候補を取り下げたか。今まで、選挙区で共産党が立候補して、野党併立で自公与党を利している、という共産党批判はあった。けれど、共産党は全選挙区に候補擁立を行ってきた。実は同じ問題のように見えても、背景の事情は大きく異なる。
どういうことか?
前は日本共産党が、どのような地域でも憲法と平和・真の福祉をアピールして、護憲勢力を拡大する必要があった。
ところが、今の日本の国内は、安倍政権の強権ぶりと閣僚・議員のあまりに国会議員として論議する以前の政治家としての質の劣化が甚だしい。同時に、福島県民をはじめ東日本大地震災害と連動した福島原発事故という未曾有の災害の中から全国的に市民運動が立ち上がった。中でも反原発連合など原発問題にとり組む市民運動は、原発、戦争法案、立憲主義問題と、大いに力をつけて、国民をリードし続けている。そのことにほぼ正確に対応しているのが、社民党と日本共産党、緑の党である。さらに「生活の党と山本太郎となかまたち」は早くから政党の共闘を小沢一郎氏が言い続けてきた。
現在の日本共産党は、自党の議員を増やすことを大切にしていると同時に、かつては日本共産党が前衛として国民をリードしてきた。けれども日本共産党の政策や理念を共通のものとして共有化できる。志位委員長はSEALDsの奥田愛希さんら若者たちの発想と実践力をしっかりと認め、将来を期待している。
さらに、沖縄県で翁長雄志氏が、沖縄では保革ともに「イデオロギーよりアイディンテイティ」「オール沖縄」を唱えて、そのことが本土よりもさらに過酷な米軍基地問題を抱えながら、全県民的な「沖縄を幸福にしない」激震の震源に向けて的を射ている。
まとめよう。
反原発来の市民運動と沖縄の県民運動。この二つの大きな実践に大きな助っ人が現れた。たえず誠実に同行し続けた日本共産党ゆえに、今までの全選挙区立候補と同じ目的が、さらに現実的な要素を踏まえて、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」「安全保障関連法に反対する学者の会」「安保関連法に反対するママの会」「立憲デモクラシーの会」「SEALDs」が総結集して 『安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合』樹立に至った。『市民連合』と提携しつつ、同時に政党では五野党として結集して、安倍政権を打倒できる展望が拓けてきた。
以上のような情勢把握と対抗戦略をうちだしたのが、志位和夫日本共産党委員長のビッグ・サプライズなのであろう。
櫻井 智志
志位和夫日本共産党委員長が、二つの判断をおこなった。それは英断と呼んでよいと私は考える。
二つの判断のひとつは、安保法制を廃止して戦争立法を許さないために、他の政党、団体、個人など国内各層へ結集を呼び掛け参院選では広範な共同のテーブルにつくことで、仮称「国民連合政府」をめざそうという判断である。
その時印象深かったのは、志位氏の発言である。氏は、「これは短期に結果を求めて、成功しなければ敗北、というようなものでなく、ある程度時間をかけた中期的な展望を考えています」と述べられた。このことは今後の方向性に期待を感じさせるものだった。
この提案は、社民党や新社会党のような比較的近い立場の政党とともに、小沢一郎氏と山本太郎氏が共同代表の生活党、緑の党などにも阿吽の呼吸で共感を得た。しかし、民主党では代表の岡田克也氏は、志位氏の提案に好意的に耳を傾けて、共闘については民主党にもちかえり党内の合意が成立するかどうか吟味していた。やはり前原元代表や細野豪志議員、民主党政権で官房長官を務めた枝野議員らは、共産党との共闘に難を示した。自民党首脳の中でも京都選出の谷垣氏は、放送記者の前で志位提案に水をかけるような否定的な発言をテレビが報じた。
このような中だるみをしばらく静止していた志位氏が、次の大胆な政策を発表した。打ち出した内容は、参議院一人区での共産党候補を取り下げて、自公おおさか維新らの与党及び与党候補の政党に対決する政党を支持して当選させる勇断である。
今まで地道で継続的に地域に根ざした選挙運動を準備していた予定候補の皆さんにとっては、党中央委員会の決定ではあるけれど、様々な複雑な心象をいだいたことだろう。それだけに、中央と全国各地域の予定候補の重要な決断での一致には、外側から見ていても深く尊敬の念を抱く。
統一・共同候補樹立のために熊本県参院選選挙区候補として、自らが党の方針から候補を降りたのが芋生よしやさん。このような事実をどう見るか。私は日本共産党以外の国民の中にある「民主集中制」批判について、官僚制や権力集中制などの「疎外された官僚集中制」からの影響はありうると思う。対立物の相互浸透は、論理的にもあり得る。けれど、今回の参院選をめぐる日本共産党の鮮やかな決断と決定との敏速な現実化は、「民主集中制 」の典型的な意義である。私は全国の地方の参院選候補について、一人区の候補を応援したいと考えてきた。今朝の東京新聞の記事によると、具体的例を新聞社の調査に基づきあげている。共産党鳥取委員会は、二県でひとりの選挙区となった鳥取・島根の遠藤秀和さんの擁立を取り下げ、民主・社民推薦の福島浩彦候補を支援することで、福島氏と25日に協議すると明らかにしている。他にも二県の一人区候補として、三ヶ尻亮子さんも徳島・高知の各地を地道に運動を進め、私はフェィスブックの三ヶ尻さんのブログを拝見するたびに力量のある政治家と考えている。自分が一人区の予定候補者だったら、と思うと、今後の政治家としての生涯の見通しと考え合わせ、正直寂しさとつらさも噛みしめる場面があることを想像する。幸い熊本選挙区のあべ広美さん、沖縄選挙区のイハ洋一さんは、国民の幸福のために実践し続けた経歴と力量を備えている。
一人区での候補見送りとは、現地で考えるならば、身を切る辛さをもあろうし、候補を立てないことで共産党の得票数、得票率でも今後不安な要素もはらんでいる。
けれど、それらを承知しつつ、志位委員長が一人区取り下げと決断したことは、大きく政界に激震を与えた。民主党と維新の党は、野党五党共闘をも承けて、政党として一本化する交渉に入った。志位さんの提案は、国民全体に政治がよくなる可能性の確率を高めて、活性化させている。テレビ朝日系列の「報道ステーション」はもうすぐ三月降板まで間もないが、古館伊知郎キャスターと番組スタッフは、この志位提案と民主・維新の両党統一とを、安倍政権の権力に対峙するという視覚から報道した。期待しているTBS「news23」も番組中で丁寧に取り上げていた。紹介そのものは、与野党に配慮したバランス的な番組内容のように思えた。ただ、岸井キャスターは、これらの共闘が安保法制・戦争法案の廃止をしっかりと実現するべきと述べて健在ぶりを示した。
なぜ日本共産党は、一人区の候補を取り下げたか。今まで、選挙区で共産党が立候補して、野党併立で自公与党を利している、という共産党批判はあった。けれど、共産党は全選挙区に候補擁立を行ってきた。実は同じ問題のように見えても、背景の事情は大きく異なる。
どういうことか?
前は日本共産党が、どのような地域でも憲法と平和・真の福祉をアピールして、護憲勢力を拡大する必要があった。
ところが、今の日本の国内は、安倍政権の強権ぶりと閣僚・議員のあまりに国会議員として論議する以前の政治家としての質の劣化が甚だしい。同時に、福島県民をはじめ東日本大地震災害と連動した福島原発事故という未曾有の災害の中から全国的に市民運動が立ち上がった。中でも反原発連合など原発問題にとり組む市民運動は、原発、戦争法案、立憲主義問題と、大いに力をつけて、国民をリードし続けている。そのことにほぼ正確に対応しているのが、社民党と日本共産党、緑の党である。さらに「生活の党と山本太郎となかまたち」は早くから政党の共闘を小沢一郎氏が言い続けてきた。
現在の日本共産党は、自党の議員を増やすことを大切にしていると同時に、かつては日本共産党が前衛として国民をリードしてきた。けれども日本共産党の政策や理念を共通のものとして共有化できる。志位委員長はSEALDsの奥田愛希さんら若者たちの発想と実践力をしっかりと認め、将来を期待している。
さらに、沖縄県で翁長雄志氏が、沖縄では保革ともに「イデオロギーよりアイディンテイティ」「オール沖縄」を唱えて、そのことが本土よりもさらに過酷な米軍基地問題を抱えながら、全県民的な「沖縄を幸福にしない」激震の震源に向けて的を射ている。
まとめよう。
反原発来の市民運動と沖縄の県民運動。この二つの大きな実践に大きな助っ人が現れた。たえず誠実に同行し続けた日本共産党ゆえに、今までの全選挙区立候補と同じ目的が、さらに現実的な要素を踏まえて、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」「安全保障関連法に反対する学者の会」「安保関連法に反対するママの会」「立憲デモクラシーの会」「SEALDs」が総結集して 『安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合』樹立に至った。『市民連合』と提携しつつ、同時に政党では五野党として結集して、安倍政権を打倒できる展望が拓けてきた。
以上のような情勢把握と対抗戦略をうちだしたのが、志位和夫日本共産党委員長のビッグ・サプライズなのであろう。