【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

 オバマの広島訪問をあやうくぶち壊しそうになった安倍晋三首相の軽挙

2016-05-28 13:46:55 | 政治・文化・社会評論
 オバマの広島訪問をあやうくぶち壊しそうになった安倍晋三首相の軽挙

                      櫻井 智志

1 オバマ演説に対する沖縄県民の声
2 オバマ広島訪問をぶち壊しかけた安倍首相の軽挙
3 オバマ演説の問題点を指摘する日本の知識人の声




1 オバマ演説に対する沖縄県民の声

 沖縄では、アメリカ海兵隊員だった男によって、若い女性が無惨に殺されて遺体遺棄という事件が発生した。公式には、その
男の容疑は「遺体遺棄」のみであり、現時点では殺戮については捜査中である。けれども、今までに子どもや少女までが強姦な
どの被害を受け続けてきた。沖縄県議会は、沖縄に滞在するアメリカ海兵隊の全面撤退を求める抗議決議案を可決した。沖縄県
自民党議員さえ抗議を決議する際に、反対せず退席という消極的姿勢を示した。公明党沖縄県議団は、抗議決議賛成に廻った。

 さらに、辺野古基地建設を県外や国外に移転を要求する沖縄県民の声は、無視され続けて、一方的なアメリカ軍隊と日本の警
官隊に擁護され、基地建設の強行は作業を継続されている。岩国米軍基地に立ち寄って、激励のメッセージを送ったオバマ大統
領が、広島で核廃絶の素晴らしい演説を行っても、日常的に米軍による恐怖を感じている沖縄県民には、自らの被害を救うもの
とは直接的に関わらないことを絶賛するわけもないではないか。

 宜野湾市にあるアメリカ軍普天間飛行場の隣接地で、「沖縄戦の図」を常設展示している佐喜真美術館・佐喜真道夫館長(6
9才)の発言を、東京新聞5月28日朝刊は総合版はこう伝えている。

「自ら見て感じることは良いこと」
「沖縄戦でも通常兵器で一坪に1トンの砲弾が降り注ぎ、九万人もの一般市民が原形をとどめないほどの死体となって死んだ。
しかも沖縄では今も米軍基地が集中し、事件・事故の被害が続き、戦争は終わっていないといえる。この現実もぜひ自ら感じ、
直視してほしい」

 佐喜真館長の情理を尽くした発言は、沖縄県民の理性として傾聴に値する。

 思い起こせば、自民党沖縄県連幹事長も歴任した翁長雄志沖縄県知事は、安倍政権の安倍首相・菅官房長官との対話を要請し
てもことごとくはねつけられ、アメリカに自ら渡り、アメリカの有力者に事態説明と米軍基地の弊害などを継続的に訴え続けて
きた。

 オバマ訪日でも、大統領との面会と対談を強く要請していた。日本政府は、一地方自治体が国家間の交渉に関わるべきではな
い(菅官房長官)とはねつけた。日本政府が、仲介の労をとり、オバマ・翁長会談をわずかな時間でも実現していたなら、翁長
県知事や沖縄県民ばかりか、安倍晋三総理自身にとっても、大きなプラスとなったであろうに、残念ながら、安倍総理も安倍政
権にも、そのような深謀を思い巡らす高官は誰ひとりとしていなかったのが現実であった。

 オバマ大統領の広島演説が、沖縄県民の心に充足を与えなかったのは、アメリカ軍産複合体の忠実なしもべでしかない安倍晋
三氏の狭い了見がもたらした国民的損失である。安倍首相の本音には、沖縄県民が日本国民の重要な一員であることへの強烈な
差別意識が占めているのであろうか。もしもそのような沖縄への差別意識など皆無だとするなら、安倍首相は重大な過失をおか
したとしか言えない。自民党総裁でもある安倍晋三氏の部下にあたる自民党神奈川県議会議員の小島某氏は、「沖縄で騒いでい
る基地の外の人々を私は基地外の人と呼ぶことにしている」と公的に発言し、地元神奈川県横浜市青葉区を中心に神奈川県では
強い反感が湧き、日本共産党神奈川県委員長の田母神悟氏は、共産党神奈川県の公式発言として、抗議声明を表明した。

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小島県議「基地外(きちがい)」発言に抗議する

2016年5月25日
日本共産党神奈川県委員会委員長 田母神 悟



 自民党の小島健一県会議員(横浜市青葉区選出)が8日、都内の集会で基地反対派にたいし「基地外(きちがい)の方」と発
言した。 これは明らかに「基地『外』」とわざわざ強調することで、基地反対派を敵視し、誹謗・中傷する発言であり、断固
としてこの暴言に抗議する。

 小島議員は、沖縄県祖国復帰44周年記念の日本民族団結靖国集会に出席し、「沖縄の基地の周りには、基地に反対だとか、オ
スプレイに反対だとか、毎日のように騒いでいる人たちがいる。基地の外にいる方ということで、基地「外」(強調)の方と(
会場、大いに笑い、拍手)いうふうに呼んでいる。神奈川県でも同様で、大変苦慮している」と発言した。

 この発言は、国会でも取り上げられ、中谷元防衛大臣は、24日の衆院安全保障委員会で「詳細を承知していないが、『きちが
い』という用語は一般的に好ましくなく、使用すべきでないと考える」と答弁した。

 小島県議の発言は、議員としての見識と良識が問われるものであり、ただちに撤回すべきある。

 また、同県議は13日のフェイスブックで日本共産党を「暴力革命を遂行中」と誹謗・中傷した。
 公安調査庁が多額の税金を使い、不当な「調査活動」をおこなっているにもかかわらず、「暴力革命」の「証拠」を何一つあ
げられなかったことは周知の事実である。天下の公党である日本共産党に対して、「暴力革命」という悪質なデマ宣伝をおこな
った小島県議にきびしく抗議するものである。

以上
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もしもこのような差別意識が、地方県議でも中央政府にもあるとするなら、いかにオバマ大統領が国際的に歴史的な名演説を
おこなったとしても、沖縄県民とアメリカ政府の間に巨大な障壁がたちふさがり、それを撤去しないかぎり、問題は解決しない




2 オバマ広島訪問をぶち壊しかけた安倍首相の軽挙

 以下はwebで見つからないので、直接に東京新聞今朝の朝刊を視写したものである。

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このままでは日本が望む形の訪問はできない-。二十五日夜、激怒したホワイトハウス高官が日本側に「警告」(外交筋)を
発した。広島訪問まで二日。日米間で調整を重ねてきたスケジュールが突如揺らいだ。
 発端は同日夜、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に先だって開かれた日米首脳会談後の共同記者会見だった。安倍晋三首
相は無言で立つオバマ氏を横目に、沖縄の女性遺棄事件で「断固抗議」したと繰り返し強調。十分程度の予定だった会見は五十
分に延び、テレビでも生中継された。
 複数の日米関係筋によると、オバマ氏に同行するホワイトハウス高官は、安倍首相がオパマ氏を「さらし者」にしたと憤った
。この高官は官邸関係者に「怒りをぶちまけた」という。
 日本政府に動揺が走り、「オバマ氏は原爆資料館訪問を見送るのでは」(政府筋)と悲観する見方も広がった。被爆者との面
会についても、外務省筋はぎりぎりまで「絶対に実現できるとは言い切れない」と不安を口にしていた。(後略)
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いつも「勝者」の立場に立とう としてきた日本国内閣総理大臣、自由民主党総裁アベシンゾー。
そのためには、オリンピック招致のためのIOC国際演説でも「福島原発の汚染水は完全にブロックした」と見え透いた嘘を首
相の立場で表明し、外国首脳に唖然とした驚きをもたらした。その後、オリンピック招致のために巨額の「リサーチ料」として
数億の賄賂を送った疑いで、フランス検察が公式表明して、外国では東京大会見送りの意見まで出ていると外電は発信している
。しかしJOCの竹田会長は国会で「なんら問題ない」とはねつけた。

 G7の会議そのものについては、拙稿『G7と広島訪問における日米トップの政治哲学~安倍晋三の方便とオバマのこころざ
しの相違を垣間見て~』に記したので省略する。

 日米「従属奴隷的」条約にしばられている、その相手国のトップオバマ大統領を無視して、安倍晋三自身さえよければよいと
する生まれついての幼児性は、重大な場面で、軍事同盟の相手国トップを黙殺したようなことをしでかす。ケネディ駐日大使を
はじめアメリカ政府関係者と日本の政府高官たちの水面下の必死の努力によって、表面ではなにごともなかったかのように、無
事広島訪問を終えた。オバマ大統領が「おとな」とすれば、安倍首相の段階は「幼児」レベルである。

 このような幼稚な首相を、日本国のトップのままにしておくならば、いまの日米同盟すら最悪の状態に悪化することも十二分
に想定しうる。



3 オバマ演説の問題点を指摘する日本の知識人の声

 「しんぶん赤旗」は以下のように伝えた。
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① 広島の平和公園でのオバマ米大統領のスピーチに同席した日本被団協の坪井直(すなお)、岩佐幹三(みきそう)両代表委
員と田中煕巳(てるみ)事務局長は27日夕に原爆資料館内で記者会見しました。

 スピーチ後のオバマ氏に言葉を交わした坪井さんは、「これからが大事です。任期中に何回も被爆地に来ていろんな被爆者と
会って、廃絶にがんばってください」と声をかけたとしました。

 岩佐さんは、「人々の心に響く演説だった」と歓迎しました。

 一方で、田中さんは「一方通行で残念だった。資料館もたった15分だった。スピーチ後に短時間でも話したかった。核兵器
禁止条約のために力をつくすと言ってほしかった」と話しました。

 岩佐さんは、被爆国ながら核の傘にある日本政府の姿勢について、「『二度と被爆者をつくりません』という政治に変えない
といけない」と話しました。広島と長崎に原爆が投下された8月6日と9日を「平和祈念デー」にしてほしいし、核兵器廃絶を願う
国際平和デーにしてほしい、と話しました。

 田中さんは、被爆者が高齢になるなか「本当に、生きているうちに核兵器廃絶を実現したい。被爆者の国際署名を大々的にす
すめたい」と語りました。


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② 日本共産党の志位和夫委員長は27日、党本部で、来日中のオバマ米大統領が原爆被爆地・広島市を訪問したことについて
記者団の質問に答えました。志位氏は、「現職のアメリカ大統領が広島を初めて訪問し、平和資料館を訪れ、追悼の献花を行
、追悼のスピーチを行って、被爆者の方々と言葉を交わしたことは、前向きの歴史的な一歩となる行動だったと思っています」
と述べました。

 その上で志位氏は、「この前向きの一歩を『核兵器のない世界』の実現につなげるうえでは、核兵器の非人道性を正面から直
視し、核兵器禁止条約の国際交渉を開始するという具体的な行動を行う必要があります。それを私たちは強く求めていきたいと
思います」と強調。「そのためには、米国のこれまでの核兵器政策の転換が必要になってきます」と表明しました。

 記者団から、オバマ氏から原爆投下についての謝罪がなかったことについての感想を問われた志位氏は、「多くの被爆者の方
々が謝罪を求めていたことは、当然の声だと私は思っています。ただ、『核兵器のない世界』への決意を実現するための具体的
行動を起こすことが一番肝心な点になってきます」との考えを示しました。
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毎日新聞は元広島市長の発言を伝えた。
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元広島市長の平岡敬氏(88)に聞く

 オバマ大統領は再び「核兵器のない世界」に言及したが、手放しで喜んではいけない。米国が「原爆投下は正しかった」とい
う姿勢を崩していないからだ。原爆投下を正当化する限り、「核兵器をまた使ってもいい」となりかねない。私たちは広島の原
爆慰霊碑の前で「過ちは繰り返しませぬ」と誓ってきた。原爆を使った過ちを認めないのなら、何をしに広島に来たのかと言い
たい。
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朝日新聞は、核軍縮議連で今回裏方でつとめた岸田外相の発言を伝えた。
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■岸田文雄・外相

 核軍縮に向けた国際的な機運がしぼんでいると言われている中にあって、今回の(オバマ米大統領の広島)訪問は、唯一の核
兵器使用国と戦争被爆国の首脳が、核兵器のない世界に向け力強いメッセージを発信した。しぼんだ機運を再び盛り返す、まさ
に反転攻勢に転ずるきっかけになったものと考えています。

 この訪問がゴールではありません。これから核兵器のない世界に向けて、政治家の立場から、具体的に、現実的で実践的な取
り組みを進めていかなければならないと思います。

 「是非一緒に、取り組みましょう」という、(オバマ大統領と言葉を交わした被爆者の)91歳の坪井(直)さんから力強い
言葉がありました。我々も是非、一緒にがんばらなければいけない、強く思います。(27日、広島市で記者団に)
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これらを読むと、オバマ演説を評価する一方、現実の核兵器の現状と核廃絶の運動の前進を願う願いが伝わってくる。私は、
オバマ大統領が退陣した八ヶ月後にアメリカの新しく大統領選に懸念をもつ。

 政治家とは言えぬようなトランプも、アメリカ軍産複合体と密接なヒラリー・クリントンのどちらも、オバマほどの見識も核
時代の政治的信念も持っていない。

 さらに、日本の安倍政権は、まもなく退陣せざるを得ないような段階を迎えよう。そして自公与党には、日本の政治をリード
しうるような政治家はいるのだろうか。

 安倍政権、自公政権の打倒とそれに対して、広島・長崎・福島・沖縄の県民のこころと寄り添って日本を再建しうる具体的見
解と建設とが、オバマ大統領がのこした広島演説に対応する日本国民のいまの課題と考える。
 


G7と広島訪問における日米トップの政治哲学

2016-05-27 22:21:46 | 政治・文化・社会評論
G7と広島訪問における日米トップの政治哲学
~安倍晋三の方便とオバマのこころざしの相違を垣間見て~
  
                櫻井 智志


 G7において、安倍首相が見せた総てが、G7のトップがあきれ、しらけていた。まともに論評するに値しないめちゃくちゃである。国内では、日本経済はアベノミクスの効果でうまく言っていると強弁しつづけてきた。ところがG7では、世界経済はリーマンショック寸前と似た経済危機にあると述べたのだ。まったく国の内外で正反対を述べた。ドイツやイギリスの首相が安倍理論に反対したのは当然だ。日本以外のG7の各国は経済がほぼ安定しており、「危機的だからG7各国が一斉に財政出動して経済危機をアベノミクスで立て直そう」などというでたらめな方便は、最初から各国は呆れてしまった。それをホスト国の顔を立て、神道のメッカ伊勢神宮をなかば強制的に集合場所に使うなど安倍首相のやることなすことが、本論ではなく「おもてなし」の美食の飽食などまったくサミットとは別の次元であっても、外国首脳は大人だから安倍に気をつかっていた。


 日米首脳が最も際だっていたのは、広島平和記念公園での感動的なオバマ演説と安倍演説の内容である。

 オバマ大統領の17分に及ぶ演説は、「私が生きている内に核廃絶は成就できないだろう」という見通しを述べる冷静さをもち、しかも核時代・ヒロシマ紀元を唱えた思想家芝田進午の「被爆者・被曝者・ヒバクシャ」の三段階の社会的存在論を踏まえているかのような確かな論理と哲学をもっている。

 安倍首相は、参院選の前に消費税のことを言うといったが、G7でのリーマンショツク寸前に似た危機説をあそおり財政出動までもちだして、参院選に少しでも有利な状況にしようとしている。広島訪問もオバマに便乗して、平和の使者パートナーを装った。

 原発セールスで世界を回り続け、東京五輪を有利に するため福島原発汚染水は完全にブロックしたと国際舞台でセコイ見え透いた嘘を述べた。IOCといい、G7といい、国際会議に出てくる各国のトップクラスは、既に安倍なるものの何者かを熟知し了解してしまった。何も言わないだけで、まともに相手にされていない。
 
 オバマは雄弁家だが政治力は高くはない。けれど、その高潔で誠意あるスピーチは被爆した「被団協」の坪井さんや「原爆乙女」の笹森さんなどから感銘をもって受け止められた。戦争責任の謝罪問題の視点からすれば、問題が皆無ではない。けれど、現在の時点で、核兵器に被爆した80,90才台の老人たちの心に響く見解をもっていることは紛れもない事実だ。学生時代から「核なき世界」という文章を書いていたという。プラハ演説は実現していないが、大統領退任後も核廃絶運動に取り組む意志を明言した。


 広島の原爆資料館の入り口にいた少年少女に、「私が折ったものだよ」と言って折り鶴を四人に渡したという。そして、
NHKテレビのニュースでは、
「共に平和な世界をつくるために努力していきましょう」という意味の言葉を受付名簿に記帳したという。



 人間性と人格の質が違う。オバマとシンゾーとでは。

伊勢志摩G7会議は有効な国際的打開策を提示できるのか

2016-05-26 15:11:00 | 政治・文化・社会評論
伊勢志摩G7会議は有効な国際的打開策を提示できるのか

                  櫻井 智志


 ドイツのメルケル首相の政治的識見は、国際政治において評価される力量と政治的資質とをもっている。まもなく任期を終えるオバマ大統領も、前任者のブッシュ前大統領の失政をついにフォローしきれなかったけれど、そのリベラルな政治理念はキューバとの国交回復などそれなりの取り組みはやはり認められてしかるべきだろう。


 しかし、他の諸国とその政治的指導者は、とりたててリーダーと呼べるものをもっていない。孫崎享氏のご指摘のように、すでにG7の諸国は国際社会をリードするとは言えない。


 シリアなどの中東の紛争も、ドイツのメルケル首相以外は、紛争解決の政治的手腕も文明史的理念も持ち合わせていない。あるのは経済的貧困国への蔑視と対応無策のみだ。


 メソポタミア文明やエジプト文明、古代のギリシャなどの文化。その時にいまのG7諸国は未開か野蛮な後進地域でしかなかった。そんな古代の歴史は、中学生でも初歩的な知識も認識ももっている。いまは経済的に遅れていても、中東から西アジア、南ヨーロッパにかけてのG7諸国とロシアは、空爆や入国制限など政治的対応において、すでに時代の要請に立ち後れている。日本の独裁的首相安倍晋三氏が論理未熟の詭弁と空疎な熱弁を奮っても、G7サミットの議事と総括は、なんら国際社会が求める解決策など打ち出せまい。自国の一地方自治体である沖縄県民の窮状打開の要請も対応さえできぬ総理に、難問が幾重にも重なり合った国際社会への有効な打開策など打ち出せはしないということ。それは、会議が終わらぬ時点の現在でも、ほぼ推測できる。



=====重要参考資料==================



【孫崎享のつぶやき】

《先進国首脳会議に世界をリードする力があるか、相対的経済力の低下、民主主義国として機能しているかの疑問。》
2016-05-26 10:072




 G7首脳会議は本26日から開催される。世界経済、政治外交、気候変動・エネルギー、アジアの安定と繁栄、開発とアフリカ等が協議される。首脳宣言が出される。こうした中、G7が今日、どれ位、世界情勢に影響を与えるかを考えてみたい。


 先進国首脳会議は次の経緯をもってスタートした。
「1975年に、フランス大統領ヴァレリー・ジスカール・デスタンは “工業化された4つの主要民主主義国”の首脳をフランスのランブイエに招待し、フランスを含めて5カ国ではじめての首脳会議を開催し、定期的に首脳会議を持つことを提案した。このときの出席者は、主催国を交代しつつ年に一回会議を持つことに合意した。「G5」が生まれた。不服としたイタリアの首相が第1回会議に乗り込んで来た為、イタリアを加えG6となる。翌年のプエルトリコの首都サンフアンでのサミットでアメリカのジェラルド・フォード大統領の要請によりカナダが参加したことにより、「G7」となる。」(ウィキ)

 先進国首脳会議は①圧倒的な経済力を持つ国、②(主要)民主主義国であることが特徴であった。


 しかし、今、これら7か国は主要先進国として、国際社会でその影響力を大きく後退させてきている。この兆しは2012年にあった。大統領に復帰したプーチン氏は当初、ホワイトハウスでオバマ米大統領と会談し、その後、ワシントン郊外のキャンプデービッドで今月18、19の両日開かれる主要国(G8)首脳会議に出席する予定だった。ホワイトハウスによると、プーチン大統領は9日にオバマ大統領に電話で直接、遺憾の意を表明し、今回の決定について、「組閣に専念するため」と説明した。G8首脳会議には代わりに、メドベージェフ首相が出席する。(2012年 5月 10日)そしてプーチンは直後に行われたG20首脳会議に出席した。


 ここで経済力からみる世界の大国をみてみよう。CIAのFACTBOOKが掲載する購買力平価ベースの順位である。
 1:中国、2:米国、3インド、4日本、5ドイツ、6ロシア、7ブラジル、8インドネシア、9英国、10フランス、11メキシコ、12イタリア。13韓国、14サウジである。7番目まで取れば非G7の方の国数が多い。


 では民主主義国家としての、理念面でのリーダー格はどうか。
 ここでは、指標を国境なき記者団の報道の自由度2016年を見てみたい。G7のランキングは次のとおりである。
 ドイツ16位、カナダ18位、英国38位、米国41位、仏45位。日本72位、イタリア77位、


 したがって、民主主義的国家の代表的な声の側面も失われた。さまざまな発言や声明が発出されるであろう。しかしそれが国際社会に投げかける影響力は極めて低い。


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伊勢志摩サミット、この空疎な大伽藍の演出者の田舎芝居

2016-05-26 08:34:01 | 政治・文化・社会評論

【沖縄の民意を粉砕した安倍晋三の見せかけのパフォーマンス】
櫻井智志@satoshitoday  
日米地位協定には一切触れない、沖縄県知事の直接面会要求ははねつける。
こんな安倍首相の「怒り」表明のパフォーマンス。
安倍氏とオバマ氏とで昨夜の会談の報告の内容が異なる。
オバマ氏は、会談で北朝鮮のことや経済対策、日米同盟も話し合ったことを述べた。
安倍首相は、会談のほとんどを沖縄について費やしたかのようにスピーチした。
日米会見なのに、オパマ氏が話すことまでしゃしゃりでて、隣のオバマ氏の不快な表情にさえ思い至らず、会見のほとんどを取り仕切った。
オバマ大統領には、率直な誠意が感ぜられる。
安倍首相の言行不一致は、自らの虚栄心を満たすマキャベリズムを露骨に示しているだけだ。
固い軍事同盟のアメリカ側の立場や発言権にまで介入していた。
こんな政治家が国際的に認知されようもない。





【伊勢志摩サミットと戒厳令リハーサル】
櫻井智志 @satoshitoday
もうひとつの伊勢志摩サミット。
厳戒態勢はテロ対策としてしかたないように日本国民に思わせている。
しかし、これはあきらかに「戒厳令」の予行演習としか見えない。
会場周辺の中学高校を全面休校させ、東京駅のコイン・ロッカーを全面閉鎖。
こんなサミットは日本には要らない。
テロを今後誘致させる危険を飛躍的に高めてしまった。
安倍失政でしかない。
その責任を負う自覚も対策も何も持たない単細胞の政治家が、サミットの裏舞台でどんなことをしでかすのか。
報道されない外国記者の本国への発信で、安倍首相の内実をあからさまに地球上に表面化されていくことだろう。

サミットを建前とした「平成日本戒厳令もどき」の危うさ

2016-05-25 19:39:44 | 政治・文化・社会評論
サミットを建前とした「平成日本戒厳令もどき」の危うさ

               櫻井 智志

 二、三日パソコンから離れようと考え、テレビニュースをぼおっと見ていた。しかし推移する画面にしだいにあれよあれよという間に、このままサミットが終わるまで沈黙していたら、闘争ではなく逃走だ、と思い、きょうはこれひとつを書き上げる。


 話はそれるようだと思われるかも知れない話を。アイドルと大学生活をめざす女性が、ファンから変心した若い男性にめったやたらに全身をさされ、意識不明の重体。
 警察は、目撃者からの電話で事件を知り、すぐかけつけた、と報道された。しかしこれは事実と異なると訂正が出された。全身を刺された女性は、自分の携帯電話から警察に「助けて!!」と警察に電話していたのだ。テレビ報道では、女性が被害を受けた事件現場から電話した警察署までは700メートル。パトカーで2分の距離。女性は事前に京都府の警察に相談し、その指示で警視庁管内の警察にも相談した。携帯にはGPS機能がついていて、その女性が電話した場所は警察では認知できるシステム。で、警察は警官七人と救急車を派遣した。しかしその場所は本人の住所をもとにして電車で三駅ほど離れた駅の近く。その時点に自宅に女性がいるはずもない。
 目撃者が警察に連絡したのは、本人の電話の約一分後。そのあいだに重傷の女性は意識不明状態に悪化した。

 さて、明日からのサミットに備えて、サミット当地の三重・伊勢志摩の賢島。観光客ゼロ。いるのは警官だけ。それが全国に及ぶ。都内でも東京タワー展望台、東京駅などすべての駅でロッカー使用禁止・ゴミ箱撤去。これは英国サミットでのロンドン爆破や最近のフランス・パリの爆破テロによる劇場死傷者などの事例を参考にしている。

 しかし日本は、安倍政権の「有志国連合入り」「イスラム国」勢力衰退に資する巨額援助の公約発言など、日本が自らテロを受けやすい国際情勢を創り出したのだ。日本国憲法のもと戦後日本は、武器なき支援で医療・人的支援に徹してむしろ世界から尊敬を受けていた。日本赤十字や国境なき医師団、報道ジャナーナリストなど日本・日本人が信頼されていたものをわざわざ崩壊させ、異常な過剰警備をしかなければ安全が担保されないようないまの状態をつくりだした元凶は、安倍晋三首相とその政権なのだ。

 警官の特殊警備の集団訓練や銃撃訓練など、その公開の報道を通じて、今回のサミットを通じて日本国内は、まさに「戒厳令」状態にひとしい。国民の情報は、盗聴法、国民ナンバー制度、インターネットの大手サーバーからの大量個人情報流出という名目の情報の保護解体状況下にある。

 このような「先進国」僭称サミットで、何が決まってもそれが国際社会の平和と幸福の保障となるのか。ロシアや中国は加わっていないが、G7との外交はどうなるのか。伊勢志摩サミットを踏まえて、安倍首相はプーチン大統領とどう交渉するのか。

 国内でも方便と詭弁に終始して、あとは細かなテクニック政治でここまで政権を延命してきたが、自公政権が一日続けば続くほど、二極分化した国内の庶民層の暮らしは悪化している。東京オリンピックやサミットに巨額の浪費を続け、福島県民はじめ東北地震被災者や熊本・九州激甚地震災害の被害者に少しは政治を目を向けて真摯な国政をしたらどうか。熊本地震義援金七億五千万円のうち5月24日時点で支給したのは、わずか一世帯十万円のみ。「住宅の被害調査が進まず、罹災証明書の発行が追い付いていないのが主な要因」と東京新聞5月25日夕刊は報道している。
 さらに、サミット中は警備が手薄になるので、リスクを軽減するために「福島第一、原子炉冷却やパトロール作業を除き、きょうから作業を原則休止」すると報じられている。どこかが逆転している。どこかが狂っている。

 安倍政権の時代にはいって、日本の歴史と伝統、近代史の民主主義運動の成果がひとつひとつ崩壊させられている。だが、国民の理性は決して腐敗した政権とは異なる。
 参院選選挙区一人区のすべてで市民運動が媒介役となり野党共闘が成立した。政党と市民団体。日本は困難だが、屈せぬ希望の原理をもち続けて健闘している。

安倍政権総辞職要求

2016-05-20 18:10:18 | 政治・文化・社会評論
櫻井智志 @satoshitoday 15秒15秒前

沖縄県翁長知事は、基地問題の県民総意を安倍政権に要請し続けた。

翁長知事はアメリカに何度も足を運んだ。

そんな折りに、元海兵隊のアメリカ人による二十歳の女性が虐殺された。

間接的な原因は、米軍本位で県民の総意を無視し続けた安倍晋三にある。


対米従属の安倍内閣は責任をとり総辞職すべきだ。

沖縄人民党以来のの闘士瀬長亀次郎と「オール沖縄」を率いて米軍基地撤廃を闘う翁長雄志

2016-05-19 11:33:47 | 政治・文化・社会評論
沖縄人民党以来のの闘士瀬長亀次郎と「オール沖縄」を率いて米軍基地撤廃を闘う翁長雄志

           櫻井 智志


 瀬長亀次郎氏も翁長雄志氏も、ともに沖縄県の県庁所在地那覇市の市長を歴任されている。瀬長氏は、沖縄人民党を経て日本共産党の要職を務めた。翁長氏は、代々の政治家のご家庭に育ち、自由民主党沖縄県連幹事長を務めた。
 まったく政治的スタンスは別のように見える。しかし、お二人は沖縄県民と沖縄のふるさとを守る共通項をもつ。



Ⅰ 瀬長亀次郎のドキュメンタリーDVD『県民の願いを国政に/われらのカメさん』

最近、私は或る尊敬する実践的知識人から、『県民の願いを国政に/われらのカメさん』と二編から構成されたドキュメンタリーDVDををいただいた。瀬長亀次郎氏の生涯と沖縄の民主化運動をリアルにわかりやすく伝えている。
 それぞれ鈴木瑞穂、宇野重吉といった新劇運動を開拓した劇団のひとつ「劇団民芸」の重鎮がナレーションを担当している。
若い世代には疎いお名前かも知れない。宇野重吉は、寺尾聡のご尊父である。
 「株式会社シネマ沖縄」が販売元となっている。前者は23分で瀬長亀次郎講演会が企画・製作し、後者は13分でセナガカメジロー後援会・沖縄民主記録映画の会が製作している。税込み二千円で入手しやすい。「瀬長亀次郎講演会」「セナガカメジロー後援会」の漢字はそれぞれ別である。DVDの表記の通りなので間違いはないと思う。
 

 高校の時、私は「沖縄人民党」という名称が好きだった。「共産党」という名前は、畏怖するもので存在感があった。書店の店頭で、雑誌『前衛』特集号の「進歩と革命の伝統」という長編評論を立ち読みしていた。家族は、日本共産党と交差するものがあったし、「赤旗日曜版」を定期購読していたので、共産党アレルギーのようなものはなかった。ただ日本共産党の除名者の記事を『前衛』や『文化評論』などで読む度に、組織的原則の正確さと厳しさを感じて、ためらいを覚えた。


 そんな折りに、沖縄人民党の党首は沖縄市長に当選し、闘っているという噂を聞き、「人民党」という名前と韓国民主化運動の戦いとが重なるイメージをもっていた。その「沖縄人民党」が「日本共産党」に合流し、新たに「日本共産党沖縄県委員会」を発足させたこと、瀬長氏が日本共産党副委員長に就任したことは、一気に「沖縄人民党」と「日本共産党」がリンクするものであることと、戦後沖縄闘争で二年間も投獄された瀬長氏の人物像に興味を抱かせた。獄中十八年の志賀義雄、徳田球一、獄中十二年の宮本顕治らの民主化闘争の存在感も相当な者だが、戦後になって、本土は日本国憲法の社会となった時、沖縄県は日本国憲法とは切り離されたアメリカ軍占領下のまま1972年の括弧付きの「沖縄返還協定」締結まで、占領軍下の奴隷扱いに等しい劣悪な情勢のもと置かれた。


 そんな戦前・戦中・戦後の沖縄の民主化抵抗闘争のリーダーとして、瀬長亀次郎氏は、闘いの第一線に立ち、ひるむことなく実践とり組んだ。カメさんと呼ばれた愛称に、大衆性がうかがわれる。このDVD『県民の願を国政に/われらのカメさん』は、瀬長氏のなまの暮らしと闘いの様子を見る者に生き生きと伝えてくれる。

 瀬長亀次郎氏の闘争の詳細と啓蒙や指導の評論や論文などについては、私にとり今後の社会思想史研究の新たな課題として残された。この小文では沖縄の指導者、不屈の革命家のほんものの素晴らしさを伝える事を心がけた。




Ⅱ 翁長雄志著『戦う民意』

 壮絶な一冊である。
政治家一家に生まれた翁長氏は、保守政治家の家柄に育ち、幼い頃から沖縄の現実を見つめつづけてきた。那覇市長を歴任され、沖縄県知事選挙で見事当選して、オール沖縄の牽引役として日本是全体の刷新に貢献し続けている。


 胃がんで切除し、余命について医師から宣告された後に、翁長氏は幼い頃から差別され続けてきた沖縄県民の実態を見つめ続けてきた。差別は、日本本土からの差別とアメリカ軍・アメリカ政府からの二重の差別である。沖縄の差別の過酷な実態は、薩摩藩の琉球処分、明治政府の沖縄の露骨な差別政治、戦時中の日本政府と日本軍からの差別である。唯一陸上戦の熾烈な戦場となった沖縄は、アメリカ軍からの爆撃とともに日本軍隊からも自殺のための手榴弾をひとつずつ渡され、「アメリカ軍兵士から陵辱される前に大和撫子の貞操を堅持せよ」の身勝手な自殺を命令された。世界各国に侵略していった日本軍は、自らが侵略地で行った現地女性への強姦などの暴力が露見することに脅えつつ、他国の軍隊も日本国軍兵士と同等としか認識できず、多くの無惨な沖縄県民への不幸をもたらした。

 戦後も、沖縄は日本の延命のために、沖縄を犠牲にして、差し出した。米軍基地の横暴は、戦後七十年たっても一向に終わってはいない。1972年の沖縄返還では、佐藤栄作総理とアメリカ政府との間に密約がかわされ、ふたたび沖縄県民は日本政府によって、二重三重に差別政治の犠牲となってきた。


 翁長雄志沖縄県知事は、幼いころから保守政治家の家庭に育ち、沖縄の実態とそれを克服しようと努力し続けた両親親族の政治家実態とそれを克服しようと努力し続けた両親親族の政治家としての厳しい実践をも見つめ続けてきた。翁長氏は、「イデオロギーよりもアイディンテイーを」と唱える。琉球王国は、江戸幕府が鎖国を続けていた時代に、海洋国家として世界各国との豊かな貿易を続け、海外からの知識や文化も吸収して、見事な国家であった。

 しかし、明治維新は沖縄を差別下におき、薩摩藩の琉球処分以降の沖縄差別・弾圧政策を続けた。翁長氏は、マルクス主義や社会主義の運動を見ながら、沖縄の解放は、沖縄が積年差別され続け、沖縄県民の自己証明を名誉ある回復をすることによって、県民が自らのアイデンテイテイーに目覚めて、アメリカ軍からも日本国家からも、差別し続けてきた存在から、沖縄県民自らの尊厳と誇りを自覚し、自分たちの足で歩きたい、そう訴え続けている。
 保守とか革新とかそのような二分法では、とても解決しきれない長年の被差別から、思想信条の違いを超えて、沖縄県民全体の解放を願っている。翁長氏は、那覇市長時代も沖縄県知事になってからも、保守政治家として反対運動の先頭に立った。

翁長氏はこう述べている。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------
 「生き証人」の証言は生きた教科書であり、歴史的事実そのものです。悲惨な集団自決の事実を次の世代にどう継承していくかが重い課題となっている中で、戦争世代の遺言を消し去ることはできません。正しい過去の歴史こそが未来を指し示す道しるべになるのです。
 二〇〇七年九月二九日、保守と革新を超えた「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が宜野湾市の宜野湾海浜公園で開かれ、怒りとともに立ち上がった一〇万人が集まりました。
 このとき私は初めて保守の政治家として反対運動の先頭に立ちました。県内全市町村を代表して「絶対に歴史を曲げてはいけない」と文科省の検定意見の撤回を求め、結果的に一定程度の是正がなされました。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------


 翁長雄志氏の著作には、このような歴史的事実と自らの生命を賭けて、沖縄県民を通して日本全体の解放への熱い思いと冷静な理性的熟考に裏付けられた思索に満ちている。貴重な自然環境を守り、人と人とが支え合う社会を願う翁長氏は、「しまくとぅば」(島言葉)「うちなーぐち」と呼ばれる琉球語、沖縄の言葉を大切にしている。ユネスコの規定で、単独の言語で保護対象にあたる「うちなーぐち」を、自分たちの言葉を復権し、大切に守り育てることが、人々の誇りと尊厳をはぐくむはず。その考えが、那覇市長時代も今の沖縄県知事になってからも「はいさい・はいたい運動」をおこない日常的に沖縄の言葉を使っていこうと使い続けている。翁長氏は、その普及は懐古主義ではなく大変重要な意味をこめている。ぜひ読者は自ら読んでご確認いただきたい。

 二〇一六年。県選挙管理委員会(当山尚幸委員長)は15日、県議会議員の任期満了(6月24日)に伴う第12回県議会議員選挙を5月27日に告示し、6月5日に投開票とする期日を決定した。
 私はこの書物、『戦う民意』において何を翁長知事は、考えてきたか、何を日本国民全体に伝えたいのか、ぜひご一読をお勧めする。できれば、沖縄県議選の前に読むことをお薦めする。壮大な「翁長沖縄県知事の構想」をしっかりと、ともに受け留めたい。

沖縄人民党以来のの闘士瀬長亀次郎と「オール沖縄」を率いて米軍基地撤廃を闘う翁長雄志

2016-05-19 11:33:47 | 政治・文化・社会評論
沖縄人民党以来のの闘士瀬長亀次郎と「オール沖縄」を率いて米軍基地撤廃を闘う翁長雄志

           櫻井 智志


 瀬長亀次郎氏も翁長雄志氏も、ともに沖縄県の県庁所在地那覇市の市長を歴任されている。瀬長氏は、沖縄人民党を経て日本共産党の要職を務めた。翁長氏は、代々の政治家のご家庭に育ち、自由民主党沖縄県連幹事長を務めた。
 まったく政治的スタンスは別のように見える。しかし、お二人は沖縄県民と沖縄のふるさとを守る共通項をもつ。



Ⅰ 瀬長亀次郎のドキュメンタリーDVD『県民の願いを国政に/われらのカメさん』

最近、私は或る尊敬する実践的知識人から、『県民の願いを国政に/われらのカメさん』と二編から構成されたドキュメンタリーDVDををいただいた。瀬長亀次郎氏の生涯と沖縄の民主化運動をリアルにわかりやすく伝えている。
 それぞれ鈴木瑞穂、宇野重吉といった新劇運動を開拓した劇団のひとつ「劇団民芸」の重鎮がナレーションを担当している。
若い世代には疎いお名前かも知れない。宇野重吉は、寺尾聡のご尊父である。
 「株式会社シネマ沖縄」が販売元となっている。前者は23分で瀬長亀次郎講演会が企画・製作し、後者は13分でセナガカメジロー後援会・沖縄民主記録映画の会が製作している。税込み二千円で入手しやすい。「瀬長亀次郎講演会」「セナガカメジロー後援会」の漢字はそれぞれ別である。DVDの表記の通りなので間違いはないと思う。
 

 高校の時、私は「沖縄人民党」という名称が好きだった。「共産党」という名前は、畏怖するもので存在感があった。書店の店頭で、雑誌『前衛』特集号の「進歩と革命の伝統」という長編評論を立ち読みしていた。家族は、日本共産党と交差するものがあったし、「赤旗日曜版」を定期購読していたので、共産党アレルギーのようなものはなかった。ただ日本共産党の除名者の記事を『前衛』や『文化評論』などで読む度に、組織的原則の正確さと厳しさを感じて、ためらいを覚えた。


 そんな折りに、沖縄人民党の党首は沖縄市長に当選し、闘っているという噂を聞き、「人民党」という名前と韓国民主化運動の戦いとが重なるイメージをもっていた。その「沖縄人民党」が「日本共産党」に合流し、新たに「日本共産党沖縄県委員会」を発足させたこと、瀬長氏が日本共産党副委員長に就任したことは、一気に「沖縄人民党」と「日本共産党」がリンクするものであることと、戦後沖縄闘争で二年間も投獄された瀬長氏の人物像に興味を抱かせた。獄中十八年の志賀義雄、徳田球一、獄中十二年の宮本顕治らの民主化闘争の存在感も相当な者だが、戦後になって、本土は日本国憲法の社会となった時、沖縄県は日本国憲法とは切り離されたアメリカ軍占領下のまま1972年の括弧付きの「沖縄返還協定」締結まで、占領軍下の奴隷扱いに等しい劣悪な情勢のもと置かれた。


 そんな戦前・戦中・戦後の沖縄の民主化抵抗闘争のリーダーとして、瀬長亀次郎氏は、闘いの第一線に立ち、ひるむことなく実践とり組んだ。カメさんと呼ばれた愛称に、大衆性がうかがわれる。このDVD『県民の願を国政に/われらのカメさん』は、瀬長氏のなまの暮らしと闘いの様子を見る者に生き生きと伝えてくれる。

 瀬長亀次郎氏の闘争の詳細と啓蒙や指導の評論や論文などについては、私にとり今後の社会思想史研究の新たな課題として残された。この小文では沖縄の指導者、不屈の革命家のほんものの素晴らしさを伝える事を心がけた。




Ⅱ 翁長雄志著『戦う民意』

 壮絶な一冊である。
政治家一家に生まれた翁長氏は、保守政治家の家柄に育ち、幼い頃から沖縄の現実を見つめつづけてきた。那覇市長を歴任され、沖縄県知事選挙で見事当選して、オール沖縄の牽引役として日本是全体の刷新に貢献し続けている。


 胃がんで切除し、余命について医師から宣告された後に、翁長氏は幼い頃から差別され続けてきた沖縄県民の実態を見つめ続けてきた。差別は、日本本土からの差別とアメリカ軍・アメリカ政府からの二重の差別である。沖縄の差別の過酷な実態は、薩摩藩の琉球処分、明治政府の沖縄の露骨な差別政治、戦時中の日本政府と日本軍からの差別である。唯一陸上戦の熾烈な戦場となった沖縄は、アメリカ軍からの爆撃とともに日本軍隊からも自殺のための手榴弾をひとつずつ渡され、「アメリカ軍兵士から陵辱される前に大和撫子の貞操を堅持せよ」の身勝手な自殺を命令された。世界各国に侵略していった日本軍は、自らが侵略地で行った現地女性への強姦などの暴力が露見することに脅えつつ、他国の軍隊も日本国軍兵士と同等としか認識できず、多くの無惨な沖縄県民への不幸をもたらした。

 戦後も、沖縄は日本の延命のために、沖縄を犠牲にして、差し出した。米軍基地の横暴は、戦後七十年たっても一向に終わってはいない。1972年の沖縄返還では、佐藤栄作総理とアメリカ政府との間に密約がかわされ、ふたたび沖縄県民は日本政府によって、二重三重に差別政治の犠牲となってきた。


 翁長雄志沖縄県知事は、幼いころから保守政治家の家庭に育ち、沖縄の実態とそれを克服しようと努力し続けた両親親族の政治家実態とそれを克服しようと努力し続けた両親親族の政治家としての厳しい実践をも見つめ続けてきた。翁長氏は、「イデオロギーよりもアイディンテイーを」と唱える。琉球王国は、江戸幕府が鎖国を続けていた時代に、海洋国家として世界各国との豊かな貿易を続け、海外からの知識や文化も吸収して、見事な国家であった。

 しかし、明治維新は沖縄を差別下におき、薩摩藩の琉球処分以降の沖縄差別・弾圧政策を続けた。翁長氏は、マルクス主義や社会主義の運動を見ながら、沖縄の解放は、沖縄が積年差別され続け、沖縄県民の自己証明を名誉ある回復をすることによって、県民が自らのアイデンテイテイーに目覚めて、アメリカ軍からも日本国家からも、差別し続けてきた存在から、沖縄県民自らの尊厳と誇りを自覚し、自分たちの足で歩きたい、そう訴え続けている。
 保守とか革新とかそのような二分法では、とても解決しきれない長年の被差別から、思想信条の違いを超えて、沖縄県民全体の解放を願っている。翁長氏は、那覇市長時代も沖縄県知事になってからも、保守政治家として反対運動の先頭に立った。

翁長氏はこう述べている。

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 「生き証人」の証言は生きた教科書であり、歴史的事実そのものです。悲惨な集団自決の事実を次の世代にどう継承していくかが重い課題となっている中で、戦争世代の遺言を消し去ることはできません。正しい過去の歴史こそが未来を指し示す道しるべになるのです。
 二〇〇七年九月二九日、保守と革新を超えた「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が宜野湾市の宜野湾海浜公園で開かれ、怒りとともに立ち上がった一〇万人が集まりました。
 このとき私は初めて保守の政治家として反対運動の先頭に立ちました。県内全市町村を代表して「絶対に歴史を曲げてはいけない」と文科省の検定意見の撤回を求め、結果的に一定程度の是正がなされました。
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 翁長雄志氏の著作には、このような歴史的事実と自らの生命を賭けて、沖縄県民を通して日本全体の解放への熱い思いと冷静な理性的熟考に裏付けられた思索に満ちている。貴重な自然環境を守り、人と人とが支え合う社会を願う翁長氏は、「しまくとぅば」(島言葉)「うちなーぐち」と呼ばれる琉球語、沖縄の言葉を大切にしている。ユネスコの規定で、単独の言語で保護対象にあたる「うちなーぐち」を、自分たちの言葉を復権し、大切に守り育てることが、人々の誇りと尊厳をはぐくむはず。その考えが、那覇市長時代も今の沖縄県知事になってからも「はいさい・はいたい運動」をおこない日常的に沖縄の言葉を使っていこうと使い続けている。翁長氏は、その普及は懐古主義ではなく大変重要な意味をこめている。ぜひ読者は自ら読んでご確認いただきたい。

 二〇一六年。県選挙管理委員会(当山尚幸委員長)は15日、県議会議員の任期満了(6月24日)に伴う第12回県議会議員選挙を5月27日に告示し、6月5日に投開票とする期日を決定した。
 私はこの書物、『戦う民意』において何を翁長知事は、考えてきたか、何を日本国民全体に伝えたいのか、ぜひご一読をお勧めする。できれば、沖縄県議選の前に読むことをお薦めする。壮大な「翁長沖縄県知事の構想」をしっかりと、ともに受け留めたい。

《前説》地震の科学的分析と対応・対策の重要性

2016-05-18 16:29:20 | 政治・文化・社会評論
《前説》地震の科学的分析と対応・対策の重要性

               櫻井 智志

(*写真の右側の表は「2016年地震発生件数」です)

 大災害に対する流言飛語は、何の意味もなく有害でさえある。しかし事実の科学的分析が国民に知らされず、権力の言うがままに誘導されたなら、関東大震災時の甘粕憲兵による大杉栄虐殺やデマによる朝鮮人を日本人が虐殺した悲劇の歴史の再来もあり得る。日本人は、大災害の時に外国のいくつかの事例のような暴動や略奪のような例は少ないと言われてきた。しかし表に出ないだけで、避難所などでの強姦事件のような二重の被害は皆無ではない。つぎの「日刊ゲンダイ」の記事は、流言飛語でもないし、誘導コントロール記事でもない。
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

茨城で震度5弱の不気味 「首都直下地震」の前触れなのか
2016年5月17日


熊本では民家はことごとく倒壊(益城町)(C)日刊ゲンダイ



熊本地震の本震から1カ月。関東地方を大きな揺れが襲った。16日午後9時23分ごろ、茨城県で震度5弱を観測した。気象庁によると、震源地は茨城県南部で、震源の深さは約40キロ。地震の規模はマグニチュード(M)5.6と推定され、2~3日中は震度4程度の余震への注意を呼び掛けている。

 茨城県周辺では今年に入ってから地震が頻発している。別表は熊本地震前日の4月13日までに全国で起きた地震の発生数を集計したもので、気象庁の震度データベースから震度1以上の地震をすべてピックアップ。3回以上の揺れを観測した震源を抜き出し、件数の多い順に並べた。この時点で茨城県は突出しているが、その後の1カ月もたびたび揺れ、今月15日までに茨城県沖で28回、茨城県北部で26回、茨城県南部で15回を数えた。しかも、規模が大きくなっている。熊本地震の最初の揺れとほぼ同じ時刻に揺れたのも不気味だ。首都直下地震の前触れなのか。

■東京につながる「柏崎千葉構造線」そば

 元前橋工科大教授の濱嶌良吉氏(地殻変動解析学)はこう言う。

「震源地はプレートの境界です。フィリピン海プレートが潜り込み、太平洋プレートが乗り上げた先端の40~50キロ部分で起きた。首都直下とつながる活断層の『柏崎千葉構造線』に非常に近い。今後、首都圏で大きな地震が起きる懸念が強まっているといえます。首都圏には調査されていない無数の活断層が走っているとされるだけに、影響は未知数です」

 濱嶌氏によると、日本列島は400年と1200年サイクルで大地震に見舞われ、今は2つのサイクルがちょうど重なる時期に当たるという。

「818年に群馬・前橋の赤城山南麓でM8クラスの大地震が発生したのも『柏崎千葉構造線』上で、現在の群馬県や栃木県も大きな被害を受けたとみられます」(濱嶌氏)

 東北大災害科学国際研究所教授の遠田晋次氏によると、統計学的にみて、小さな地震が増えると大規模地震が起きやすいという。まさに、茨城の地震がそうだ。いよいよ、その時が迫っているのか。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

《前説》地震の科学的分析と対応・対策の重要性

2016-05-18 16:29:20 | 政治・文化・社会評論
《前説》地震の科学的分析と対応・対策の重要性

               櫻井 智志

 大災害に対する流言飛語は、何の意味もなく有害でさえある。しかし事実の科学的分析が国民に知らされず、権力の言うがままに誘導されたなら、関東大震災時の甘粕憲兵による大杉栄虐殺やデマによる朝鮮人を日本人が虐殺した悲劇の歴史の再来もあり得る。日本人は、大災害の時に外国のいくつかの事例のような暴動や略奪のような例は少ないと言われてきた。しかし表に出ないだけで、避難所などでの強姦事件のような二重の被害は皆無ではない。つぎの「日刊ゲンダイ」の記事は、流言飛語でもないし、誘導コントロール記事でもない。
 
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茨城で震度5弱の不気味 「首都直下地震」の前触れなのか
2016年5月17日


熊本では民家はことごとく倒壊(益城町)(C)日刊ゲンダイ



熊本地震の本震から1カ月。関東地方を大きな揺れが襲った。16日午後9時23分ごろ、茨城県で震度5弱を観測した。気象庁によると、震源地は茨城県南部で、震源の深さは約40キロ。地震の規模はマグニチュード(M)5.6と推定され、2~3日中は震度4程度の余震への注意を呼び掛けている。

 茨城県周辺では今年に入ってから地震が頻発している。別表は熊本地震前日の4月13日までに全国で起きた地震の発生数を集計したもので、気象庁の震度データベースから震度1以上の地震をすべてピックアップ。3回以上の揺れを観測した震源を抜き出し、件数の多い順に並べた。この時点で茨城県は突出しているが、その後の1カ月もたびたび揺れ、今月15日までに茨城県沖で28回、茨城県北部で26回、茨城県南部で15回を数えた。しかも、規模が大きくなっている。熊本地震の最初の揺れとほぼ同じ時刻に揺れたのも不気味だ。首都直下地震の前触れなのか。

■東京につながる「柏崎千葉構造線」そば

 元前橋工科大教授の濱嶌良吉氏(地殻変動解析学)はこう言う。

「震源地はプレートの境界です。フィリピン海プレートが潜り込み、太平洋プレートが乗り上げた先端の40~50キロ部分で起きた。首都直下とつながる活断層の『柏崎千葉構造線』に非常に近い。今後、首都圏で大きな地震が起きる懸念が強まっているといえます。首都圏には調査されていない無数の活断層が走っているとされるだけに、影響は未知数です」

 濱嶌氏によると、日本列島は400年と1200年サイクルで大地震に見舞われ、今は2つのサイクルがちょうど重なる時期に当たるという。

「818年に群馬・前橋の赤城山南麓でM8クラスの大地震が発生したのも『柏崎千葉構造線』上で、現在の群馬県や栃木県も大きな被害を受けたとみられます」(濱嶌氏)

 東北大災害科学国際研究所教授の遠田晋次氏によると、統計学的にみて、小さな地震が増えると大規模地震が起きやすいという。まさに、茨城の地震がそうだ。いよいよ、その時が迫っているのか。

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