英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『消えたタンカー』~西村京太郎サスペンス 十津川警部シリーズ50作記念作品~(9月9日放送)

2013-09-15 22:38:16 | ドラマ・映画
 1992年4月13日に「札幌駅殺人事件」でスタートした「西村京太郎サスペンス 十津川警部シリーズ」が、本作で50作目だそうだ。

 2時間サスペンスの定番の原作者と言えば、数だけに限定して言うと、山村美紗氏、西村京太郎氏が双璧と言ってよい。あとは浅見光彦シリーズの内田康夫氏ぐらいか。
 (原作は読まないので、以下はドラマについての記述です)
 個人的には「横山秀雄サスペンス」がダントツで面白い。正直に言うと、双璧の御二人は、残念ながら、評価は相当低い。
 山村美紗サスペンスは、アリバイ工作や密室トリック自体は甘いが、登場人物が面白いので、娯楽作品として楽しめる。
 西村京太郎サスペンスは、以前は時刻表トリックで楽しめたが、最近はそれには力を入れていない。中には原作「特急○○殺人事件」とあるのに、時刻表トリックどころか列車さえも出てこなかった作品もあった。時刻表サイトで一発で検索出来てしまうという事情もあるのかもしれない。
 ほとんど、捜査によって真相が明らかになるだけのストーリー。ドラマとしてどうなのかというと、犯人や被害者の心情や行動に深みがなく、納得できないことが多くい。TBS制作の作は、渡瀬恒彦の十津川警部の格好よさと、伊東四朗の亀井刑事の温かみだけを際立たせているだけである。
 そんなわけで、人気作であるらしい『消えたタンカー』も期待薄であった。
 期待薄という予断があったせいかもしれないが………残念な作品であった。

評価できる点
 『消えたタンカー』…このタイトルの真の意味が明らかになった時、事件の構図が反転し、裏に潜む巨悪が現れてくる。この構想は見事である。

残念な点
★不思議な凄腕スナイパー
・黒幕はなぜスナイパーを雇ったんだろう。狙撃なんかしたら目立ち過ぎる。しかも、1人目が事故を起こした船長だったら、タンカー事故の裏を勘ぐられてしまう。それに、あと、5人も標的が残っているのに、難易度高過ぎ。

・運転中のドライバーを仕留める辺り、確かに凄腕スナイパーだ。ただ、車をジャッキアップしてその下から狙うなんて、絶対、不自然。狙撃後、ジャッキをを外して逃走したのだろうか。

・ロープ―ウェイに乗っている標的を狙ったり。他に乗客がいるのに、誤射の危険性もある。結局、断念したが、観光客がたくさんいるところで狙撃なんかしたら、目撃されてしまうだろう。

・さらに、4人目は、波の高い海上のボートの上から狙撃を試みる。恐るべき腕前だ。
 この時、危険を感じた十津川が標的を突き飛ばしたが、突き飛ばされたため被弾してしまったように見えた。

・クライマックスでは、元タンカー船長の奥平(渡哲也)を狙うが、逆に十津川に撃たれてしまう。十津川、恐るべし!
 でも、狙撃場所、近過ぎ!
 あれでは、成功しても、捉えられてしまう。そもそも、狙撃手は障害物がないビルの屋上から狙撃し、逃走の手はずを整えておくはず。
 さらに、捕まった際、「ワタシ、日本人がフィリピン人のママに産み落とさせた子ども。日本人、みんな死ねばいい!」と、いきなり自己紹介と捨て台詞

★「見間違う訳ない」と断言したタンカーの船員を救出した船長だったが
「ドーンとけたたましい爆発音がして、20㎞ほど離れた我々も凄い衝撃を受けた。あれは確かにタンカーの船首でしたね。……中略………辺りはまるで竜巻が起きたみたいでした。海は燃える、大気は熱を持つ。風で煽られた炎がこう、ぐるぐるぐるって、まるで円柱のように上がっていって」
(爆発して炎上したのは、この写真のアラビアンナイト号で間違いないかの問いに)
「見間違えるはずはありません。
 しかし、私が見たのは遠目のシルエットだったし、「このアラビアンナイト号か」と問われれば、100%そうだとは断定できませんね。何しろ、夜でしたし、20キロも離れてましたんでねえ」
 どっちなんだ?
 満タンのアラビアンナイト号が爆発・炎上したら数日から1カ月は燃え続けるはずだが、7時間でほぼ沈下しているので、爆発の規模は実際は小さかったはず。船長の表現はおかしい…というか、普通の者はタンカーが爆発するのを見たことはないだろうから、船長の勘違いも仕方がないかも。

★タンカー事故の首謀者・奥平になぜか好意的な十津川
(タンカー事故で得た金を、過去の事件で命を失った部下の遺族に見舞金として送ったことに対し)
「警察官の私が、犯罪者のあなたに、こういうことを言うのは変ですが、遺族に成り代わり、お礼申し上げます。ありがとうございました」
(真相を告発しようとする奥平に)
「お送りします」と車を用意する。
(狙撃手を捕らえた後、部下を庇って「罪はすべて私だけにある」と言う奥平に対して)
「奥平さん、権力に寄り添うだけじゃない警察官もいます。私もその一人だと思っています。
 あなたが人生を懸けてまで挑まれた大勝負、決して無駄にしません」

奥平の自白(告発)により、日本国中は騒然となった。
政財界から様々な圧力が掛かったが、私や亀さんは辞表を懐に忍ばせながら戦い抜き、
ニュージャパンライン社や政財界の巨悪を追いつめた
(十津川のナレーション)

十津川と亀井が水面がキラキラ光る埠頭で真相や思いを語る
「奥平浩一郎は一命を賭して、政財界ばかりか国際犯罪シンジケートが絡む事件を告発したんですね」(亀井刑事)
≪中略≫
「ところで警部、私、辞表を書いたの、今回で7回目です」
「私ぃへへっ、12回目です」
「へ?そんなに…若いころは、ずいぶん失敗したんですか?」
「いや、それが今の糧になっている。そう思っています」

男たちの熱い戦い、正義感が功を奏したという感じで締めている。

しかし、美談で済ましているが、
奥平は、たとえダミーであっても愛するタンカーを炎上沈没させ、大量の原油を無駄にし、海を多大に汚した許せない海の男である。

 渡瀬さん、お兄さん(渡さん)に気を使い過ぎ!


 原作はどうだったんだろうか?
 小説で読むと、スナイパーのおかしな点も感じないような気がするし、乗組員たちが次々に消されていく緊迫感を感じられるのかもしれない。
 『消えたタンカー』の構図の反転も見事なので、初めて原作を読む場合は面白いかもしれない。
 また、今回、渡さんに合わせて、原作を改変しているのかもしれない。

 ドラマは残念な出来だったと言わざるを得ない。 脚本は佐伯俊道氏



【ストーリー】番組サイトより
 インド洋で日本の大型タンカーが炎上沈没した。近くを航行していた漁船の船長・鈴木晋吉(中本賢)は救命ボートで漂うタンカーの乗組員6名を救出する。帰国後の記者会見でタンカーの船長・宮本健一郎(木村栄)は、調査結果が出るまで口止めされていると事故原因については口を閉ざす。
 タンカーは海賊に襲われたのではないかとささやかれる中、事故から1か月が経ち、タンカーの生存者たちが連続して射殺される事件が起きた。最初に殺されたのは宮本船長。続いて佐藤洋介一等航海士(岡部たかし)も殺された。わずか1発の銃撃で射殺されたことから、凄腕の狙撃者による犯行だと思われた。
 本多捜査一課長(中原丈雄)から連続殺人事件の動機にはタンカー事故があるのではないかと指摘を受け、十津川警部(渡瀬恒彦)は亀井刑事(伊東四朗)と共にタンカーを運用していた船舶会社の社長・黒川秀隆(川地民夫)の元へ。黒川はタンカー輸送には危険がつきものだと語る。亀井は同席していた元タンカー船長・奥平浩一郎(渡哲也)の船も10年前に海賊に襲撃されていたことを思い出す。日本のタンカーで初めて海賊の被害に遭い、3人の乗組員が射殺された事件だった。
 連続殺人の捜査が進展のないまま、炎上沈没したタンカーパーサーの辻芳夫(池田努)が伊香保温泉で、同じく甲板長の河野哲夫(村上大樹)はヨットで太平洋上を航海中に殺された。十津川は被害者たちが10年前、海賊に襲撃された奥平のタンカーの乗組員だったことに気づいた。一方、亀井は生存者の一人で事故後ブラジルに移り住んだ船医・竹田良宏(鷲生功)のもとを訪れ事情を聞く。
 そんななか、今回の生存者の一人で唯一行方が分からなかった小島史郎二等航海士(伊東孝明)がフェリーで仙台に向かっていることが判明。十津川たちも仙台に急行し小島を保護する。十津川は小島が奥平と連絡を取っていること、奥平が連続殺人に関わりがあることを知る。やがて事件の裏に奥平が仕組んだ大きな企てが浮かび上がり、政財界にも及ぶ巨悪の存在が明らかになるが・・・。
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