英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『半沢直樹』 第6話~最終話 【補足あり】

2013-09-23 21:09:45 | ドラマ・映画
「人の価値は金では推し量れない。
 銀行員は金ではなく、人を見るべきだ。……そういうことだ。
 私は、銀行員としての君を、尊敬していたんだよ」
(by 中野渡頭取)

この言葉が全てなのだろう。


 常務取締役から取締役への降格のみ済んだ大和田。
 大和田を排除するより、大和田を取り込んだ方が銀行全体の掌握を確固たるものにできるという考えなのだろう。しかし、そういう具体的な施策とは別次元の頭取の信条が……


 なんと
「半沢直樹次長、営業企画部部長職として、東京セントラル証券への出向を命じる」


「取引先を大切にし、人を尊重して生きる。銀行としての本来の役割を大事にしたい」半沢より、
「銀行に利益が上がればそれでよい。銀行を守るためなら取引先を平気で切り捨てる」大和田の方を、頭取は銀行員として評価したということなのだろう。
良心に目覚めた岸川業務統括部長の出向もそれに沿ったものか。
 頭取の言葉を聞いて、頭取の信条を知り、負を悟り、落胆の表情で頭を下げる大和田の表情が印象的だった。


 スッキリしない結末だった。
 確かに、上記の頭取の考えによる決着のつけ方はありだと思う。
 しかし、懲戒解雇に相当する不正行為、いや、犯罪行為をした大和田はどう考えても許されれべきではないだろう。実際に、伊勢島ホテルの120億円の損失を隠蔽し、その結果、金融庁検査により1520億860万円の引当金(by黒崎試算)を積むことになってしまい、東京中央銀行の存続自体が危うくした大和田に甘い処分で済ますのはあり得ない。
 銀行の危機を救い、大和田の不正を断罪した半沢を出向させては、東京中央銀行の行員の士気(モラル)が低下してしまう。
 結局、あの取締り役員会議の意味はあったのだろうか?まったく、あの会議の流れを無視した頭取の独断人事と言える。


 大和田常務にしろ、120億円の損失を出した伊勢島ホテルの羽根専務にしろ、あれだけ堂々とした態度がとれるのか、庶民の私には理解できない。
 それに、大和田常務の不正行為を立証するのに、タミヤ電機社長の証言や、岸川部長の証言がなくても、大和田の預金状態や、タミヤ電気→ラフィットの迂回融資の金の流れなどで充分に思える。


 後半(東京編)は、こちらが慣れたということもあるが、毎回の倍返し(どんでん返し)のキレが良くなかった。隠し玉も読めてきたし。
 金融庁の黒崎の真意がよく分からなかった。個人的には(多くの視聴者かもしれない)、渡真利(及川光博)がいつ裏切るのだろうか?と心配(期待)していた。疎開資料の在り処を渡真利が尋ねた時はヒヤヒヤしてしまった。
 あと、岸川部長(森田順平)の声は素晴らしい。

 突っ込みどころは多かったが、それを打ち消す痛快さがあり、面白かった。

 せっかくなので、各話について簡単な感想を。
【第6話】
 第2部スタート早々登場した“法人部のエース”時枝、“ムンクの叫び”張りの驚愕の表情を披露したのと、机や椅子をぶっ壊しただけで退場……予想通り
 半沢の上司の内藤部長役の吉田鋼太郎さんは、悪役のイメージがあり、最初は心配?したが、意外に善人もいける。
 貝瀬支店長(川原和久)も“見栄とプライドの塊”と称されて(by時枝)いたが、あまり出番なし(6話と7話のみ)。そのかわり、その“腰ぎんちゃく”古里課長代理がいい味出していた。古里を演じた手塚とおるさんは、『救命病棟24時』の杉吉センター長をネチネチと演じていた。
 いじめられ続けた近藤が、数字を呟いていて発狂寸前かと思ったが、意外なところで活躍した。
 この回、一番驚いたのは京橋支店から出た所で、CMをまたいで登場した伊勢島ホテルの湯浅社長。正直、「あんた、誰?」だった。
 極秘資料を京橋支店の金庫から持ち出す際、古里がトチ狂って金庫の扉を閉めてしまわないかドキドキした。それどころか、わざとこけるなんて、ナイスだ!
 そして、この回のラスト、金融庁の面々を掻き分けて登場したのが、黒崎だった。出た~!

【第7話】
 半沢の自宅に避難させた疎開資料が、妻・花が勝手に移動させたのと伊勢島ホテルの会長更迭の件は、流石に第7話ともなるとパターンが読めてしまう。とは言え、家宅捜索した金融庁の検査員に啖呵を切ったシーンはすっきりした。どうせなら、謝罪させるだけでなく、掃除させてほしかった。「ずいぶん素敵な奥様をお持ちね」(by黒崎)

【第8話】
 模擬金融調査で、半沢の対抗馬に融資部次長・福山が登場。しかし、単なるデータオタクで全く有能には思えなかった。
 タミヤ電機の不正に「愛人の会社に融資を転貸するなんて言語道断だ!会社を私物化するのもいい加減にしろ!それが本当なら、俺は断固戦う!」激高する近藤に、「頑張ってください」とお茶を出す半沢の部下。この啖呵と半沢の部下に対して、近藤はどう申し開きするのかと後で思った。

【第9話】
 「俺たちサラリーマンがイエスとしか言わなくなったら、仕事はただの作業になっちまう。作業だけならロボットでもできる。俺たちは、ロボットになったらダメなんだよ」とタミヤ電機の経理課長に説教!
 この後、田宮社長も説得した近藤。君は何の為に?という社長の問いに対して「決まってるじゃないですか。この会社のためです」と。しつこいようだが、近藤く~ん、どの口がこんなことを言ったのかね?
 力を込めて「伊勢島ホテル」と言う時、「イシェシマホテル」と言ってしまう半沢。4度ほど、そう聞こえた。
 疎開資料が地下2階機械室に保管してあると嗅ぎつけた黒崎だが、これ見よがしに置いてあった宴会用の備品だけ調べるなんて、とても国税局にいたとは思えない。

【最終話】
 疎開資料の件で、名誉棄損寸前までの失態を犯した黒崎が、クレームをつけてくるのは変。
 最終回予告でタミヤ電機で「誰も今のあの人に逆らえないってことだ」と田宮社長が話していたシーンがあったと思うが、最終話にはなかったような気がする。
 大和田の土下座のシーンは大げさ過ぎ。『着信アリ』の呪いで殺された吹石一恵のようだった。

【補足】
原作では……
 重役たちの間で、半沢の土下座の強要が問題になり、解雇の声が強くなった。その声をかわすため、半沢を出向させたらしいです。
 それに、大和田常務は出向させられた
……らしいです。

 『ロスジェネの逆襲』という原作の続編もあることを考えると、頭取は半沢に出向先で問題を処理をしてもらいたかったのかもしれません。原作の頭取は、ドラマほど黒くないようです。
 また、nanaponさんの情報によると、大和田常務を出向させるなど、外部から見て異常な人事をすると、その理由を問われ、大和田の迂回融資の犯罪行為が明るみに出てしまい、東京中央銀行の信用が暴落し、金融庁からも御咎めを受けてしまう恐れが大きいとのことです。頭取も責任を取らなければならなくなります。

 原作の頭取の温情、或いは、常務更迭の影響のどちらの筋を取るにせよ、ある程度の説明が必要となり、ドラマのラストとしては締まりがないものとなってしまいます。
 なので、いろいろの解釈を含みに、あそこでズバッとぶった切ってしまったのは、続編のことを考慮すると、絶妙だったのかもしれません。
 ただ、個人的には、ドラマはそのシリーズできちっと完結しないと、毎回見ていた視聴者を蔑ろにされた思いがして、残念です。
コメント (16)
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