英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2014体操世界選手権 男子個人総合

2014-10-10 21:14:05 | スポーツ
 何はともあれ、内村選手が5連覇(五輪を含めると6連覇)を成し遂げられて、よかった。

 スポーツ中継はリアルタイムで見るのが一番だが、長時間中継となると所用が生じ、虫食い観戦となりがちなので、録画しつつ追っかけ再生、あるいは、別時間に観戦するのがほとんどである。
 録画観戦の場合、油断すると、いや、情報過多の現代、油断しなくても情報が飛び込んできてしまう危険性があるが、自分のペースでじっくり見ることできるのが大きな利点である。(録画を手に汗握って観ている時、≪実際はもう決着がついているんだなあ≫と一瞬冷めてしまうことはある)

 それにしても、体操観戦は疲れるなあ。
 特に、あん馬と鉄棒。
 あん馬などは、重心が少しでもずれると、傍目からはあっけなく台上から落ちてしまう。
 足先が割れたり緩むなど、回転がぶれるのは、重心がずれている兆候で、そういう気配がないかドキドキする。回転が低いと足がぶつかってしまうんじゃないかとヒヤヒヤ。
 内村選手の場合、あん馬は苦手種目ではないのだが、ロンドン五輪のあの転落のシーンが目に焼き付いているので、あん馬を観る時は本当に緊張する。(実際、ほとんどの選手があん馬は難関だと思っているようだ)
 緊張に耐え切れず、一時停止やスロー再生にしてしまった。邪道な見方だが、私の内村選手の思い入れは特別なので許してほしい。(本当はあん馬などは2倍速でやり過ごしてしまいたいくらいである)

 鉄棒の離れ技も、ちょっとしたタイミングのずれで手が届かなくなり落下してしまう。何とか掴んでもスイングが維持できず、大きな失点になってしまうことも多い。当然、離れ業の瞬間はスロー再生(笑)。


 内村選手は気合が入っていた。それはそうだろう、団体決勝で“あんな事”があったのだから。
 とにかく、「着地はすべて止める」、そんな強い決意がにじみ出た演技だった。
 床運動のアクロバットの4度の着地は微動だにしなかった。
 2種目目のあん馬は、最後の方で回転にズレが生じ始めたが、幸いにも過失につながる前に演技を終えることができたようだ。
 3種目目の吊り輪も、力技も綺麗な体線で決め、振動技からの倒立の静止もほぼ完璧、着地もピタリと決めた。Eスコアも8.600と高く合計15.000と15点台を確保した。(団体決勝の時はもっと完璧な演技をしたがEスコアは8.433と低かった)
 4種目目の跳馬は、完璧な伸身姿勢での「ヨー2」を決めた。特に着地は微動だにしなかった。Eスコアが9.633で記憶にないほどの高得点で合計15.633。会心の出来だったのだろう、内村も笑いが止まらなかった。
 一緒に演技をした第1グループの選手たちは、ここまでどこかでミスをし内村選手の背中が遠くなっていた。唯一、ほぼ予定通りの演技をしているベルヤフスキーも内村の高得点にじりじり離されてきている。
 しかし、実は想定外の事態が起こっていて、第2グループのウィットロックが3種目目の跳馬で15.366の高得点でこの時点で0.067差(第4種目終了時点でも0.725差)、さらに同じ第2グループのベルニャエフも第3種目の跳馬で15.400、第4種目の平行棒で何と16.033の高得点で4種目終了時で0.533差と僅差の勝負になっていた。
 会心の演技で“してやったり”の内村だったが、16点台を出したベルニャエフに逆に詰められるという事態に、もしかしたら焦ったのではないだろうか?

 第5種目の平行棒。入り技のマクーツを完璧にこなし好調と思われた……。しかし、その直後、倒立姿勢を決めたと思った瞬間、ひじが緩んだ。すぐ立て直したが、ここからの演技がおかしくなった。
 ヒーリーの後の倒立姿勢でも若干肘が曲がり、棒下捻り後も倒立姿勢まで持って行けず、その他の倒立も停滞が見られた。ベーレは“屈伸”から“抱え込み”に難度を下げ、着地もわずかに動いてしまった。
 演技後の内村も≪おかしいなぁ≫という表情。
 全くの想像だが、跳馬で会心の出来過ぎて気持ちが緩んでしまった。その上、意外に僅差の勝負になっていたことにやや動揺。そして、ここまで完璧に演技をしようと、いつも以上に力を使っていたため肉体的に疲労が溜まっていた。
 そして最初の倒立の時に、≪あれ?思うように力が入らない≫という状態になってしまい演技がおかしくなったのではないだろうか?
 しかし、幸いなことに、Eスコアは8.700と高得点。団体戦の時の得点操作の罪滅ぼしではないとは思うが、“内村=完璧」の先入観が働いたのかもしれない。
 更に、第2グループのふたりの第5種目は鉄棒の得点が伸びず、差が1.267と広がった。今大会、鉄棒のEスコアの判定は厳しく8点台はなかなか付かない。

 最終種目の鉄棒。
 最終演技者となった内村、金メダルへは13.741。
 落下しても何とかトップを保てそうな状況だが、一度落下してしまうと、演技がグチャグチャになるので、落下は絶対避けたいところだ。
 最初の離れ技、G難度のカッシーナ……完璧!(と書いたが、鉄棒をつかむまでスロー再生)
 そして組み合わせ技からびコールマン(F難度)!……やや不完全(内村にしては珍しくつかみに行った感じ)
 この後も無難に技を捌き、着地!前につんのめり小さく弾んでしまった。
 おかげで、得意の“どや顔”は見られなかった。

 でも、優勝は間違いない出来で、周りの選手も≪かなわないなあ≫という表情で、握手。

 15.233(Dスコア6.9、Eスコア8.333)、6種目合計91.965。
 終わってみれば、2位とは1.492差。

 おめでとう!内村選手。

 田中佑典選手も90.473で3位。
 体の線が綺麗で丁寧な演技だった。エレガンス賞、最有力だろう。
 今まで、合計90点を超える演技をしたのは内村だけだったように記憶しているが、90点を超えた田中選手は見事。
 今大会、4位までが90点越え、89点台も7位までと非常にレベルの高い個人総合だった。
 
 


             床  あん馬 吊輪  跳馬 平行棒 鉄棒 合計
1位 内村 航平    15.766 15.133 15.000 15.633 15.200 15.233 91.965
2位 ウィットロック  15.466 16.000 14.466 15.366 14.975 14.200 90.473
3位 田中 佑典    15.200 14.200 14.733 14.933 15.883 15.500 90.449
4位 ベルニャエフ  14.833 15.233 14.333 15.400 16.033 14.466 90.298
5位 ベルヤフスキー 15.133 15.133 14.700 15.033 15.366 14.400 89.765
6位 デン・シュディ  15.300 13.833 14.866 15.200 15.700 14.833 89.732
7位 ササキ      14.966 14.633 14.800 15.200 14.900 15.066 89.565
8位 ハンビューヘン 14.966 13.466 14.533 15.066 15.433 15.100 88.564
コメント (2)
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