英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

第27期竜王戦考察

2014-10-20 22:51:03 | 将棋
第27期竜王戦第1局は、糸谷七段が133手で先勝した。

 第1局は『YOMIURI ONLINE』の記事を引用させていただくと
「角換わりの戦型から、森内が仕掛けて開戦。穴熊に入ってから攻め合いを目指した糸谷に対し、森内は端攻めで応じ、相手をけん制しながらの難解なねじり合いが続いた。そのまま終盤戦に突入したが、攻めを継続する森内に対し、糸谷は自陣を堅くしてから攻め合いに持ち込み、的確な攻めで後手玉を寄せきった」

 難解な将棋で、形勢の細かな揺れはあったが、主導権は糸谷七段が握っていて、勝ちきった。
 特に終盤の読みは深く正確で、“糸谷強し”と思わせる内容だった。


糸谷七段について
 以前、羽生名人が挑戦者決定戦で敗れた際、「一番負けてほしくない相手」と書いてしまったことがあったが、『将棋世界』11月号のインタビュー記事を読んで、糸谷七段に対する認識が変化した。
 そのインタビューから、糸谷七段は自己についても将棋についても客観的に考えるタイプ。さらに、棋風改革中で、対局中は序盤から時間を使う(考える)ようにしている。また、普段からとにかく考えることに努めているとのことだ。
 考える対象は、将棋だけでなく、イベントについてでも社会問題でも構わない。考えることによって「自分の先入見を消せます。自分ならこうだが、他人ならどう思うか、考えることにより、多角的に物事を見ることができます。多角的ということは、考える技を増やすことになります」(インタビューより引用・「先入観」ではなく「先入見」と表記されていた。誤植かと思ったが、もう一度使われていたので、糸谷七段独特の表現なのだろう)
 また、西遊棋(関西の若手棋士普及サークル)での活動について
「マルチに活動することは、人間にとって視点を増やすことになります。そういう点では将棋にも人生にもプラスになっていると思います。
 そこでしか得られないさまざまな考え方は、いろいろなことを経験しなければ分かりません。将棋をやっているだけでは分からないことを経験するだけでも、全然違うと思います」

 人間の幅を感じさせるコメントである。


 挑戦者決定戦の勝利直後の気持ちは「楽しい将棋が指せた」と述べており、糸谷七段の充実ぶりが窺える。
 さらに、羽生名人の強さについては
「読みが深く、人が読んでいない手を読んでおられるところです。直観的な手を選択されることは少ないように感じるのですが、普通の棋士が読みを絞るところを、読みの範囲を狭めず読まれているように感じます。
 深さ、広さ、正確性において他の棋士より優れておられ、結果、人より広い範囲で手を正確に読むことができているのではと思います」

と分析している。(なかなか愛いやつである)


 森内竜王については(森内竜王とは過去1勝2敗。いずれも持ち時間の短い棋戦)
「持ち時間の長い棋戦と短い棋戦」では別物になるので、初対戦のような形になると思います。最後の対戦から4年が経ち、私も違う将棋になっております」
 別物を承知で、過去の対戦で感じた「森内将棋の特徴」を尋ねたが、
「早指しと長い将棋では全然違いますから、そういう先入見は必要ないと思います。結局、将棋というゲームは特徴というよりメインは読みだと思います(将棋は特徴より読みがメインである)」
 糸谷七段の合理的考え方が感じられるが、強情さも垣間見られる。


 自信
「思ったように勝ててないというのは、非常につらいものがありました。もっと勝っていかなければなりませんし、勝てるはずだと思っています」
--糸谷さんの中では、これまでん満足できる結果を残せなかったということでしょうか?
「はい、全然結果が出ていないと思っていました」

 ええと、糸谷七段の通算成績が263勝114敗で勝率0.6976。今年度の成績が17勝4敗で0.8095。つまり、昨年度末までの通算成績は246勝110敗の勝率0.6910でかなりの高勝率ではあるが、この勝率では全く満足できておらず、今年度の勝率8割が当然の成績と言っているのである。(昨年度の26勝14敗、勝率0.650を指して不満足と言っているのかもしれないが)


森内竜王について
 森内竜王の将棋に対する思い、棋士として将棋に向かう真摯な姿勢も尊敬している(これは本心です)。
 そして、昨年度の名人戦と竜王戦で羽生三冠と渡辺竜王を圧倒した強さにも脱帽した(28勝12敗、勝率0.7000) 。2011年度10勝19敗(0.3448)、2012年度13勝12敗(0.5200)の低勝率への疑問も晴れつつあった。
 しかし、今年度の成績(竜王戦七番勝負開幕直前)は、9勝15敗、勝率0.375の低空飛行。この成績には対羽生戦の0勝7敗が含まれており、それを除外すると9勝8敗、この9勝8敗も対戦相手が強敵ぞろいであることを考慮すると、及第点と言えるのかもしれない。

 しかし、直近の4連敗はどういうことか?
 対松尾七段(王将戦二次予選)、対丸山九段戦(日本シリーズ)、対広瀬八段戦(A級順位戦)、対郷田九段戦(棋王戦本戦)。「竜王戦に集中するため?」とは思わないが、対松尾、対郷田の後手番の「一手損角換わり」を採用。これは、糸谷七段得意の「一手損角換わり」を自ら採用して、対策を確かめている気がしないでもない。負けるつもりはないにしても、敢えて「一手損角換わり」側を持って、課題の局面に誘導し、対局相手の指し手を試している……邪推?


 第一局は好局だったと思う。
 第二局は森内竜王の先手番。私の邪推はともかく、好局を期待したい。
 森内竜王が巻き返して、この七番勝負が好勝負になって欲しい。
 ≪糸谷七段が竜王になるのはまだ早い≫と思っていたが、今年度の強さを見ると、私の方が早計だったかもしれない。挑戦者決定三番勝負で羽生名人を破り、この七番勝負で森内竜王も破る……ニューヒーローの誕生を予感させる第一局だった。そう言えば、渡辺竜王誕生の対戦相手も森内竜王だった。
 
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『軍師官兵衛』 第42話「太閤の野望」

2014-10-20 09:35:06 | ドラマ・映画
サブタイトル……ネタバレにならずにストーリーの核心を表すのは難しい。
今回の「太閤の野望」、確かに野望「大陸制覇」に向けて実際に動いたので、妥当な線かもしれない。
しかし、大政所の死去や国内を留守にはできないという事情はあったとは言え、それらを振り払って秀吉自ら出陣するのなら「野望」と題するのに疑問を感じてしまう。
今回の秀吉を見ていると、大陸制覇より世継ぎの誕生の方に重きを置いていた。さらに言うならば、「淀とHする」ことに走った……


 今回の真のテーマは「三成の小っちぇー野望」である。
 これまで三成の施策にことごとく異を唱えていた官兵衛は、三成にとって非常に邪魔な存在、嫌いな存在だったのだろう。
 大陸制覇断念(出兵失敗)の責任を官兵衛に向けさせ、保身と邪魔者排除を果たした「三成、会心のほくそ笑み」の回だった。


 “黒田家の監視役”を公言、名護屋城を普請したことへのねぎらいの言葉なし。
 朝鮮では、兵糧調達を十分に果たせず、口だけ出すので皆に煙たがられる。
 今回、さらに小者の“腰ぎんちゃく”を携えていた。


脇役たちが面白かった
小西行長

 朝鮮からの使者の偽りの件で官兵衛と利休に窮地を救われたのに、自身の功名のことばかり優先させ、失敗。
 「官兵衛の言うとおりだったよぉ~」と反省する点は可愛い。
 和睦交渉の際の秀吉の無茶な条件に、過去を反省し、官兵衛に相談(泣きつく)。
 秀吉の条件を無視することにした官兵衛から「他言無用」と念を押され、しっかりと頷いた。……大丈夫か?

加藤清正
 血気盛ん、猪突猛進でやはり自分の手柄しか考えないやつ。
 逃がした王を捕まえると言ったきり、戻ってこない“糸の切れた凧”

福島正則
 清正の舎弟(弟分)。
 先鋒の件で行長を「“薬売り上り”が」と貶めるが、官兵衛に「自分も“目薬売り上がり”だ」と言われ沈黙してしまう“うかつな奴”


嵌められた官兵衛
 三成の諫言に乗せられ怒り心頭の秀吉、その怒りの要素は
①勝手に漢城を撤退したこと
②秀吉の名代である奉行の三成らをないがしろにしたこと
③秀吉の許しなく勝手に帰国したこと

 一番の怒りは③の帰国とのことだが、あまりピンとこなかった。
 てっきり、和睦の際の秀吉の書状を焼き捨てたことだと思った。

 個人的な疑問だが、漢城を保持している時点で、「漢城撤退」を豊臣軍の譲歩として交渉した方が有利のような気がする。


将棋を知らない母さんの悔しがる「きぃぃぃ~」の声が聞こえてきそうな回だった。
コメント (4)
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