いまこむと いひしばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな
今来むと 言ひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな
素性法師
今すぐに来るとあの人が言ったばかりに、9月の夜長を待ち続けて有明の月が出てしまったよ。
男性の素性法師が、女性の立場で詠んだ恋歌。百人一首(第21番)にも採録された、ほとんど説明を要しないほど著名な名歌ですね。直接的には「有明の月を待った」との表現となっていますが、本当に待っていたのはもちろん愛しい異性。その相手が言葉とは裏腹にやって来ないのを今か今かと待っているうちに、結果的には有明の月を待つことになってしまったと恨めしい気持ちを詠んでいます。