きみてへば みまれみずまれ ふじのねの めづらしげなく もゆるわがこひ
君てへば 見まれ見ずまれ 富士の嶺の めづらしげなく 燃ゆるわが恋
藤原忠行
あなたのこととなると、逢おうが逢うまいが関係なく、富士の嶺のようにいつも燃えているわが恋であるよ。
「てへば」は「といへば」、「まれ」は「もあれ」がそれぞれ縮まった形の語。当時、しばしば噴煙を吹き上げていた富士山は燃える恋の象徴で、古今集では 0534 でも詠まれています。
ひとしれぬ おもひをつねに するがなる ふじのやまこそ わがみなりけれ
人知れぬ 思ひをつねに するがなる 富士の山こそ わが身なりけれ
よみ人知らず
作者の藤原忠行は、平安時代前期の貴族にして歌人。古今集に一首、後撰集に一首が採録された勅撰歌人です。