いせのあまの あさなゆうなに かづくてふ みるめにひとを あくよしもがな
伊勢の海人の 朝な夕なに かづくてふ みるめに人を あくよしもがな
よみ人知らず
伊勢の海人が朝夕に海に潜って採るという海松布(みるめ)ではないが、愛しいあの人に、もうこれで十分というほどの見る目の機会を得たいものであるよ。
第三句までが「海松布(みるめ)」を導き、それが「見る目」との掛詞になっているという構造。少し無理をして、前段も訳に盛り込んでみました。「かづく」は潜る意ですね。万葉集採録の類歌(作者は不詳)もご紹介しておきましょう。
いせのあまの あさなゆふなに かづくといふ あはびのかひの かたもひにして
伊勢の海人の 朝な夕なに かづくといふ あはびの貝の 片思いにして
(万葉集 巻第十一 第2798番)