漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 193

2023-10-26 06:14:37 | 貫之集

まつかぜは ふけどふかねど しらなみの よするいはほぞ ひさしかりける

松風は 吹けど吹かねど しら波の 寄する巌ぞ 久しかりける

 

松風が吹こうが吹くまいが、それにかかわりなく白波が寄せる巌は長く変わることがない。

 

 第三句の「しら」は「知ら(ず)」と「しら(波)」の掛詞になっています。
 この歌は、新古今和歌集(巻第七「賀」 第721番)の伊勢作の歌と大変良く似ています。

 

やまかぜは ふけどふかねど しらなみの よするいはねは ひさしかりけり

山風は 吹けど吹かねど しら波の 寄する岩根は 久かりけり

 

 写本によっては、貫之歌の初句が「山風は」となっているものもあり、そうなるとますます似ていますね。作者が混乱して伝わったのではとの説もあるようです。