巌
まつかぜは ふけどふかねど しらなみの よするいはほぞ ひさしかりける
松風は 吹けど吹かねど しら波の 寄する巌ぞ 久しかりける
巌
松風が吹こうが吹くまいが、それにかかわりなく白波が寄せる巌は長く変わることがない。
第三句の「しら」は「知ら(ず)」と「しら(波)」の掛詞になっています。
この歌は、新古今和歌集(巻第七「賀」 第721番)の伊勢作の歌と大変良く似ています。
やまかぜは ふけどふかねど しらなみの よするいはねは ひさしかりけり
山風は 吹けど吹かねど しら波の 寄する岩根は 久かりけり
写本によっては、貫之歌の初句が「山風は」となっているものもあり、そうなるとますます似ていますね。作者が混乱して伝わったのではとの説もあるようです。