きみこふる なみだのとこに みちぬれば みをつくしてぞ われはなりぬる
君恋ふる 涙の床に みちぬれば みをつくしてぞ われはなりぬる
藤原興風
あなたを恋い慕う涙が寝床に満ちてしまったので、私は水先案内の澪標となって、恋心に身を尽くしているのだ。
「みをつくし」は「澪標(往来する舟のために水路の目印として立ててある杭)」と「身を尽くし」の掛詞で、和歌表現の常套手段。百人一首(第20番)採録の歌がつとに有名ですね。
わびぬれば いまはたおなじ なにはなる みをつくしても あはむとぞおもふ
わびぬれば 今はた同じ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ
元良親王
(後撰和歌集 巻十三「恋歌五」 第960番)