わびはつる ときさへものの かなしきは いづこをしのぶ なみだなるらむ
わびはつる 時さへものの かなしきは いづこをしのぶ 涙なるらむ
よみ人知らず
嘆き尽くした後になってもまだ悲しいのは、いったいどこの誰を偲ぶ涙なのでしょうか。
「はつる」は、動詞の語尾について「すっかり~してしまう」意を表す補助動詞「はつ(果つ)」の連体形。枕草子冒頭「春はあけぼの」の一節「日入りはてて、風の音、虫の音など、はた言ふべきにあらず」の「はてて」と同じ用法ですね。第四句の「いづこ」は場所を表す代名詞であり、愛しい人のことはすでに「わびはて」たのですから、ここでも「誰」のニュアンスは入っていないものと捉えるむきもあるようです。
さて、昨年2月から始まった「恋歌」の章も残り15首となりました。ラストスパート(?)ですね。